日銀短観の景況感DIはどう決まる?大企業製造業が24になる計算と読み方

日銀短観で「大企業製造業の景況感は24」と報じられると、2割4分の会社が景気は良いと答えたのだと、私は長いあいだ読んでいました。日本銀行の資料を開いて、その読み方が違うことに気づきました。2026年10月1日に公表された9月調査(第210回)で、大企業製造業の業況判断DIは24。内訳は、回答社数の構成比で「良い」が30、「悪い」が6(単位は%)、差し引きが24です。

この記事では、日銀短観の景況感DIがどんな計算で作られているのか、9月調査で何が動いたのか、見出しの数字を読むときにどこを見ればよいのかを、日本銀行の公表資料をもとに整理します。2026年10月時点の内容です。

  • 景況感DIは「良い」と答えた会社の割合から「悪い」の割合を引いた数字
  • 9月調査の大企業製造業は24(前回比2ポイント上昇)、大企業非製造業は35(同2ポイント低下)
  • 調べているのは9,104社。大企業・中堅・中小の線引きは2004年から資本金で決まっている
  • 見出しの「最近」だけでなく、「先行き」と企業規模の欄まで見ると全体像が変わる
目次

日銀短観の景況感DIは「良い」から「悪い」を引いた数字

短観の正式名称は全国企業短期経済観測調査です。日本銀行が企業に直接たずねる統計で、日本銀行の解説資料には、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することが目的だと書かれています。年4回、3月・6月・9月・12月に調査し、結果は4月初め、7月初め、10月初め、12月の中旬に公表されます。データは1974年5月までさかのぼれます。

景況感として報じられる数字は、「業況判断DI」です。企業に「自社の業況は、良い・さほど良くない・悪い、のどれですか」と3択でたずね、次の式で出します。

業況判断DIの計算(大企業製造業・2026年9月調査)

「良い」
30
−
「悪い」
6
=
DI
24

数字は回答社数の構成比(単位は%)。「さほど良くない」(構成比64)は計算に入りません(出典:日本銀行「短観(概要)2026年9月」)

24という数字の中身は、「良い」と「悪い」の差

日本銀行の解説資料には、例として「良い」25社・「さほど良くない」65社・「悪い」10社なら、DIは25%から10%を引いて15%ポイントになると書かれています。大企業製造業の9月調査も同じ計算で、構成比は「良い」が30、「さほど良くない」が64、「悪い」が6でした(単位は%)。

注目したいのは、いちばん多いのが真ん中の「さほど良くない」だという点です。大企業製造業でも、約3分の2の会社は良いとも悪いとも答えていません。24という数字は、会社の3割が強気で、悲観的な会社は6%にとどまることを表しています。2割4分の会社が良いと答えた、という読み方は誤りです。

DIがゼロなら「良い」と「悪い」が同数

DIがゼロというのは、景気が平常という意味ではなく、「良い」と「悪い」が同じ割合だという意味です。「さほど良くない」が何%いても、ゼロの位置は変わりません。判断の基準は各社が自分の収益を中心に全般的に決めるので、「良い」の線引きは会社ごとにばらつきます。

2026年9月調査では大企業製造業が上がり、大企業非製造業が下がった

9月調査の結果を、日本銀行の概要資料から主な欄だけ表にしました。カッコ内は前回(6月調査)の「最近」との差です。

区分(業況判断DI) 6月調査 最近 9月調査 最近 9月調査 先行き
大企業・製造業 22 24(+2) 21(−3)
大企業・非製造業 37 35(−2) 30(−5)
中堅企業・製造業 17 23(+6) 18(−5)
中小企業・製造業 9 14(+5) 12(−2)
中小企業・非製造業 15 15(0) 10(−5)
※出典:日本銀行「短観(概要)2026年9月」。「先行き」のカッコ内は、今回の「最近」との差

製造業は規模を問わず上がった

製造業は、大企業が22から24、中堅企業が17から23、中小企業が9から14と、3つの規模すべてで上がりました。上げ幅が最も大きいのは中堅企業の6ポイントです。見出しになりやすい大企業は、実は上げ幅が最も小さい層でした。

非製造業は大企業が2ポイント下がった

大企業の非製造業は37から35へ2ポイント下がりました。35は製造業の24より高い水準ですが、向きは逆です。「景況感が改善」という見出しだけを読むと、この動きが見えません。

景況感や景気動向の数字をニュースで見たとき、元の資料まで確かめますか?

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9,104社はどう選ばれ、何を答えているのか

9,104社はどう選ばれ、何を答えているのか
Photo by Nguyen Dang Hoang Nhu on Unsplash

9月調査の調査対象は、全国で9,104社(製造業3,776社、非製造業5,328社)で、回答率は99.4%でした。うち大企業は1,631社です。調査表の発送は8月26日、回収の基準日は9月9日でした。

全部の会社ではなく、選んだ会社に聞く標本調査

短観は、資本金2千万円以上の民間企業を目標の母集団として、そこから調査対象を抽出する標本調査です。日本銀行の資料には、統計理論に基づいて標本を抽出すると書かれています。内閣支持率のような世論調査が標本から全体を推し量る仕組みと、考え方は同じです。

大学のゼミが社会調査法だった私は、選択肢の作り方に少しうるさいほうです。業況の3択は、「良い」と「悪い」のあいだに「さほど良くない」を置いてあります。この真ん中があるから、無理に良い悪いを選ばせず、回答者の負担も軽くなります。

聞いているのは業況だけではなく13項目

判断項目は13あり、業況のほかに、設備、雇用人員、資金繰り、販売価格、仕入価格などが並びます。ほとんどの項目で「最近」と、3か月後の「先行き」の2時点を答えてもらいます。季節で変わるものは、季節の影響を除いた実勢で答えるよう依頼されています。景況感だけが独立した調査なのではなく、雇用や物価の感触をまとめて聞く調査の一部です。

大企業の線引きは、2004年に従業員数から資本金に変わった

「大企業」「中堅企業」「中小企業」の区分は、2004年3月調査から資本金を基準にしています。現在は、資本金10億円以上が大企業、1億円以上10億円未満が中堅企業、2千万円以上1億円未満が中小企業です。

2001年の解説では従業員1,000人以上が大企業だった

これは私も知らなかったことです。日本銀行の2001年の解説資料では、製造業の大企業は常用雇用者1,000人以上、中堅企業は300〜999人、中小企業は50〜299人でした。同じ「大企業製造業」という言葉でも、2001年と2026年では、集めている会社の区切り方が違います。長い時系列で比べるときは、この変更を知っておく必要があります。

調査月も1997年に変わっている

調査月も、1997年3月調査から、それまでの2月・5月・8月・11月が3月・6月・9月・12月に変わりました。統計は一度決めたら動かないものではなく、実態に合わせて直されています。

1ポイントは約9社の回答で動く

1ポイントは約9社の回答で動く
Photo by Simon Kadula on Unsplash

DIは整数で報じられますが、1ポイントの重さを会社の数に直すと印象が変わります。

大企業製造業は885社なので、1ポイントは約9社

9月調査の大企業・製造業の調査対象は885社です。885社×1%で約8.85社なので、DIが1ポイント動くのは、約9社の回答が「さほど良くない」から「良い」に動いた場合と同じ規模です(回答社数が885社そのものではないため、あくまで目安)。前回から2ポイント上がった24という数字は、約18社分の動きにあたります。

数字にしてみて、少し拍子抜けしました。9社です。九社が答えを変えると、1ポイント動きます。だから、1ポイントの上下に理由を探しすぎないほうがよいと、私は思います。

民間予想との差は1ポイント

公表前の9月9日に第一生命経済研究所の経済調査部が出した予想は、大企業製造業が25、大企業非製造業が34でした。実際は24と35です。

実際の24から予想の25を引くと、製造業は−1ポイント。非製造業は35から34を引いて+1ポイントです。方向は予想どおりで、ずれは1ポイントにとどまりました。

予想と1ポイントしか違わないなら、結果を聞いて「想定外の悪化」「予想を上回る改善」と大きく書く必要はありません。見出しの温度と、数字の差の小ささには開きがあります。

見出しの「最近」の裏にある「先行き」の数字

報道で目立つのは「最近」の数字ですが、同じ表に「先行き」も載っています。先行きは、企業が3か月後の業況をどう見ているかです。

大企業製造業の先行きは24から21へ

9月調査の大企業製造業は、最近が24、先行きが21で、3ポイントの低下を見込んでいます。大企業非製造業は最近の35から先行きの30へ、5ポイントの低下です。中小企業・非製造業は15から10へ下がります。全規模・全産業でも、最近21に対して先行き15と、6ポイント下がる見通しです。

先行きが最近より低いのは今回だけではない

6月調査の大企業製造業は、最近22に対して先行きは17でした。そのときも先行きは5ポイント低い数字になっています。先行きが最近より低く出ることが続いているかどうかは、この記事で確かめた資料だけでは判断できません。過去の複数回を並べて見る必要があります。

確かなのは、9月調査の時点で、企業は今より少し慎重に3か月後を見ているという事実だけです。この慎重さを、悪化の予告と決めつける材料は、私の手元にはありません。

短観の見出しを読むときに見る4つの欄

次に短観のニュースが出たら、元の資料で次の4つを確かめると、見出しの印象と実態の差が分かります。

見る順番と、それぞれの意味

見る欄 分かること 9月調査の例
変化幅 前回からの上下 大企業製造業は+2、非製造業は−2
先行き 3か月後の見通し 大企業製造業は21
企業規模 大企業だけの話か 中堅・中小の製造業は上げ幅が大きい
選択肢別の構成比 「さほど良くない」の厚み 大企業製造業は構成比64

自分の仕事に近い欄から読む

勤め先が中小の製造業なら、見るのは大企業の数字ではなく中小企業・製造業の欄です。9月調査は14(+5)でした。小売や飲食、運輸のように業種別に知りたい場合は、日本銀行の概要資料の業種別の欄で確かめられます。次の公表は12月の中旬です。

金融政策との関係は、政策金利の仕組みや日本の金利が長く上がらなかった経緯とあわせて読むと、短観が何のための統計かが見えやすくなります。

景況感DIを読むときの注意点

企業の主観を集めた数字である

業況判断は、売上や利益の実額ではなく、各社が全般的に判断した結果です。同じ業績でも、前の期が好調だった会社は「さほど良くない」と答え、苦しかった会社は「良い」と答えるかもしれません。短観には売上高や経常利益の計画値も載っていますが、それは別の欄です。景況感の高さが、そのまま儲かっている会社の多さを意味するわけではありません。

大企業の数字が日本全体ではない

9月調査で大企業は1,631社で、調査対象9,104社の約18%です(1,631÷9,104で計算)。残りの約8割は中堅・中小企業です。大企業だけが好調でも、全体の景況感とは別の話になります。

標本調査なので数字には幅がある

標本調査なので、同じ調査でも選ぶ会社が違えば数字は少し動きます。調査対象企業数と統計の精度は、各回の公表資料に載っていると日本銀行の資料は説明しています。1〜2ポイントの動きで結論を急がないほうが安全です。

日銀短観についてよくある誤解

誤解1:DIが24なら、2割4分の会社が景気は良いと答えた

誤りです。DIは「良い」の割合から「悪い」の割合を引いた数字です。9月調査の大企業製造業は、構成比で「良い」が30、「悪い」が6で、差し引き24になります。

誤解2:DIが上がった記事は、日本全体の景気が良くなった証拠になる

短観の業況判断は企業の景況感です。9月調査では、大企業製造業が上がる一方、大企業非製造業は下がりました。製造業の上昇だけで、全体は語れません。

誤解3:先行きのDIが下がれば、3か月後に必ず悪くなる

先行きは、企業が3か月後をどう見ているかという回答です。実際の結果ではありません。次の調査で、先行きの見通しが当たったかどうかを「最近」の欄で確かめる、という使い方が正しい読み方です。

まとめ:日銀短観の景況感DIは、4つの欄を見て読む

景況感DIは、「良い」と答えた会社の割合から「悪い」の割合を引いた数字です。2026年9月調査の大企業製造業は24(30−6)で、半分以上の会社は「さほど良くない」と答えていました。2割4分の会社が景気が良いと答えた、という読み方は誤りです。

9月調査では、製造業が規模を問わず上がり、大企業の非製造業は2ポイント下がりました。先行きは、大企業製造業が21、大企業非製造業が30と、どちらも「最近」より低い見通しです。民間予想との差は1ポイントで、結果を大きな驚きとして扱う必要はありません。

次に短観のニュースを見たときは、「変化幅」「先行き」「企業規模」「選択肢別の構成比」の4つの欄を確かめてください。見出しの数字だけでは分からなかった、自分の仕事に近い業種や規模の動きが、その表のどこかに載っています。

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📖 この記事について 本記事は、お金の”仕組み”を知る面白さをお届けし、お金や経済への興味を広げていただくための読み物です。特定の金融商品をすすめるものではありません。実際の投資・契約はご自身の判断で、必要に応じて専門家にご相談ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。