ステンドグラスの色はどう作られる?色ガラスの金属とケイム・ティファニー方式の違い

教会の窓に光が当たると、赤や青がまぶしいほど鮮やかに見えます。あの色は、ガラスの表面に絵の具を塗ったものなのでしょうか。それとも、ガラスそのものに色がついているのでしょうか。

私は長いあいだ、ステンドグラスは色を塗ったガラスだと思っていました。調べてみると、色の大部分はガラスを作る段階で入る金属によるもので、塗るのは線や陰影など一部だけでした。組み立て方にも、鉛の枠を使う方法と銅のテープを使う方法があります。この記事では、2026年11月時点で確かめられた資料をもとに、色の出し方と組み立て方を順に説明します。

  • ステンドグラスの色の多くは、ガラスに混ぜた金属が特定の色の光を吸収して生まれる
  • 赤いガラスは濃くなりすぎるため、無色のガラスに薄く重ねる方法が使われてきた
  • 絵は顔料を焼き付けて描き、黄色は銀を使った銀染めで加える方法がある
  • 組み立ては、H字型の鉛線(ケイム)を使う方法と、銅テープを使うティファニー方式に分かれる
目次

ステンドグラスの色は、塗ったものではなくガラスの中にあります

色ガラスに光が通るステンドグラスの窓が並ぶ礼拝堂の内部
Photo by Pascal Bernardon on Unsplash

金属が特定の色の光を吸収すると、ガラスに色がつく

大阪市立科学館の広報誌は、ガラスに金属元素が混ざると、その元素が特定の色の光を吸収することによって、ガラスはさまざまに色づくと説明しています。何も混ぜないガラスは無色透明で、そこに金属が入ると、吸収されなかった色の光だけが通り抜けて目に届きます。

窓の色が光に透けて強く見えるのは、色がガラスの内側にあって、光がガラスの中を通ってくるためです。ステンドグラスでは、後ろから来た光がガラスを通り抜けたあとの色を見ています。

ガラスの作り方そのものは、ガラスの製造の仕組みを解説した記事で詳しく書いています。色ガラスは、その製造の途中で金属の材料を加えたものです。窓ガラスの板がどう作られるかはフロート法の記事が参考になります。

元素ごとに出る色が違う

大阪市立科学館の広報誌では、チタンなら青紫、クロムなら緑、ニッケルは黄色や紫になる、と例が挙げられています。英国のカンタベリー大聖堂の学習ページには、中世の窓ガラスについて、銅で赤、コバルトで青、マンガンでピンクか紫、鉄の酸化物で緑や黄色が得られたと書かれています。2つの資料を並べると次のとおりです。

混ぜる金属 ガラスの色 出典
チタン 青紫 大阪市立科学館
クロム 緑 大阪市立科学館
ニッケル 黄色や紫 大阪市立科学館
銅 赤 カンタベリー大聖堂
コバルト 青 カンタベリー大聖堂
マンガン ピンクか紫 カンタベリー大聖堂
鉄の酸化物 緑や黄色 カンタベリー大聖堂
※同じ元素でも、ガラスの組成や作り方で色は変わります。表は資料に書かれた例を並べたものです。

カンタベリー大聖堂のページは、金属の酸化物を砂などのガラスの材料に加えると色が変わると書いています。ガラスの材料を約1000度の炉で溶かす工程で混ぜるため、あとから塗り足す色とは性質が違います。

赤いガラスだけは、濃くなりすぎる問題がありました

銅で作った赤は、窓には暗すぎた

カンタベリー大聖堂のページによると、この方法で作った赤いルビーガラスは窓に使うには暗すぎて、光が十分に通らなかったそうです。色が濃いほど光を吸収する量が増えるので、厚みのあるガラスでは赤が黒に近づいてしまいます。

ここは私が一番意外に思ったところです。赤は教会の窓でもよく目にする色なので、作りやすい色だと思い込んでいました。実際には、赤だけが工夫を必要とした色でした。

無色のガラスに赤を薄く重ねる「被せ」

解決策として、溶けた白いガラスを、溶けた赤いガラスに浸して表面に赤の層を作る方法が見つかりました。同じページは、これを「flashed(被せ)」の手法として説明しています。ガラスの大部分は無色で、赤い層だけが薄いので、光が通りやすくなります。

現在の窓がどの方法で作られているかは、展示や解説で確認するのが確実です。

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絵と黄色は、焼き付けでガラスに加えます

絵付けは、少し描いては焼き付けることを繰り返す

大阪市立科学館の広報誌は、ステンドグラスの絵付けを、顔料をガラスに塗って焼き付ける方法だと説明しています。紙と違ってガラスは画材が染み込まないので、少し描いては焼き付け、また描いては焼き付けることを繰り返すそうです。

顔料と展色剤の関係は、油絵具が乾く仕組みの記事でも説明しています。ステンドグラスの場合は、紙やキャンバスの代わりにガラスへ顔料を焼き付けます。

Corning Museum of Glass(米国のガラス専門の博物館)のライブラリーの回答は、初期のステンドグラスが、色ガラスに鉄や銅の酸化物を含むガラス質の絵の具で描いたものだったと答えています。顔や衣のような細かい部分は、この絵付けで描き込まれます。

銀染めは、色がガラスの中に入り込む

Corning Museum of Glassの回答によると、銀染めは14世紀ごろから使われ、焼くときに銀のイオンがガラスの中へ移動する点が絵の具と違います。絵の具やエナメルは表面に焼き付くだけですが、銀は中に入るので、回答は銀染めを、ステンドグラスで唯一の本当の「染め」と紹介しています。

出る色はガラスの組成で変わります。無色のガラスなら黄色に、青いガラスなら緑になります。白いガラスの一部だけを黄色くできるので、1枚のガラスに2色を持たせたいときに役立ちます。

銀染めの方法自体は、14世紀より前から知られていた

別の回答では、ステンドグラスへの導入は1300年頃だが、9世紀の写本「Mappae Clavicula」に銀染めの記述があると紹介しています。カンタベリー大聖堂のページは、銀染めの発見を14世紀、エナメル絵の具の登場を十六世紀としています。エナメルの登場で、1枚のガラスの上で使える色が大きく増えました。

ケイム技法とティファニー技法は、ガラスのつなぎ方が違います

ティファニー方式で知られるステンドグラスのランプ
Photo by CE K on Unsplash

ケイム技法は、H字型の鉛線でガラスをはさむ

大阪市立科学館が紹介する伝統的な工法では、色ガラスのピースを1つずつ切り出し、断面がH字型の鉛線(ケイム)でつなぎます。鉛線同士はハンダでくっつけ、ガラスと鉛線のすき間はパテで固定します。H字の溝にガラスが入るので、ピースの縁が鉛線に守られる形になります。

ティファニー方式は、銅テープとハンダでつなぐ

同じ広報誌によると、ティファニー方式はケイムを使わず、銅テープとハンダでつなぐ方法で、繊細な表現ができます。ガラスの縁に銅テープを巻き、テープの上にハンダを流してピースをつなぎます。

同じ展示には、バラの部分だけがティファニー方式で、全体はケイムでつなぐ、という使い分けも見られると書かれていました。1枚の作品の中で、技法を混ぜることができます。

比べる点 ケイム技法 ティファニー方式
つなぎの材料 H字型の鉛線 銅テープ
接合 鉛線同士をハンダ、すき間はパテ テープにハンダ
特徴 伝統的な工法 繊細な表現ができる
※大阪市立科学館の広報誌の記述にもとづく整理です。

実際の窓や作品を見るときの見分け方

線の太さと色の層に目を向ける

ステンドグラスを見る機会があれば、ガラスのピースの境目にある線を見てください。太くて黒い線は鉛線の可能性があり、細く光る線は銅テープとハンダの可能性があります。これは広報誌の説明から私が推測したことで、実物では確認が必要です。

次に、絵の部分を見ます。顔や文字のような細い黒い線は、顔料を焼き付けた絵付けです。同じ黄色でも、ガラスそのものが黄色い場合と、銀染めで黄色くした場合があります。後者は、無色のガラスの一部だけが黄色になっています。

ガラスの工芸を始めるなら、まず方式を選ぶ

自分で作る場合は、仕上がりの線の太さと、作りたい形で方式を選びます。細かい表現を重ねたい作品には、繊細な表現ができるティファニー方式が向いています。伝統的な窓の作り方を学びたい場合は、ケイム技法から始める選択もあります。

ステンドグラスの色と技法に残る、限界と注意点

同じ金属でも、いつも同じ色になるとは限らない

銀染めは、無色のガラスで黄色、青いガラスで緑になりました。ガラスの組成によって色が変わるということです。表の色も、資料に書かれた代表的な例であって、どの条件でも同じ色が出るという意味ではありません。

描ける量に限りがある

絵付けは、少し描いては焼き付ける作業を繰り返すので、1枚の絵に時間がかかります。紙のように重ね塗りを一度に進めることができません。大きな窓を作るには、ガラスを切り出し、絵を付け、焼き、組み立てる工程を、ピースの数だけ繰り返す必要があります。

展示では、光の向きで見え方が変わる

色がガラスの中にあるので、見え方は後ろから当たる光の強さで変わります。明るい日中は色が鮮やかで、暗くなると色が沈みます。展示を見に行く場合は、光がどちらから入るかも確かめると、色の印象の違いに納得できます。

ステンドグラスのよくある誤解

ステンドグラスは、色を塗ったガラスだと思っていませんか

色の多くは、ガラスの材料に金属を混ぜて作られます。塗るのは顔や衣の線、陰影などの絵付けです。

鉛の線が色をつけているのでしょうか

鉛線は、色ガラスのピースをつなぐ部材です。色を出す成分ではありません。大阪市立科学館の広報誌でも、鉛線はピースをつなぐものとして説明されています。

赤いガラスはいちばん作りやすい色でしょうか

赤は、銅で作ると窓には暗すぎるという問題がありました。そこで、無色のガラスに赤い層を薄く重ねる被せの方法が使われました。

まとめ:ステンドグラスの色と組み立て方を判断するポイント

ステンドグラスの色は、ガラスに混ぜた金属が、特定の色の光を吸収して生まれます。赤は濃くなりすぎるので、被せの方法が使われてきました。絵は顔料を焼き付けて描き、黄色は銀染めで加えます。

組み立ては、H字型の鉛線を使うケイム技法と、銅テープを使うティファニー方式に分かれます。作品を見るときは、ピースの境目の線、細い黒線の絵付け、無色のガラスの一部だけが黄色くなっている銀染めの3点を見ると、どの工程で作られたかを推測できます。展示の解説と見比べて、答え合わせをしてみてください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。