日経平均株価が7万円台に戻った計算はなぜ225で割らないのか|除数と値がさ株の仕組み

2026年10月5日午前の東京株式市場で、日経平均株価(225種)は前週末より1,728円15銭高い70,037円61銭まで上がり、約3カ月ぶりに7万円台へ戻りました(午前終値。中日新聞が配信した共同通信の記事)。このとき画面に出た「7万円」という数字は、いったい何を計算した結果なのでしょうか。

先に答えを書くと、225銘柄の株価を足して225で割った数字ではありません。各銘柄の株価に「株価換算係数」をかけて合計し、「除数」という数で割っています。この除数が225ではないところに、日経平均の仕組みの面白さがあります。

  • 日経平均は、株価換算係数でそろえた225銘柄の採用株価の合計を、除数で割って算出する
  • 除数は株式分割や銘柄入れ替えのたびに調整され、指数が見かけだけで動かないようにしている
  • 10月5日午前の日経平均は約2.5%、TOPIXは約1.2%の上昇で、株価の高い銘柄の影響を受けやすい価格指数の性格が出た
  • 日経平均とTOPIXは、どちらが正しいかではなく、何を映す数字かで使い分ける
目次

日経平均の7万円台は、225社の株価を225で割った数字ではありません

株価データが並ぶ画面。日経平均は225銘柄の株価をまとめて1つの数字にしたもの
Photo by Daniel on Unsplash

日経平均株価は、日本経済新聞社が日々算出して公表している株価指数です。東京証券取引所プライム市場の上場銘柄から、市場流動性の高い銘柄を中心に、業種間のバランスにも配慮して選んだ225銘柄の平均株価です。ここまでは「225社の平均」という理解で合っています。

私は長いあいだ、日経平均は225社の株価の単純平均だと思っていました。違いは割り算の下の数にあります。日経が公開している解説ページには、2018年11月27日現在の除数が26.993と書かれていて、「225からずいぶんかけ離れていますね」と添えてあります。間違っていたのは日経平均ではなく、「平均」という言葉から私が思い浮かべていた計算でした。

個々の銘柄の株価が東証でどう決まるかは、株式市場の仕組みを扱った記事で整理しています。この記事で扱うのは、その株価を束ねて1つの数字にする部分です。

計算式は2段だけ:株価換算係数でそろえ、除数で割る

日経が公表している計算式は、次の2行で全部です。

日経平均株価の計算の流れ

各銘柄の株価
→
株価換算係数をかけて
採用株価にする
→
全銘柄の採用株価を合計
→
除数で割ると
日経平均

分子は「株価換算係数」で水準をそろえる

銘柄ごとに株価の水準は大きく違います。そのまま足すと、株価の高い銘柄が数字を押し上げてしまうので、先に水準をそろえます。この役をしているのが株価換算係数です。

2021年9月までは、同じ役を「みなし額面」が担っていました。株式の額面制度は2001年10月施行の商法改正で廃止されましたが、その後も多くの銘柄が50円、500円、5万円といった旧額面の水準をもとに株価を形成してきました。そこで日経は、各銘柄の株価を旧50円額面に換算して計算に使っていました。2021年10月からは、この「みなし額面」による換算を「株価換算係数」に改めています。

みなし額面が50円なら50÷50で係数は1、500円なら50÷500で係数は0.1です(日経の説明にある「50円を現在のみなし額面で割った値」を当てはめた計算)。

分母は「除数」で、割る数を調整して連続性を守る

平均は「合計を個数で割る」ものですが、日経平均は個数の225ではなく除数で割ります。銘柄の入れ替えや株式分割が起きたとき、そのまま割り続けると、相場が動いていないのに指数が動いてしまうからです。日経は、こうした市況変動によらない株価水準の変化を除数で調整し、指数の連続性を維持するとしています。ダウ工業株30種平均と同じ系統の「修正価格平均」という方式です。

ニュースで日経平均の値を見ることはありますか?

  1. 毎日のように見る
  2. ときどき見る
  3. ほとんど見ない
  4. ニュースを見ない

📊 読者投票 受付中(現在1票)。あと4票で結果を公開します。

除数は銘柄入れ替えと株式分割のたびに調整される

数字で見るのがいちばん早いので、日経のFAQにある3銘柄の例を使います。

銘柄を入れ替えても指数が動かないようにする

A、B、Cの3銘柄の株価が400円、500円、900円で、株価換算係数はすべて1とします。合計は1,800円、除数は銘柄数と同じ3なので、指数は600円です。ここでAを外し、株価1,000円のDを採用すると、B、C、Dの合計は2,400円になります。除数を3のままにすると指数は800円に跳ね上がりますが、これは相場が上がったのではなく、入れ替えの影響です。

場面 株価の合計 除数 指数
入れ替え前(A400円、B500円、C900円) 1,800円 3 600円
入れ替え後・除数を直さない場合(B、C、D1,000円) 2,400円 3 800円(見かけだけの上昇)
入れ替え後・除数を直した場合 2,400円 4 600円(入れ替え前と同じ)
出典:日本経済新聞社「よくあるご質問(日経平均株価について)」2-6の例。新しい除数は、旧除数3に入れ替え前後の合計の比2,400÷1,800をかけて4になります。

株式分割では除数が小さくなる

日経平均プロフィルの解説には、株式分割の例もあります。A社800円、B社1,000円、C社1,800円で、合計は3,600円、平均は1,200円です。C社が1株を1.2株にする分割をすると、C社の株価は理論上1,500円になり、合計は3,300円、割る数が3のままなら平均は1,100円に下がります。企業価値が変わったわけではないのに、です。

平均を1,200円のままにするには、3,300÷1,200で除数を2.75にします。割る数が3から2.75に、減りました。株式分割や入れ替えが積み重なる間に除数は小さくなり、算出を始めたころは銘柄数と同じだった除数が、2018年には26.993になっています。

除数が小さいほど、採用株価の合計の変化が指数に大きく響きます。日経は「倍率=225÷除数」と説明していて、2018年11月27日の除数26.993なら225÷26.993で約8.3倍です。構成銘柄の単純平均株価が1円動くと、日経平均は約8.3円動く計算になります(現在の除数は別の値です)。

1株を10株にするような大きな株式分割や併合は、除数ではなく、該当銘柄の株価換算係数を変えて対応します。たとえば1株を10株に分割するなら、係数が1だった銘柄は10になります。2005年6月7日付の発表に基づくルールで、大きな調整を除数に押しつけると、指数の連続性が損なわれるおそれがあるためです。

10月1日の入れ替えでJX金属など3銘柄が加わっても、指数は跳ねない

時事の話題をひとつ足します。日本経済新聞社は2026年9月4日、日経平均の定期見直しで3銘柄を入れ替えると発表しました。市場流動性の観点からJX金属とKOKUSAI ELECTRICを採用し、業種バランスを考えてカプコンを加えます。外れるのはARCHION、コニカミノルタ、カナデビアの3銘柄で、10月1日の算出から反映されました。

日経のルールどおりなら、この入れ替えの際に除数も修正されています。銘柄が入れ替わった日に指数が急に動けば、10月5日の「7万円台回復」と比べるときに、相場の動きと入れ替えの影響が混ざってしまうからです。

定期見直しは年2回、1回の入れ替えは最大3銘柄

2026年10月1日適用予定の構成銘柄選定基準では、定期見直しは原則として年2回、4月と10月の第1営業日に実施し、基準日は1月末と7月末です。入れ替えは1回につき上限3銘柄までと決められています。

選ぶ基準の中心は市場流動性です。過去5年間の売買代金などで測り、日経平均の採用銘柄数225の倍(225×2で450)にあたる上位に入る銘柄を「高流動性銘柄群」とします。この群に入らなくなった銘柄(451位以下)は除外されます。加えて、業種をまとめたセクターごとの銘柄数の過不足も調整します。

日経のFAQ(2022年4月版)には、定期見直しは「毎年1回、秋に実施」と書かれています。2026年の選定基準は年2回なので、古い資料と新しい資料で食い違っていました。この記事では、2026年10月1日適用予定の基準を採っています。

5日の+1,728円は約2.5%、TOPIXは約1.2%:株価の高い銘柄が効く理由

半導体ウエハーに並ぶチップ。AI・半導体関連の値がさ株は日経平均を動かしやすい
Photo by Laura Ockel on Unsplash

10月5日午前の動きを、日経平均とTOPIXで並べます。日経平均は前週末比1,728円15銭高の70,037円61銭で、TOPIXも上昇しました(TOPIXの値は下の表に載せています)。前週末の米国市場で、米雇用統計が市場予想を下回って利上げ観測が後退し、ハイテク株中心に株価指数が上がった流れを受けた動きです。東京でも、株価水準が高い半導体検査装置大手のアドバンテストなどが買われ、AI・半導体関連が相場を押し上げました。

上げ幅の「円」と「ポイント」は、単位が違うので並べても比べられません。そこで率に直します。

指数 前週末の値(引き算) 上昇率(割り算)
日経平均 70,037.61−1,728.15=68,309.46円 1,728.15÷68,309.46=約2.5%
TOPIX 4,138.57−47.57=4,091.00 47.57÷4,091.00=約1.2%
午前終値ベースの筆者計算。TOPIXの上げ幅と午前終値は中日新聞(共同通信)の記事より。2.5%÷1.2%で、日経平均の上昇率はTOPIXの約2倍です。

ニュースの見出しは「1,700円超の上げ」と大きく見えますが、率にすると2.5%です。私は、ニュースで上げ幅の数字を見たらまず前日の値で割ることにしています。見出しの熱と、割り算をしたあとの温度には、案外差があります。

価格指数は、株価の高い銘柄の影響を受けやすい

この日の差が出た理由として、日経のFAQの説明が当てはまります。日経平均は価格指数なので、ハイテク株など株価の高い「値がさ株」の影響を受けやすく、時価総額型のTOPIXは時価総額の大きい金融株などの影響を受けやすいといわれます。この日はアドバンテストのような株価水準の高いハイテク株が買われた日でした。

ただし、この日の差のうち値がさ株の寄与がどれだけかは、銘柄別の寄与度を見ないと分かりません。ここでは、仕組みが示す方向と当日の動きが合っている、というところまでにとどめます。両指数の値動きには高い相関がある、とFAQにも書かれています。

一部の大きな値に平均が引っ張られる性質は、給与の平均値と中央値のズレを扱った平均給与が実感より高く感じる理由の記事でも出てきました。株価の平均でも、同じことが起きています。

日経平均の弱点と、数字を見るときの注意点

見かけの上げ幅は、水準が高いほど大きくなる

同じ1,000円の上げでも、水準によって重みが違います。上げ幅の円だけを追うと、水準が上がった分だけ動きが大きく見えます。前日終値は「終値−上げ幅」で出せるので、ニュースで上げ幅を聞いたら率に直す習慣をつけると、過去の相場とも比べやすくなります。

1,000円の上げは、日経平均が7万円なら1,000÷70,000で約1.4%、5万円なら1,000÷50,000で2%です(筆者計算)。

225銘柄だけの数字で、市場全体ではない

日経平均は東証プライム市場の中から選んだ225銘柄の指数です。市場全体の動きは、主に東証プライム市場の銘柄を対象にするTOPIXのほうが近いとされています。どの銘柄が入っているかも固定ではなく、年2回、最大3銘柄ずつ変わります。

終値が手元の計算と合わないことがある

日経平均の算出に使う株価は、特別気配または連続約定気配、現在値、基準価格の順で採用します。終値の算出なら日中の最後の取引の現在値を使うことがほとんどですが、特別気配で取引を終えていれば、終値ではなく特別気配が使われます。新聞の相場表には特別気配が載らないので、自分で計算した値と合わないことがあります。日経のFAQによれば、問い合わせでいちばん多いのがこのケースです。

日経平均とTOPIX、どちらを見るか判断する目安

ニュースでは日経平均とTOPIXが並んで紹介されます。どちらが優れているかではなく、何を映したいかで選ぶ道具です。

項目 日経平均株価 TOPIX(東証株価指数)
算出する会社 日本経済新聞社 JPX総研
対象 東証プライム市場の225銘柄 主に東証プライム市場の銘柄
型 価格指数(修正価格平均) 時価総額型
影響を受けやすい銘柄 ハイテク株など株価の高い値がさ株 時価総額の大きい金融株など
向く場面 歴史が長く、ニュースで共通に使われる数字として 市場全体の時価の動きをとらえたいとき
出典:日本経済新聞社「よくあるご質問(日経平均株価について)」4-1〜4-3

半導体や輸出株の動きに日経平均が引っ張られた日は、TOPIXも並べて見ると全体との差が分かります。金融株が主役の日はその逆になります。両方を見て差が大きいときは、一部の銘柄が動かしている日、と読んでおくのが無難です。

日経平均に連動する商品もある

日経のFAQによると、日経平均の先物やオプションは大阪取引所などに、ETFは国内で東証に9銘柄が上場しています(2022年4月時点)。日本国内の日経平均連動型の純資産規模は、2020年6月時点でおおむねETFで14兆円、非上場投信で1.4兆円とされています。商品の仕組みはETFの仕組みの記事にまとめています。指数の計算を知っておくと、連動する商品の値動きがなぜ指数どおりになるのかも読み取りやすくなります。

「日経ダウ」と呼ばれた時期もある:算出の主役は途中で変わっている

日経平均は、最初から日経が計算していたわけではありません。FAQの沿革をたどると、意外な履歴が出てきます。

年 出来事
1950年9月7日 算出を開始。東京証券取引所が算出し「東証修正平均株価」として公表(指数値は1949年5月16日の東証再開日まで遡及計算)
1970年 東証株価指数(TOPIX)の算出開始に伴い、日経グループが算出を引き継ぐ
1975年5月〜1985年5月 米ダウ・ジョーンズ社の許可を得て「日経ダウ平均株価」の名称で算出・公表
1985年〜2009年 リアルタイム算出を開始。1分間隔で算出
2010年1月4日〜2017年7月14日 15秒間隔で算出
2017年7月18日〜 5秒間隔で算出。始値は午前9時00分05秒の値
出典:日本経済新聞社「よくあるご質問(日経平均株価について)」1-5、2-1、4-4

「225」という銘柄数にも、特別な意味づけはないそうです。FAQには、1950年当時の詳しい経緯は不明で、売買高の多い銘柄を全業種からバランスよく選んだところこの数になったとされる、と書かれています。ただ、いまは「日経225」の名前で世界中に使われている実態を尊重し、225銘柄という基本コンセプトを継承していく、というのが日経の立場です。切りのいい数字には必ず理由がある、と思い込んでいた私には少し意外でした。

日経平均についてよくある誤解

誤解1:7万円は、日本企業の平均株価である

違います。日経平均は、採用株価の合計を除数で割った指数の値で、どの会社の株価でもなく、225社の平均株価そのものでもありません。株価換算係数と除数を通した、連続性を保つための値です。

誤解2:銘柄を入れ替えると日経平均が動く

入れ替えの際は除数が修正され、入れ替えそのものでは指数が動かないように作られています。FAQの例では、入れ替え前後で指数が600円のまま保たれます。

誤解3:自分で計算すれば、終値が完全に再現できる

特別気配の扱いなどで、新聞の相場表の株価から計算した値と合わないことがあります。除数や株価換算係数も、銘柄入れ替えや株式分割で変わります。除数は朝刊の「クローズアップ日経平均株価」に載り、日経平均プロフィルの日次サマリーでは2004年9月30日以降の除数が確認できます。

まとめ:日経平均7万円台を読むための要点

日経平均の7万円台は、225銘柄の採用株価を除数で割った値です。除数が225ではないのは、株式分割や銘柄入れ替えがあっても指数が見かけだけで動かないように、割る数を調整してきたからです。10月1日の入れ替えでも、同じ仕組みで連続性が保たれています。

10月5日午前は、日経平均が約2.5%、TOPIXが約1.2%の上昇でした。日経平均は株価の高い銘柄の影響を受けやすい価格指数なので、AI・半導体関連が買われた日は、TOPIXより大きく動いて見えることがあります。ニュースで上げ幅を聞いたら前日の値で割って率にし、TOPIXと並べて見ると、動きの中身が読みやすくなります。

どの指数も、市場の一側面を映した数字です。7万円という数字の大きさそのものより、何が入った平均で、どう調整された数字なのかを知っておくと、見出しの熱と数字の実際の差を自分で測れるようになります。

この記事の内容、読む前から知っていましたか?

  1. 知っていた
  2. なんとなく知っていた
  3. 初めて知った
  4. 誤解していた

📊 読者投票 受付中(現在3票)。あと2票で結果を公開します。

参考文献・出典

この記事について 本記事は、お金の“仕組み”を知る面白さをお届けし、お金や経済への興味を広げていただくための読み物です。特定の金融商品をすすめるものではありません。実際の投資・契約はご自身の判断で、必要に応じて専門家にご相談ください。株価や構成銘柄は日々変わるため、最新の値は日経平均プロフィルなど公式の公表をご確認ください(2026年10月5日午前時点の情報です)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。