渋柿はなぜ甘くなる?焼酎・干し柿・炭酸ガスで渋が抜ける仕組み

渋柿は、焼酎に漬けても、吊るして干しても、炭酸ガスに入れても甘くなります。方法がこれだけ違うのに、なぜどれも同じ結果になるのでしょうか。白月ハルカです。私はずっと、渋抜きとは渋みの成分を取り除くことだと思っていました。

県の農業試験場や研究機関の資料を2026年10月時点で読むと、その理解は半分違っていました。渋の成分は消えるのではなく、口の中で溶けない形に変わるだけです。この記事では、渋みの正体、甘柿と渋柿の分かれ方、焼酎・干し柿・炭酸ガスそれぞれの渋抜きの違い、渋柿を柿のまま食べない使い方までを整理します。

  • 渋みの正体は、水に溶けるタンニンが口の中で舌や粘膜のタンパク質と結合すること
  • 渋抜きはタンニンを消す作業ではなく、唾液に溶けない状態にする作業
  • 焼酎は4日から5日、干し柿は3週間ほど、炭酸ガスは約4日が資料に出ている目安
  • 渋柿のピューレに脱脂粉乳やきな粉を混ぜると、渋みを感じなくなる
目次

渋柿の渋みは何でできているのか

舌のタンパク質とくっつくと渋く感じる

岐阜県農業技術センターの資料によると、柿の渋みはカテキン類が分子量15,000程度まで縮合した高分子化合物、つまり縮合タンニンです。口に入れると舌や口の粘膜のタンパク質と結合して、強い不快感をもたらすと書かれています。

渋い、という感覚は味というより、口の中のタンパク質にタンニンが貼りつくことで起きているわけです。渋柿をかじったときに口の中がきしむような感じになるのは、このためです。

渋を抜くとは、溶けない状態にすること

同じ資料は、渋柿を食べるには、縮合タンニンの重合度を増したり(CTSD脱渋処理、干し柿)、ペクチンなどの多糖類と結合させたり(熟柿)して、唾液に溶けないよう不溶化させる必要があると説明しています。島根県の資料も、甘柿は成熟するとタンニンが自然に不溶化して渋みがなくなる、と書いています。

ここが私の思い違いでした。渋抜きでタンニンが減るのではなく、あるはずの成分が、唾液に溶けないために舌のタンパク質と出会えなくなる。そう読むのが資料に沿った理解です。

渋みを感じる仕組みと、渋抜きで変わる点

タンニンが唾液に溶ける
→
舌のタンパク質と結合して渋い
/
渋抜き後は唾液に溶けず、渋くない

甘柿と渋柿は、渋が抜ける場所が違う

甘柿と渋柿は、渋が抜ける場所が違う
Photo by Sugar Bee on Unsplash

木の上で抜けるか、抜けないか

甘柿と渋柿の差は、甘さではなく、木の上で自然に渋が抜けるかどうかです。ウェザーニュースの解説記事で専門家は、柿は成熟時の渋みの抜け方と、種ができることによる影響で4つのタイプに分かれると説明しています。

完全甘柿は、種があってもなくても成熟すると木の上で自然に渋みが抜けます。不完全甘柿は、種が多くできると渋みが抜けますが、種が少ないと渋みが残ることもあります。渋柿のうち完全渋柿は、種ができても渋みが残ります。不完全渋柿は、種ができるとその周囲の渋みは抜けますが、果実全体には渋みが残ります。

品種名で見ると、どれがどのタイプか

和歌山県伊都振興局の品種紹介では、富有と松本早生富有が完全甘柿、西村早生が不完全甘柿、平核無・刀根早生・中谷早生が不完全渋柿、串柿に使う四ツ溝が完全渋柿として並んでいます。同じ資料では、不完全甘柿の一品種について「種子が4粒以上入らないと渋みが残る」と書かれています。

平核無や刀根早生は、種ができにくいので、種のまわりの渋が抜けるという性質が実際には働きません。そのため、収穫したあとで渋を抜く作業が必要になります。この理由づけは資料の分類から私が組み立てたもので、資料に直接書かれている文ではありません。

切ったときのゴマは目安にしかならない

断面に見える黒い点々は「ゴマ」と呼ばれ、タンニンが水に溶けにくくなって黒く見えるものだと、同じ解説記事は伝えています。ただし、ゴマがなくても甘い品種があり、ゴマがあっても果実全体に渋みが残る品種もあります。専門家は、ゴマの有無だけで甘柿か渋柿かを判断せず、品種名や販売時の表示を確認してほしいと話しています。

柿は普段どうしていますか?

  1. 生の甘柿を食べる
  2. 干し柿を食べる
  3. 渋抜きを自分でしたことがある
  4. 柿はあまり食べない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・10票)

柿はあまり食べない:70%
渋抜きを自分でしたことがある:30%
生の甘柿を食べる:0%
干し柿を食べる:0%

焼酎に漬けるとなぜ渋が抜けるのか

家庭でできる方法は、ヘタを焼酎につける

和歌山県伊都振興局の柿の加工のページには、平核無でできる渋抜きが載っています。もぎたての新鮮な平核無を用意し、ヘタを35度の焼酎かウイスキーに漬けてビニール袋に入れ、暖かいところで保存します。目安は4日から5日で、袋が薄いときは二重にすると書かれています。

島根県の資料は、家庭で少量を渋抜きするときは湯抜きや焼酎などのアルコールを使う方法があると紹介しています。

アルコールが渋を抜くしくみは、完全には説明されていない

岐阜県の資料は、CTSD炭酸ガス脱渋、アルコール脱渋、干し柿加工法の3つを、アセトアルデヒドに起因する脱渋方法として分類しています。アセトアルデヒドは、お酒を飲んだときに体の中でできる物質として知られていて、お酒に酔う仕組みと二日酔いの原因で別の角度から取り上げています。

ただ、柿の中でアセトアルデヒドがどうタンニンに働くのかという化学反応の細部まで書いた資料は、今回は見つかりませんでした。確かめられたのは、アルコールを使うとタンニンが溶けない形になり、渋が抜けるというところまでです。

量と日持ちの条件も資料にある

島根県の資料では、業務用のアルコール脱渋として、柿15kgに38%のアルコールを約150cc噴霧して密封する方法を挙げています。食味はよい一方、軟化が早まって日持ちは劣るとされています。粉末アルコールを5kg当たり90g程度使う方法もあり、こちらは日持ちがよいといわれると書かれています。

38%のアルコール150ccを15kgに使うので、1kg当たりでは150÷15で10ccです(私の計算です)。

干し柿はなぜ甘くなるのか

干し柿はなぜ甘くなるのか
Photo by Madeline Liu on Unsplash

皮をむいて吊るし、3週間ほどで渋が抜ける

和歌山県の柿の加工のページでは、干し柿の作り方として、ヘタと軸を残して収穫し、皮をむいて軸をひもに通し、雨のかからない風通しのよい所に干します。3週間くらいで渋が抜けて食べられるようになり、表面から乾くため、途中で1回から2回実をもんで中の水分を均一にする、と書かれています。

干している間に何が起きているのか

岐阜県の資料は、皮をむいた果実の表面を素早く乾かし、天日で少しずつ水分を飛ばす干し柿加工法は、渋抜きの仕組みの解明と商業的な技術がすでに確立されていると書いています。縮合タンニンの重合度が増して唾液に溶けなくなる例としても、干し柿が挙げられています。

干し柿は、渋を抜く工程そのものが、乾燥して水分を飛ばす作業と同じ時間の中で進みます。焼酎や炭酸ガスのように、別の薬剤やガスを使わない点が、他の方法との違いです。

炭酸ガスやドライアイスで大量に渋を抜く

CTSD法は、密閉した部屋に炭酸ガスを入れる

島根県の資料によると、CTSD法は、柿をコンテナなどに入れて大量に密閉できる室に置き、炭酸ガスを充填して渋を抜く方法です。大量に脱渋する方法として、平無核(平核無)では以前から広く使われてきました。西条では、炭酸ガスをほぼ100%封入し、室温を18〜20℃にして48時間密封したあとに開封し、さらに48時間後に完全に渋が抜けることが、島根県農業試験場の研究で確認されています。

出荷用の箱詰めでは、ドライアイスを使う

同じ資料によると、島根県の出荷果実は、選果後の箱詰めのときに、ポリエチレン袋の中に果実とドライアイスを入れて渋を抜いています。厚さ0.1mm程度の袋に、果実10kgに対してドライアイス100g(重量比1%)を封入する方法です。ドライアイスは昇華しやすいため、安全のために1.2〜1.3%入れるほうがよいが、多すぎると開封時に果肉が黒変するなどの障害が出る、と注意しています。完全に渋が抜けるまでに4日程度かかります。

10kgの1.2〜1.3%は、10,000g×0.012〜0.013で120〜130gです(私の計算です)。

ドライアイスが果実に直接触れると凍傷による障害が出るため、新聞紙で包み、フルーツキャップをかぶせてから入れるとよい、とも書かれています。

呼吸で出る炭酸ガスを使う包装脱渋

島根県の資料は、気密性の高いフィルム袋に果実を密封し、果実の呼吸で出る炭酸ガスを使う包装脱渋も紹介しています。低温の条件と組み合わせれば貯蔵脱渋もでき、今後の実用化が期待される方法とされています。

渋抜きをしない渋柿の使い方もある

脱脂粉乳やきな粉を混ぜると、渋みを感じなくなる

ここが、今回読んでいて一番意外だったところです。岐阜県の研究では、脱渋していない渋柿をフードプロセッサーでピューレにして、タンパク質を多く含む素材と混ぜるだけで、渋みが減ることが示されています。混ぜた材料を80℃で1時間加熱しても、渋みは戻りませんでした。

渋みは舌のタンパク質と結合して起きるので、先に別のタンパク質とくっつけておけば、舌には結合する相手が残らない。資料の説明を私なりに言い換えると、そうなります。

必要な量は柿の品種と素材で変わる

ピューレ100gを渋くなくするのに必要な素材の量(g)は、品種ごとに次のようにまとめられています。

素材 市田柿(完全渋柿) 堂上蜂屋(完全渋柿)
きな粉 6.2g 4.9g
薄力粉 14.8g 12.6g
ココナッツパウダー 14.6g 14.1g
ゼラチン 3.1g 2.9g
脱脂粉乳 2.8g 2.5g
パルメザン 2.2g 7.7g
ココア 0.5g 4.0g
※出典:岐阜県農業技術センター。未脱渋の果肉中の可溶性タンニン含量は、市田柿が8.3mg/g、堂上蜂屋が11.6mg/g。

面白いのは、タンニンが多い堂上蜂屋が、きな粉や脱脂粉乳では市田柿より少ない量で足りる一方、ココアとパルメザンでは大きく増えることです。素材ごとに、結合できる力が違うことがうかがえます。

ピューレ100gに含まれる可溶性タンニンは、市田柿で8.3mg/g×100g=830mg、堂上蜂屋で11.6mg/g×100g=1,160mgです(私の計算です)。

この方法は研究段階の結果で、家庭向けのレシピとして書かれたものではありません。ピューレに混ぜる、というイメージの参考にとどめてください。

渋抜きの方法はどう選ぶか

時間・日持ち・手間で比べる

資料に出ている条件を並べました。数字は、すべて県の資料に書かれていた目安です。

方法 目安の時間 資料に書かれた特徴
焼酎(家庭) 4日から5日 35度の焼酎かウイスキー。袋が薄いときは二重にする
干し柿 3週間くらい 皮をむいて風通しのよい所に干す。途中で1回から2回もむ
ドライアイス 4日程度 果実10kgに100g。直接触れると凍傷の障害
CTSD(炭酸ガス) 48時間密封+48時間 大量処理向き。西条で18〜20℃
温湯(湯抜き) 15時間程度 38〜40℃の湯に浸す。脱渋後の品質低下が著しく販売には向かない

CTSD法の48時間+48時間は合計96時間で、4日になります(私の計算です)。ドライアイス法の4日程度と同じ長さです。

家庭で試すなら、収穫したての新鮮な柿を使う

和歌山県の資料は、焼酎による渋抜きの材料にもぎたての新鮮な柿を挙げています。買ってきた柿が渋柿なのか甘柿なのかは、品種名や販売時の表示で確認するのが確実です。

渋抜きで気をつけたいこと

軟化と日持ちの問題がある

島根県の資料は、アルコール脱渋は食味がよい一方で軟化が早まり、日持ちが劣ると書いています。和歌山県の品種紹介にも、平核無はアルコール脱渋の場合に軟化や汚損果が発生しやすいという記述があります。固形アルコールを使う樹上脱渋は、平無核では実用化されていますが、西条では軟化が著しく早くなるため実用化されていません。

温度が低いと日数が延びる

アルコール脱渋は、ドライアイス脱渋より日数がかかり、温度が低いとさらに延びます。島根県の資料は、11月以降は開封するときに特に注意が必要だと書いています。一方、和歌山県の焼酎の方法も「暖かいところで保存」とされています。

脱渋できない柿には用途がない

岐阜県の資料は、脱渋処理ができない果実は現状では用途がなく、そのまま廃棄するしかないと指摘しています。先に紹介したタンパク質素材と混ぜる方法は、そうした渋柿を加工用の材料として使う道を探るものとして位置づけられています。

柿の渋みを食べる前に確認したいこと

店で買うときは、品種名と表示を見る

ウェザーニュースの解説にあるとおり、見た目や断面だけで甘柿か渋柿かを決めるのは難しい、というのが専門家の見方です。売り場で買うなら、品種名と表示を確認するほうが確実です。

渋柿を買った場合は、渋抜きの方法を選ぶ

平核無のように、焼酎での渋抜きが載っている品種なら、和歌山県の手順が参考になります。時間が取れるなら干し柿にする方法もあります。どの方法も、渋が抜けたかどうかは食べて確かめるしかありません。味見は少量から始めてください。

柿の渋抜きでよくある誤解

渋抜きでタンニンがなくなるのですか

なくなるわけではありません。資料では、渋みの成分であるタンニンを、重合度を増したり多糖類と結合させたりして、唾液に溶けない状態にするとされています。成分が消えるのではなく、舌のタンパク質と結合できなくなるのが渋抜きです。

黒いゴマがあれば甘柿ですか

ゴマは、タンニンが水に溶けにくくなった跡で、渋みの抜け方の手がかりにはなります。ただ、ゴマがなくても甘い品種があり、ゴマがあっても果実全体に渋みが残る品種もあります。ゴマの有無だけでは判断できません。

渋柿はそのまま食べられないのですか

岐阜県の研究では、脱渋していない渋柿のピューレに、脱脂粉乳やきな粉などタンパク質を多く含む素材を混ぜると渋みを感じなくなりました。ただし、これは研究の結果で、渋柿をそのまま食べて問題がないという意味ではありません。生で渋柿をかじれば、舌のタンパク質と結合する渋みを強く感じます。

まとめ:柿の渋抜きの仕組みと選び方

渋柿が甘くなるのは、渋みが消えたからではなく、タンニンが唾液に溶けない形に変わったからです。焼酎、干し柿、炭酸ガスは、方法は違っても、この変化を起こしている点は同じです。

家庭なら、平核無のヘタを焼酎に漬けて4日から5日、時間があれば干し柿で3週間ほどが資料に出ている目安です。ドライアイスや炭酸ガスは、出荷用に大量の柿を扱う方法で、家庭で試すものではありません。アルコール脱渋は食味がよい反面、軟化して日持ちが劣る点は覚えておいてください。

私は、渋抜きは成分を取り除くことだと思っていました。実際は、成分はそのままで、舌と出会えなくしていました。脱脂粉乳やきな粉でも渋みが消えるという研究を知ってからは、柿の渋みの見え方が変わりました。売り場で柿を選ぶときは、品種名と表示を見てください。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は公開資料にもとづく一般的な解説です。渋抜きの日数や方法は、柿の品種や気温で変わります。食べる前に渋みが残っていないか少量で確かめてください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。