テスト中に居眠りをした中学2年の男子生徒の頭を平手で1回叩いた58歳の男性教師は、減給10分の1(1か月)の処分を受けました。同じ日付で、叩いたことを把握しながら教育委員会に報告しなかった当時の校長は、戒告になりました。北海道教育委員会が11月5日付で発表した処分で、同じ「懲戒処分」でも減給と戒告では中身が違います。この記事では、戒告・減給・停職・免職の違いを法令と北海道教育委員会の指針で確かめ、2026年11月時点で整理します。
- 減給は一定期間、給料の一部を減らす処分で、戒告は給料を減らす規定のない処分です
- 教師が生徒に加える「懲戒」と、教師が受ける「懲戒処分」は、根拠の法律が別です
- 北海道教育委員会の指針では、傷害のない体罰の標準例は戒告です
- 減給になった理由は報道では説明されておらず、確かめられない点も残ります
減給10分の1(1か月)と戒告は、同じ発表で出た別の処分です
ニュースの見出しだけを読むと、教師も校長も「処分された」の一言で終わってしまいます。ただ、処分の名前が違えば、受ける不利益も違います。まず報道で確認できる事実から並べます。
教師は減給10分の1(1か月)、校長は戒告でした
UHB北海道ニュースによると、北海道教育委員会は石狩管内の中学校に勤める58歳の男性教師を、減給10分の1(1か月)の懲戒処分にしました。学年末テストの最中に居眠りをしていた中学2年の男子生徒に対し、教師が感情的になり、頭頂部を右の平手で1回叩いたとされています。生徒にけがはありませんでした。教師は「起こそうと思って叩いた」と話し、「体罰に至ったことを深く反省している」としています。
当時の50代の校長は、生徒が叩かれたことを把握しながら教育委員会に報告しなかったとして、戒告になりました。
この件が表に出たのは、保護者の連絡がきっかけでした
報道によると、叩かれた生徒が別の教師に相談して学校側も体罰を把握しましたが、教育委員会に報告はされませんでした。その後、保護者が地元の教育委員会に「学校から説明がない」と連絡し、道教委が事態を把握しました。学校が報告しなくても、保護者が教育委員会に直接問い合わせた結果、処分につながった経緯です。
報道で分かることと、分からないこと
私は最初、「1回叩いただけで減給なのか」と思いました。ただ、報道には減給を選んだ理由が書かれていません。標準的な処分との関係は後の章で確かめますが、先に断っておくと、なぜ減給になったのかは公表資料から確認できていません。この記事でも推測では埋めません。
「懲戒」には、生徒への懲戒と教師への懲戒処分の2つの意味があります
調べていて、私が長く混同していたことに気づきました。「教師が生徒を懲戒する」と「教師が懲戒処分を受ける」の「懲戒」は、同じ漢字でも別の制度です。
生徒への懲戒は学校教育法11条が根拠です
学校教育法11条は、校長及び教員は教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができると定めています。ただし書きで、体罰を加えることはできないとされています。懲戒は認められていて、体罰だけが禁止されている形です。
教師への懲戒処分は地方公務員法29条が根拠です
公立学校の教師は地方公務員です。地方公務員法29条は、法令に違反した場合、職務上の義務に違反し又は職務を怠った場合、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合の3つに当たるとき、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができると定めています。どの処分を選ぶかの手続と効果は、同条4項で条例に委ねられています。
国家公務員の場合は国家公務員法が根拠で、懲戒処分は任命権者が行います。給料の決まり方も別の仕組みです。国家公務員の給与がどう決まるかは、国家公務員給与はなぜ5年連続で増えるのかを解説した記事にまとめています。
生徒に加える懲戒と教師が受ける処分は、つながって動きます
教師が生徒への懲戒の限度を越えて体罰をすると、それは教師にとって「法令違反」や「職務上の義務違反」になり得ます。そこで初めて、地方公務員法の懲戒処分の対象になります。今回の教師の処分は、この2段階の後ろ側の話です。
学校の先生から叩かれた経験、または身近でそうした話を聞いたことはありますか?
- 自分が経験した
- 身近な人から聞いた
- ニュースで見ただけ
- まったくない
体罰かどうかは、強さや回数ではなく行為の中身で判断されます
文部科学省は、体罰と懲戒の区別を通知で示しています。平手で1回なら軽いのではないか、という見方を確かめます。
体罰になる類型は、身体への侵害と肉体的苦痛です
文部科学省の通知は、体罰に当たる懲戒の類型として、殴る、蹴るなどの身体に対する侵害を内容とするものと、正座や直立など特定の姿勢を長時間保持させるなどの肉体的苦痛を与えるものを挙げています。判断は、児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、行為の場所や時間などを総合して、事案ごとに行います。
叩いた側の「起こそうと思った」だけでは決まりません
通知は、懲戒行為をした教員や、受けた児童生徒・保護者の主観のみで判断せず、諸条件を客観的に考慮して判断すべきだとしています。今回の教師は「起こそうと思って叩いた」と話していますが、動機が善意かどうかは、体罰かどうかを決める唯一の基準ではありません。
体罰にならない懲戒もはっきり書かれています
通知は、肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常は懲戒権の範囲内と判断される行為として、注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割当て、文書指導を挙げています。居眠りへの対応として使える方法は、叩く以外にも用意されています。
戒告・減給・停職・免職は何がどう違うのか
条文に並ぶ4つの処分を、表で比べます。期間や割合は自治体の条例で決まるため、ここでは和歌山県の条例を例に使います。北海道の条例本文は、今回の調査では確認できていません。
| 処分 | 条例で書かれている内容(和歌山県の例) | 給料への影響 |
|---|---|---|
| 戒告 | 処分を記載した書面を交付する | 給料を減らす規定はない |
| 減給 | 1日以上6月以下の期間、給料の10分の1以下の額を減らす | 期間中、減らされる |
| 停職 | 1日以上6月以下。職は保有するが職務に従事しない | 期間中、いかなる給与も支給されない |
| 免職 | 書面を交付して職を失わせる | 職を失う |
| ※和歌山県「職員の懲戒の手続及び効果に関する条例」による。自治体によって内容は異なります。 | ||
減給は「いつまで」「どれだけ」を条例が決めます
和歌山県の条例は、減給を1日以上6月以下の期間、給料の10分の1以下の額を減らして行うと定めています。総務省が示した条例案も、減給は1日以上6月以下の期間、給料と地域手当の合計額の10分の1以下を減らす形です。給料だけを基準にするのか、手当まで含めるのかは、自治体の条例によって違います。
戒告は、給料を減らす規定がありません
和歌山県の条例で戒告について書かれているのは、処分を記載した書面を交付することだけです。戒告そのものに給料を減らす定めはありません。戒告も地方公務員法29条の懲戒処分の1つです。給料以外の影響は自治体や職場の規定によって変わるため、この記事では扱いません。
減給10分の1の1か月で、いくら減るのか
計算例:給料月額が30万円の場合、減給10分の1を1か月受けると、30万円×1/10=3万円が減ります。仮に上限の6月続くと、3万円×6=18万円です。30万円は説明用に置いた仮の数字で、実際の額は本人の給料月額と条例によります。
この3万円は、手取りではなく給料月額を基準にした計算です。実際の給与明細でどの項目が減るのかは、給与明細の見方と手取りの仕組みを解説した記事で項目ごとの意味を確認できます。
北海道教育委員会の指針では、傷害のない体罰の標準例は戒告です
処分の重さは、担当者の感覚ではなく、公表された指針の標準例を目安にして決まります。私は公的資料のPDFを最後まで読むのが好きなので、北海道教育委員会の「懲戒処分の指針」を通して読みました。
標準例は傷害の有無で分かれています
令和7年3月18日の一部改正版の指針は、体罰について次の3段階を示しています。体罰で児童生徒を死亡させ、又は重大な傷害を負わせた場合は免職又は停職、傷害を負わせた場合は停職又は減給、それ以外の体罰を加えた場合は戒告です。今回の報道では生徒にけがはなかったとされているため、この指針の標準例だけを見れば戒告にあたります。
標準例より重くなるのは、どんなときか
指針は、標準的な例を目安としつつ、処分の量定を次の7つを総合的に考えて決めるとしています。非違行為の動機、態様及び結果の程度、故意又は過失の程度、児童生徒への影響の程度、保護者や道民に与えた影響の程度、職員の職責の程度、日頃の勤務態度や非違行為後の対応、過去の非違行為歴です。
量定を加重できる場合の例として、動機や態様が極めて悪質な場合、非違行為を隠ぺいした場合又は隠ぺいしようとした場合、複数の非違行為があった場合、管理職員が行った場合、過去に同様の処分を受けた場合が挙がっています。
今回の減給が、どの理由によるのかは分かりません
標準例は戒告で、実際の処分は減給でした。ここに差があることは確かですが、どの要素が加わったのかは発表の範囲では分からず、私にも断定できません。教師の側に過去の処分歴があったのか、報告が遅れたことが影響したのかも、報道からは読み取れません。標準例と実際の処分が違うこと自体は、指針が想定している動き方です。
校長の戒告は、報告しなかったことへの処分です
叩いたのは教師ですが、校長も処分を受けました。報道では、把握しながら教育委員会に報告しなかったことが理由とされています。
北海道の指針には、報告義務が書かれています
指針の「報告義務」の項は、標準的な例に規定する事例のほか、法令等に違反する行為を行った職員は、遅滞なく所属長に報告するものと定めています。適切な報告を怠った場合は、処分量定を加重できるともあります。さらに、管理職員が非違行為を行った場合も加重できる例に入っています。校長は管理職員にあたります。
国の指針では、隠ぺい・黙認と監督の不備が別の項目です
国家公務員の指針である人事院の「懲戒処分の指針」は、部下の非違行為を知りながら隠ぺいし、又は黙認した職員を停職又は減給、指導監督に適正を欠いていた管理監督者を減給又は戒告としています。国の指針と北海道教育委員会の指針は別の文書で、校長は国家公務員ではありません。ここでは、報告しなかった側にも処分がある、という考え方の比較として置いておきます。
保護者が連絡しなければ、表に出なかったかもしれません
この件は、保護者が教育委員会に連絡して道教委が把握しました。学校から説明がないと感じたとき、教育委員会へ直接問い合わせる方法があることは、この件が示しています。ただ、問い合わせの結果がどうなるかは事案ごとに違います。
全国では、体罰でどれくらいの教育職員が処分を受けているのか
1件のニュースだけでは、多いのか少ないのか判断できません。文部科学省の令和6年度の調査で確認します。
令和6年度は311人、令和5年度は343人でした
文部科学省の「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、懲戒処分又は訓告等を受けた教育職員は4,883人(0.52%)でした。そのうち体罰により懲戒処分等を受けた者は311人(0.03%)で、令和5年度の343人(0.04%)から減っています。北海道は令和6年度が8人でした。
この数字は「訓告等」を含みます
調査の「懲戒処分等」は、懲戒処分だけでなく訓告等も含んでいます。311人がすべて減給や戒告だったわけではありません。懲戒処分の種類ごとの人数は、今回の資料では読み取れませんでした。
処分の記事を読むときの注意点
報道や発表の数字を読むとき、見落としやすい点を整理します。
条例は自治体ごとに違います
減給の期間や割合は、都道府県や市町村の条例で決まります。この記事の表は和歌山県の例で、北海道の条例本文は確認できていません。自分の自治体の条例は、例規集で確認できます。
標準例は目安で、上限や下限ではありません
指針は標準的な量定を示したもので、事案によって加重も軽減もできるとしています。標準例と違う処分が出たからといって、手続きが間違っているとは限りません。
この記事が確かめていないこと
教師の処分が減給になった具体的な理由、処分までの経過、処分前の指導の有無は、公表資料では確認できていません。処分に関する個別の判断は、教育委員会の発表や、必要なら弁護士などの専門家に確認してください。
処分の重さを、どの順で読めばよいのか
報道で処分の名前を見たとき、次の順で確認すると、重さを読み違えにくくなります。
1. 処分の名前と、期間・割合を見る
戒告は給料を減らす規定のない処分、減給は一定期間、給料の一部を減らす処分、停職は無給になる処分、免職は職を失う処分です。減給なら「10分の1」「1か月」のように、割合と期間が発表されます。
2. 傷害の有無と、隠ぺいや報告の有無を見る
北海道の指針の体罰の標準例は、傷害の有無で分かれています。加えて、隠ぺいや報告を怠ったことがあると、量定が加重される場合があります。発表に、これらの事実が書かれているかを確認します。
3. 処分を受けた人の立場を見る
教師と校長のように、立場が違えば処分の理由も違います。校長のような管理職員は、指針で加重できる例に入っています。
よくある誤解
1回叩いただけなら、体罰にならないのですか
文部科学省の通知は、殴る、蹴るなどの身体に対する侵害を内容とするものを体罰の類型としています。回数が1回かどうかは、体罰かどうかを分ける基準として書かれていません。今回の処分も、1回の平手を体罰として扱っています。
減給10分の1は、給料が10分の1ずっと減るのですか
減給は、条例で決められた期間だけ、給料の10分の1以下を減らす処分です。今回の発表では期間が1か月とされているため、減るのは1か月分です。和歌山県の条例の例では、期間の上限は6月です。
戒告は、何も起きない軽い処分ですか
戒告は、給料を減らす規定のない処分ですが、地方公務員法29条が定める懲戒処分の1つです。和歌山県の条例では、処分を記載した書面が交付されます。軽いかどうかは他の処分と比べた位置づけで、処分がないという意味ではありません。
まとめ:戒告と減給の違いは、給料を減らす規定があるかどうかです
報道では、教師が減給10分の1(1か月)、校長が戒告でした。減給は給料を一定期間減らし、戒告は給料を減らす規定がありません。どちらも地方公務員法29条の懲戒処分で、教師が生徒に加える学校教育法11条の懲戒とは別の制度です。
北海道教育委員会の指針の標準例では、傷害のない体罰は戒告ですが、事案によって加重も軽減もされます。今回なぜ減給になったかは、公表された範囲では確認できていません。処分のニュースを読むときは、処分の名前と期間・割合、傷害や報告の有無、立場の3点を順に確認すると、重さを読み違えにくくなります。最新の内容は、各教育委員会の公表資料で確認してください。
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- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・UHB北海道ニュース「テスト中に居眠りした中2男子生徒の頭を平手で1回叩いた58歳男性教師を減給処分」 https://www.uhb.jp/news/single.html?id=63403
- ・e-Gov法令検索 学校教育法(第11条) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000026
- ・e-Gov法令検索 地方公務員法(第29条) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/325AC0000000261
- ・文部科学省「児童生徒の懲戒・体罰等に関する通知」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm
- ・北海道教育委員会「懲戒処分の指針」(文部科学省掲載) https://www.mext.go.jp/content/20251222-mxt_syoto01-000019571_01.pdf
- ・和歌山県「職員の懲戒の手続及び効果に関する条例」 https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00000269.html
- ・総務省「職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(案)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000825045.pdf
- ・人事院「懲戒処分の指針について」 https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html
- ・文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1411820_00009.htm
- ・文部科学省「体罰による懲戒処分等の推移(教育職員・過去5年間)」 https://www.mext.go.jp/content/20251217-mxt_syoto01-000046407_33.pdf










































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