「千葉県の魅力度が5年間で7ランク下がった」という見出しを見かけました。ディズニーも成田空港もある県が、なぜそこまで下がるのか。気になって調べ始めたのですが、私が先に確かめたくなったのは順位の理由より、順位のつけ方でした。魅力度ランキングの点数は、どんな質問に、どう答えた人を、どう数えて作られているのでしょうか。
この記事では、ブランド総合研究所の「地域ブランド調査」の調査概要、点数の計算式、栃木県の公表データを使った実際の計算、群馬県がまとめた検証報告書の指摘を整理します。千葉県の2026年の順位と点数は、私が開いた資料には載っておらず、確かめられませんでした。見出しの「7ランク」という数字は、この記事では扱いません。(2026年10月時点の情報です)
- 魅力度の点数は「とても魅力的」と「やや魅力的」と答えた人の割合だけで計算される
- 「どちらでもない」「あまり魅力的でない」「全く魅力的でない」は、どれも0点として扱われる
- 点数が0.5点違うだけで、順位が3つ動いた例がある
- 栃木県の回答者数で誤差を計算すると、点数には約2点の幅がある
魅力度の点数は、2つの選択肢の割合だけで決まる
ランキングの点数を作る質問は、1つだけです。「以下の自治体について、どの程度魅力を感じますか」と尋ね、回答者は5つの選択肢から1つを選びます。選択肢は「とても魅力的」「やや魅力的」「どちらでもない」「あまり魅力的でない」「全く魅力的でない」です。
点数になるのは「とても」と「やや」だけ
栃木県の公表資料には、魅力度の計算式が次のように書かれています。魅力度は、100点に「とても魅力的」と答えた人の割合をかけたものと、50点に「やや魅力的」と答えた人の割合をかけたものを足して求めます。残りの3つの選択肢は、計算に入りません。
私はこれを読むまで、「あまり魅力的でない」と答える人が多い県ほど点数が下がるのだと思い込んでいました。実際には、否定的な回答は点数をまったく下げません。
同じ点数でも、中身は違いうる
たとえば、ある県で「とても魅力的」が10%、「やや魅力的」が20%だったとします。計算は100×0.10+50×0.20=20点です。残りの70%が全員「どちらでもない」でも、全員「全く魅力的でない」でも、点数は同じ20点です。この数字は説明のために私が作った仮の例で、実際の県の値ではありません。
調査は31,666人、1人が11か12の都道府県に答える
2026年の地域ブランド調査は、インターネットで行われました。有効回収数は31,666人で、対象は全国1,000の市区町村と47都道府県です。調査項目は、認知度や魅力度、観光意欲、居住意欲などを合わせて91項目あります。この調査は21回目で、都道府県の調査は2009年から続いています。
1人が答えるのは、47都道府県のうち11か12
回答者は、47都道府県をすべて評価するわけではありません。調査票には、都道府県が11または12だけ示され、回答者はそれぞれについて答えます。市区町村の調査票では20の市区町村が示されます。回答者数が3万人を超えていても、1つの県を評価した人数は3万人よりずっと少なくなります。
2021年の調査では、地域ごとの回答者数が都道府県で平均1,021人でした。栃木県の2020年の資料では、栃木県を評価した人が604人です。県ごとの人数は、県によって違います。
人口の縮図に合わせて、回答を組み直して数える
回答者は、20代から70代を男女別、年代別、地域別にほぼ同数ずつ集めています。そのままでは日本の人口構成と合わないため、年齢や地域の人口分布に合わせて再集計して、日本の縮図になるようにしています。栃木県の資料では、この方法を性別・年代・居住地を基準にした「ウェイトバック集計」と説明しています。回答の一部だけから全体を推し量る調査の誤差については、内閣支持率の世論調査を扱った記事で解説しています。
あなたは、旅行先や移住先を選ぶときに魅力度ランキングを参考にしますか?
- よく参考にする
- たまに参考にする
- 話題として見る程度
- ほとんど見ない
栃木県の実数で、魅力度11.4点を計算してみる
計算式が分かったので、栃木県が公表している2020年の回答割合で確かめます。公表されている割合は、「とても魅力的」が3.4%、「やや魅力的」が15.9%、「どちらでもない」が57.0%、「あまり魅力的でない」が16.7%、「全く魅力的でない」が4.4%です。
100×3.4%+50×15.9%で11.4点になる
計算は100×0.034+50×0.159=3.4+7.95=11.35です。四捨五入すると11.4点で、栃木県が公表している2020年の魅力度11.4点と一致します。この年の栃木県は47都道府県の47位でした。
点数に入らなかった回答は、全体の約8割
「どちらでもない」57.0%、「あまり魅力的でない」16.7%、「全く魅力的でない」4.4%を足すと78.1%です。栃木県では、回答の約8割が点数に反映されていないことになります。
栃木県の「あまり魅力的でない」と「全く魅力的でない」を足すと、16.7+4.4=21.1%です。この割合が増えても減っても、点数は変わりません。
0.5点の差で順位が3つ動く:千葉県と栃木県の例
点数の差が小さいと、順位は簡単に入れ替わります。2020年の栃木県の資料にある順位表で、千葉県と栃木県の動きを見てみます。
千葉県は20.1点から19.6点で、順位は3つ下がった
千葉県の魅力度は、2019年が20.1点で18位、2020年が19.6点でした。2020年の近くには、熊本県と広島県が20.2点で18位、秋田県が20.0点で並んでいます。千葉県の点数は0.5点下がっただけで、順位は3つ下がりました。
20.1−19.6=0.5点です。
栃木県は12.5点から11.4点で、43位から47位へ
栃木県は、2019年が12.5点で43位、2020年が11.4点で47位でした。点数の下がり方は千葉県より大きいものの、それでも1.1点です。(12.5−11.4=1.1点で計算)この年の下位は、44位の福井県が13.0点、45位の佐賀県が12.5点、46位の徳島県が12.1点でした。47位の栃木県との差は、徳島県で0.7点です。(12.1−11.4=0.7点で計算)
誤差を計算すると、点数には約2点の幅がある
順位の差が、本当に魅力の差を表しているのかを確かめるには、点数の誤差の幅が必要です。栃木県の資料にある回答者数(604人)と回答割合で、私が計算してみました。
604人の回答なら、誤差は約±2点
前提は、回答が無作為に選ばれた604人の結果で、ウェイトバック集計の影響は考えないことです。点数の平均は11.35、点数の2乗の平均は10000×0.034+2500×0.159=737.5なので、分散は737.5−11.35²≒608.7、標準偏差は約24.7になります。標準誤差は24.7÷√604≒1.0で、95%の信頼区間は±1.96×1.0≒±2.0点です。
栃木県の点数は、11.4点というより、11.4−2.0=9.4点から11.4+2.0=13.4点の間のどこか、と読むほうが近くなります。他の県の回答者数は私の手元の資料では分からないため、同じ幅だとは言えません。それでも、0.5点や1点の差で順位が動くのは、この幅の中の出来事だと分かります。
群馬県の検証では、有意な差がない県が14あった
群馬県は、魅力度ランキングの検証報告書を公表しています。2021年の調査を対象に、群馬県を基準にして他の都道府県との差を統計的に検定しました。現在の計算方法では、群馬県と5%水準で有意な差がなかった県が14ありました。一般的な5段階の点数のつけ方に変えて計算し直しても、10県でした。報告書は、誤差の範囲で順位づけをしているという性質が強いランキングだと指摘しています。平均値だけで並べる難しさは、平均給与が実感より高く見える理由の記事でも扱っています。
点数のつけ方の注意点:床効果と、回答者の経験の差
群馬県の報告書は、計算方法と調査のやり方の両方に注意点があると指摘しています。ここでは、数字で確かめられる2点を取り上げます。
回答を3段階に減らしている
一般的な5段階の集計では、「とても魅力的」を5、「やや魅力的」を4、「どちらでもない」を3、「あまり魅力的でない」を2、「全く魅力的でない」を1として平均します。魅力度ランキングは、1、0.5、0、0、0のかけ方をしているため、5つの選択肢の情報が実質3段階に減っています。報告書は、この計算方法だと47都道府県のうち41県で「床効果」が見られたとしています。床効果とは、回答が低い側の選択肢に集まって、差が正しく測れなくなる状態のことです。
住んだことや訪れたことがある人が混ざる
報告書は、回答者の居住経験や訪問経験が県によって大きく偏る点も挙げています。東京や大阪は住んだことや訪れたことがある人が多く、そうでない県もあります。住んだ経験からの魅力と、観光で訪れた経験からの魅力は、判断の拠り所が違います。質問は1つなので、その違いは点数に分けて出てきません。
2026年の結果で、順位の読み方と判断のしかたを試す
実際の2026年の結果で、順位と点数をどう読むかを確認します。北海道が18年連続の1位、2位が京都府、3位が沖縄県でした。東京都が4位、神奈川県が5位です。最下位は佐賀県で、昨年は45位でした。茨城県は46位、埼玉県は44位です。
順位の変化より、点数の動きを見る
大阪府は魅力度が前年より5.3点上がり、この上昇幅は47都道府県で最も大きくなりました。順位は2つ上がって6位です。長崎県は魅力度が36.4点で、調査を始めてから過去最高でした。順位は3つ上がって8位です。栃木県と同じくらいの誤差だと仮定すると、5点前後の動きは約2点の幅を超えているので、評価が実際に変わった可能性を考えられます。他の県の誤差は確かめていません。
順位は同じでも、点数が動いていることがある
1位から3位は前年と同じ順位でしたが、私が開いた記事には3県の点数が載っていませんでした。順位が変わらないときは点数の変化を、順位が変わったときは点数の差を見る、という順番で読むのが安全です。ランキングを引用するときは、順位だけでなく調査主体と調査年を添えると、読んだ人が出どころをたどれます。
魅力度ランキングのよくある誤解
「魅力的でない」と答えた人が多い県ほど、点数が低くなる?
なりません。「あまり魅力的でない」と「全く魅力的でない」は、どちらも0点で計算されます。点数が低い県は、「とても魅力的」と「やや魅力的」の割合が低い県です。
最下位の県は、魅力がないと答えた人が最も多い県?
必ずしもそうではありません。最下位になるのは、2つの選択肢の割合から計算した点数が最も低い県です。否定的な回答の割合は点数に入らないため、栃木県のように約8割の回答が点数に使われない県もあります。
順位が1つ下がったら、魅力が下がったということ?
そうとは言えません。千葉県は0.5点の差で3つ、栃木県は1.1点の差で4つ順位が動きました。点数には約2点の幅があるので、この大きさの変化は誤差の範囲に収まりえます。
まとめ:魅力度ランキングは点数と誤差の幅で読む
魅力度ランキングの点数は、「とても魅力的」の割合に100点、「やや魅力的」の割合に50点をかけて足した値です。残りの3つの選択肢は0点で、栃木県の例では回答の約8割が計算に入っていませんでした。
回答者数から計算すると、点数には約2点の幅があります。千葉県の0.5点で3つ、栃木県の1.1点で4つという動きは、その幅の中の出来事です。順位を見るときは、点数の差が2点を超えているかどうか、調査主体と調査年はどこか、の2つを確かめると判断しやすくなります。千葉県の2026年の順位と点数は、ブランド総合研究所の公表資料で確かめてください。
この記事の内容、読む前から知っていましたか?
- 知っていた
- なんとなく知っていた
- 初めて知った
- 誤解していた
📚 参考文献・出典
- ・ブランド総合研究所の調査結果を伝えるコマースピック「北海道が18年連続1位を獲得、地域ブランド調査2026で魅力度ランキング発表」 https://www.commercepick.com/archives/104503
- ・秋田魁新報「都道府県魅力度 秋田は23位 2026年ランキング、民間調査」 https://www.sakigake.jp/news/article/20261003CO0127/
- ・栃木県「地域ブランド調査(魅力度ランキング)について」(2020年調査の結果・計算式) https://www.pref.tochigi.lg.jp/c05/documents/siryo1.pdf
- ・群馬県「都道府県魅力度ランキング 検証報告書」 https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/102527.pdf










































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