一酸化炭素警報器が無色無臭のCOを検知できる理由|電流で測る仕組みと、鳴る前に危険な濃度になる場所

一酸化炭素(CO)警報器は、見た目こそ火災警報器に似ていますが、中身はまったく別の機械です。煙や熱ではなく、目にも鼻にも感じられないガスを、電極の反応で生じる電流として測っています。暖房を使う機会が増える秋から冬の前に、その仕組みと、鳴るまでの時間を一度確かめておきたいところです。

先に結論を書くと、警報器は設計どおりに鳴っていても、その時点で枕元のような別の場所はすでに危険な濃度になっていることがあります。東京消防庁の実験で、その差が数字で確かめられています。この記事では、センサーの中で起きている反応から、警報が鳴る濃度、公的資料で確かめられた事故の傾向までを順に整理します。

  • 一酸化炭素は無色無臭で、気体比重は0.97と空気とほぼ同じ重さ
  • 電気化学式のセンサーは、COが電極で反応するときに流れる電流を測って検知する
  • 家庭用の警報条件の例は、50ppmを超えて250ppm以下の低濃度と、550ppm以下の高濃度
  • 東京消防庁の実験では、警報器が鳴った時点で枕元は約2000ppmに達していた

一酸化炭素は色もにおいもなく、空気とほぼ同じ重さ

COが怖いのは毒性の強さだけではありません。人の感覚では、気づく手がかりがほとんど無いことが問題です。

色もにおいもない気体の性質

東京消防庁の報告書は、一酸化炭素を「無色、無臭、水に溶けにくい」気体と説明しています。気体比重は0.97で、空気とほぼ同じ重さです。NITE(製品評価技術基盤機構)も、一酸化炭素は無色・無臭のために気がつきにくく、中毒になると死亡することもあると注意しています。

ものが燃えるには新鮮な空気がたくさん必要で、換気が足りないと不完全燃焼が起き、一酸化炭素が出ます。炎が見えていても、空気が足りているとは限りません。

血液の中で起きていること

MSDマニュアルによると、一酸化炭素は赤血球の中のヘモグロビンに結合して、血液が酸素を運ぶのを妨げます。症状は頭痛、吐き気、めまい、眠気、錯乱、意識消失と段階的に重くなります。眠気を中毒の症状だと本人が気づけず、軽い中毒の人が眠ってしまってさらに悪化することがある、とも書かれています。

中毒の程度は、血液中の全ヘモグロビンのうちCOと結合した割合(COHb濃度)で表します。東京消防庁の報告書にある対応表から、主な段階を抜き出します。

COHb濃度 主な症状
0〜10% 症状は現れない
10〜20% 前頭部の緊迫感、軽い頭痛
20〜30% 頭痛、側頭部のズキズキする脈動
30〜40% 強い頭痛、めまい、耳鳴、吐き気、脱力感、歩行困難、虚脱
50〜60% 失神、呼吸数と脈拍数の増加、昏睡、間欠的なけいれん
80〜100% 急速な死
※東京消防庁「一酸化炭素中毒事故に関する検証(第2報)」表1より抜粋

私がこの表で一番重く読んだのは、30〜40%の欄にある「歩行困難」と「虚脱」です。頭痛やめまいが出る段階で、すでに自分の足で逃げる力が落ち始めています。警報器が必要な理由は、ほぼこの一行に尽きると思います。

事故が起きているのは、どんな機器のそばか

ガスコンロのバーナーに灯る青い炎。ガス機器は燃えるために空気が必要で、換気が足りないと不完全燃焼でCOが出る
Photo by Jesse Paul on Unsplash

NITEの注意喚起(平成25年11月28日)は、NITEに通知された製品事故情報のうち、一酸化炭素中毒の事故を平成20年度から24年度までの5年間で集計しています。新しい全国集計は今回確かめられていないため、ここでは傾向をつかむための資料として読みます。

5年間で51件、死亡は13件

5年間の事故は51件で、死亡事故が13件、重傷事故が4件、軽傷事故が34件でした。死亡事故の割合は、13÷51で約25%、およそ4件に1件です。(筆者計算:13÷51=0.255)

製品 5年間の事故件数
ガス湯沸器 18件
ガス給湯機(ふろがまを含む) 8件
石油ストーブ 7件
石油温風暖房機(石油ファンヒーター) 5件
携帯発電機 5件
ガスこんろ 3件
その他(七輪、ガスストーブなど) 5件
※NITE「一酸化炭素中毒の事故防止について(注意喚起)」表1より。平成20〜24年度の合計

製品の欠陥ではなく、使い方や施工で起きている

同じ資料で目を引くのは原因の分類です。製品に起因する事故は0件で、使い方の不注意や誤り、施工や修理に関わる「製品に起因しない事故」が42件、82.3%を占めました。NITEが挙げる事例には、約34年使ったガス湯沸器をホコリとススがたまった状態のまま、換気扇を回さずに使っていた例や、閉め切った寝室で石油ストーブを長時間使っていた例があります。死亡事故が最も多かった誤使用や不注意による事故では、死亡事故8件のうち3件が携帯発電機によるものでした。

月別では11月から3月に増えています。暖房機器や湯沸器を使う機会が増えるためだと資料は説明しています。被害者は50歳代が多い一方で、20歳代や30歳代でも死亡事故が起きています。

私が住んでいるのは築20年超の賃貸で、ガスは都市ガスです。給湯器の点検がいつだったか、この原稿を書きながら思い出せないことに気づきました。事例の多くは、特別な状況ではなく、よくある暮らしの延長にあります。

お住まいに、一酸化炭素警報器(または一酸化炭素の検知機能つきの火災警報器)はありますか?

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警報器の中では、COが電流に変わっている

CO警報器のセンサーには、電気化学式や半導体式などの方式があります。ここでは構造が資料で確かめられた電気化学式から見ます。

電極の反応で生じる電流を測る

特許公報に書かれた電気化学式センサーは、電解質の層を挟んで、検知極(アノード)と対極(カソード)を向かい合わせた積層構造です。COが検知極に届くと、水と反応して二酸化炭素になり、水素イオンと電子を放出します。電子は外部の回路を通って対極へ移り、対極では空気中の酸素と水が反応して水酸化物イオンができます。

この電子の流れが電流です。別の特許公報には、酸化還元反応にともなって作用極と対極の間を流れる電流を測ることで、対象のガスを検出し、定量できると書かれています。COが多ければ反応が多く起き、流れる電流も大きくなります。センサーが測っているのはガスの濃度そのものではなく、反応で生じた電流の大きさです。

半導体式という別の方式もある

東京消防庁が実験に使った警報器は、酸化スズ(SnO2)を使った半導体方式でした。方式は製品によって違い、ここで紹介した電気化学式だけが正解というわけではありません。半導体式ガスセンサーの考え方は、ガス警報器が都市ガスとプロパンで設置場所が逆になる理由の記事で詳しく書いています。

煙を見る火災警報器とは別のセンサー

火災警報器は、煙や熱を感知する機器です。仕組みは火災報知器が誤作動する理由と煙感知・熱感知の違いの記事にまとめました。一方、消防庁の資料に載っているガス警報器工業会の説明では、火災とCOの両方を検知する「住宅用火災・CO警報器」は、煙感知式(光電式)の火災警報機能と、不完全燃焼で出るCOを検知する機能が一体になった複合型です。同じ天井に付いていても、中の検知器は別々に動いています。

警報は何ppmで、どう鳴るのか

ppmは、ごく薄い濃度を表す単位です。消防庁の資料にある警報条件の例を、東京消防庁の実験で使われた警報器の仕様と並べます。

資料 低濃度の警報 高濃度の警報
消防庁資料(ガス警報器工業会) 50ppmを超えて250ppm以下。黄色ランプが点滅し、5分たつと音声で警報 低濃度を超えて550ppm以下。黄色ランプが点灯し、音声で警報
東京消防庁の実験で使った警報器 25〜300ppmのとき、10分以内に応答 550ppm以下のとき、5分以内に応答
※消防庁「住宅用火災・CO警報器について」、東京消防庁「一酸化炭素中毒事故に関する検証(第2報)」表2より

資料を二つ並べたら、低濃度の範囲が、一方は50ppmを超えるところから、もう一方は25〜300ppmと食い違っていました。製品の仕様が違うだけで、どちらかが誤りということではありません。お手元の警報器の数字は、取扱説明書の仕様で確かめてください。

どちらの資料にも、低濃度の側には5分や10分以内といった時間の幅が仕様に入っています。濃度が上がれば即座に鳴る、という作りではありません。時間をかける理由は、確かめた資料には書かれていませんでした。

警報が鳴ったとき、枕元はもっと濃くなっていた

警報器は危険な濃度になったら鳴るもの、と私は思っていました。その見方を直してくれたのが、東京消防庁の実験です。

寝たばこの無炎燃焼で調べた実験

住宅用火災警報器は平成22年4月1日に一般住宅への設置が義務化され、平成23年7月時点で80.6%まで普及しました。ところが寝たばこが原因の火災の死傷者数は、設置率が上がっても横ばいでした。警報器が鳴る前に一酸化炭素中毒で動けなくなっているのではないか、という疑問から、東京消防庁は寝たばこの無炎燃焼を再現して、部屋の中のCO濃度と警報器の作動時間を測っています。

時間を追うと見えること

点火からの時間 起きたこと
約29分 枕元の位置で約900ppm。吸い続けた場合のCOHb濃度は推定で30%を超える。このとき天井付近は45ppmで、CO警報器は鳴っていない
約35分 枕元の位置で1000ppmに達する
54分45秒 天井中央のCO警報器が作動。枕元は約2000ppm、COHb濃度は推定で60%超。天井付近は199ppm
58分16秒 天井中央の煙感知式の火災警報器が作動
61分13秒 壁体上部の煙感知式の火災警報器が作動
※東京消防庁「一酸化炭素中毒事故に関する検証(第2報)」。枕元は高さ0.36m。COHb濃度は報告書の計算による推定値

枕元が1000ppmに達してから、CO警報器が鳴るまで、54分45秒から35分を引いて約20分ありました。数字を並べて、少し言葉を失いました。警報器は壊れていません。報告書も、警報器は仕様の範囲で作動したと書いています。それでも、鳴った時点で枕元は約2000ppm、COHb濃度は60%を超える推定でした。

間違っていたのは警報器ではなく、私の見方でした。警報器が知らせるのは、取り付けた場所の濃度です。部屋のどこでも同じ濃度とは限りません。この実験では、COはまず天井付近から濃くなり、壁に沿って降りて床付近にも広がる対流拡散でした。

この結果から言えること、言えないこと

言えるのは、寝たばこのような煙の少ない燃え方では、煙感知式の警報器が鳴る前に、COのほうが先に危険な濃度に達する可能性があるということです。報告書も、煙感知式の火災警報器が鳴ったときには、より致命的な状態になっている可能性があると結論づけています。

言えないのは、石油ストーブやガス湯沸器でも同じ時間経過になる、ということです。この実験は寝たばこ火災が対象で、機器の不完全燃焼は条件が違います。数字をそのまま暮らしに当てはめず、鳴ったら迷わず動く理由として読むのが妥当だと思います。

取り付けと使い方で外せない注意点

片側を開けた木枠の窓。石油ストーブやガス湯沸器を使うときは定期的に換気する
Photo by Katerina on Unsplash

警報器には弱点もあります。正直に整理しておきます。

警報器は換気の代わりにならない

NITEは、ガス湯沸器や石油ストーブ、石油ファンヒーターを使うときは定期的に換気するよう求めています。換気が不十分だと酸素が足りなくなり、不完全燃焼でCO濃度が上がるためです。警報器が鳴るのは濃度が上がってからで、そもそも上げないための換気が先です。換気扇の種類や使い分けは換気扇の仕組みと種類の記事を参考にしてください。

設置場所は取扱説明書の指示に従う

COの比重は0.97で、東京消防庁の実験でも対流拡散でした。「軽いから天井、重いから床」と決めつけるのは危ういと思います。高さや壁からの距離は製品の設計で決まっているので、取扱説明書の指示が基本です。寝室で暖房機器を使うなら、枕元の濃度と警報器の位置が離れていることも頭に入れておきたいところです。

交換の期限と点検

電池式の警報器にも本体にも、交換の目安があります。年数や表示の見方は製品ごとに違うため、本体の表示と取扱説明書で確かめてください。機器の側では、NITEが、不快なにおい、炎があふれる、ススが付着する、使用中に火が消えるといった異常が見られたら、すぐに使用を中止して点検を受けるよう求めています。

暮らし方別に、まず何を確かめるか

警報器を買い足す前に、燃焼機器の使い方を見直すほうが先です。NITEが挙げる注意点を、機器ごとに並べます。

使っているもの NITEが挙げる主な注意点
石油ストーブ・石油ファンヒーター 定期的に換気する。閉め切った寝室で長時間使わない(事例の製品には「就寝前は必ず消火する」と表示があった)
ガス湯沸器・ガス給湯機 使うときは換気扇を回すか窓を開ける。ホコリやススがたまると不完全燃焼しやすい。異常があれば使用を中止して点検を受ける。給排気口を外壁塗装などの養生シートでふさがない
ガスこんろ 使用中は換気扇を回すか、窓を開ける
携帯発電機 室内や換気の悪い場所では使わない
※NITE「一酸化炭素中毒の事故防止について(注意喚起)」「冬の製品事故に注意」より

単体の警報器と、火災警報器との複合型

複合型の例として、新コスモス電機のプレスリリースには、COを100ppm以上検知すると煙センサーの感度を上げる製品が出ています。煙の作動点が、COを検知していないときの5〜15%/mから、2.5〜7.5%/mに切り替わるという説明です。火災の警報をより早く出すための仕組みだと説明されています。

どちらを選ぶかは、機器の使い方と部屋で決まります。寝室で暖房機器を使う、ガス湯沸器が古い、という条件なら、COを測る機能を足す理由があります。逆に暖房にエアコンしか使わず、燃焼機器が台所のガスこんろだけなら、換気の習慣の優先度が上がります。特定の製品をすすめるものではありません。

今夜できる確認

難しいことは要りません。使う予定の暖房機器の取扱説明書で「換気」と「就寝前」の注意書きを読むこと。ガス湯沸器や給湯機の給排気口が、物でふさがれていないか見ること。警報器が付いているなら、本体の表示で交換の目安を確かめること。この3つで、資料に出てくる事故のパターンのかなりの部分に手が届きます。

よくある誤解

火災警報器が付いていれば、一酸化炭素にも気づける?

気づけるとは限りません。煙式や熱式は煙や熱に反応する機器で、COそのものは測っていません。先ほどの実験では、煙感知式の警報器が鳴ったとき、枕元のCOはすでに危険な濃度でした。COも測りたいなら、CO警報器か、検知機能つきの複合型を選びます。

一酸化炭素は空気より軽い?重い?

気体比重は0.97で、空気とほぼ同じ重さです。同じ実験では、天井付近から濃くなり、壁に沿って降りて床付近にも広がりました。取り付け位置は取扱説明書に従います。

ガス漏れ警報器があれば、CO警報器は要らない?

役割が違います。ガス漏れ警報器は、都市ガスやプロパンガスといった燃料ガスそのものの漏れを検知します。ガス漏れ警報器が微量のガスで鳴る仕組みは別の記事で説明しています。CO警報器が測るのは、燃料が不完全燃焼したときに出る排気ガス中のCOです。

警報器が鳴らなければ、部屋の空気は安全?

言い切れません。実験では、枕元のCOが約900ppmに達した時点で、天井付近は45ppmで警報器は鳴っていませんでした。警報器は取り付けた位置の濃度で作動するので、鳴らないことは安全の証明になりません。

まとめ:一酸化炭素警報器の仕組みと使い方で覚えておくこと

一酸化炭素警報器は、COが電極で反応するときの電流を測るなどして、無色無臭のガスを検知しています。家庭用の警報条件の例は、50ppmを超えて250ppm以下の低濃度と、550ppm以下の高濃度です。低濃度の警報には5分や10分以内といった時間の幅があり、濃度が上がった瞬間に鳴るとは限りません。

東京消防庁の実験は、警報器が仕様どおりに作動していても、枕元はすでに約2000ppmに達していたことを示しました。鳴ったら窓を開けて機器を止め、新鮮な空気のある場所へ移る。取扱説明書の手順が優先です。頭痛やめまいを感じたら、無理に動かず外の空気を吸い、症状が続くなら救急相談に連絡してください。

事故の資料を読むと、原因の多くは製品の欠陥ではなく、換気と点検の不足でした。警報器は最後の備えで、その手前の換気と点検が本体です。この順番を覚えておけば、判断は難しくなくなります。

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参考文献・出典

この記事について 本記事は、一酸化炭素警報器の“仕組み”と公的資料の内容を知っていただくための読み物です。警報器は事故を防ぐことを保証する機器ではなく、換気や機器の点検の代わりにもなりません。体調に異変を感じたときや警報が鳴ったときの対応、機器の設置場所、交換の時期は、製品の取扱説明書、メーカー、消防・救急の案内に従ってください。体の不調がある場合は、速やかに医療機関や救急相談窓口へご相談ください(2026年10月時点の情報です)。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。