11月5日の昼前から、ドコモの5G SAを契約している人は、音声通話もデータ通信もSMSも使いにくくなりました。復旧は翌6日の午前1時20分ごろです。ドコモが公表した原因は、5G SA契約者を収容する交換機の輻輳でした。この記事では、輻輳とは何が起きている状態なのか、なぜ約14時間もかかったと考えられるのかを、ITmedia、総務省の資料、ドコモの公式ページで確かめて整理します。2026年11月時点の内容です。
- 今回の原因は、5G SA契約者を収容する交換機の輻輳です。不正アクセスの形跡は確認されていません
- 輻輳は、通信が処理能力を超えて集中し、つながりにくくなる状態です
- 大規模障害の輻輳は、利用者の急増ではなく、設備の入れ替えや復旧作業が引き金になる例が続いています
- 輻輳を起こした理由と、復旧に約14時間かかった理由は、私が確かめた範囲では公表されていません
今回の障害で公表されたのは「交換機の輻輳」まで
最初に、確かめられた事実と、まだ分からないことを分けておきます。
公表された内容
ITmedia NEWSの記事によると、障害は11月5日の午前11時18分ごろに始まり、11月6日の午前1時20分ごろに復旧しました。約14時間です。影響を受けたのは5G SAの契約者で、音声通話、データ通信、SMSが使いにくくなりました。5G SA以外の利用者と、緊急通報には影響がありませんでした。原因は5G SA契約者を収容する交換機が混雑(輻輳)したことで、障害の前後を含めて不正アクセスの形跡やサイバー攻撃を示す事象は確認されていない、とされています。
5G SAは、5Gの仕組みの中で、5G専用の設備だけで通信する方式です。ITmedia NEWSは、4Gが混雑していても快適な通信をうたうサービスだと説明しています。障害中、ドコモは暫定策として、端末のネットワーク設定を4Gに切り替えるよう案内しました。復旧後は、4Gに変えた人に設定を元に戻すよう呼びかけています。
開始の午前11時18分から翌日の午前1時20分までは、11時18分から24時までの12時間42分に、0時から1時20分までの1時間20分を足して、14時間2分です。
まだ公表されていないこと
すまほん!!の記事は、輻輳が起きた理由、復旧に14時間かかった理由、再発防止策の説明が必要だと書いています。私が確かめた時点では、交換機のどこで何が混雑したのかを書いた公式の説明は見つけられませんでした。そのため、この記事は今回の原因を推測しません。過去の障害で確かめられている輻輳の起き方を並べて、今回の「交換機の輻輳」という一行を読むための材料にします。
輻輳とは、通信が処理能力を超えて集まった状態です
私は輻輳を、利用者が一度に増えて回線が混む状態だと思っていました。半分は合っていて、半分は違いました。違った部分は、後の章で扱います。
混雑は、基地局から交換機までのどこででも起きます
ITmediaの解説によると、輻輳は通信が一時的に集中して、ネットワークの処理能力を超え、つながりにくくなる状態です。携帯電話の通信は、基地局、基地局制御装置、加入者交換機、関門交換機といった装置を順にたどります。総務省の検討会に出されたKDDIの資料には、この4段の図があり、震災時の規制は基地局制御装置と関門交換機に掛けた、と書かれています。どの装置にも処理できる量があり、超えたところで詰まります。
交換機は、電話をかけた人と受ける人をつなぐ装置です。固定電話での役割は固定電話の仕組みの記事で書いています。携帯電話の交換機も、契約者の通話やデータの接続を取り次ぐ装置です。5G SAの契約者をまとめて受け持つ交換機が詰まれば、その契約者の通信が止まります。5G SAの契約者だけに影響が出た今回の範囲と合います。
詰まったときは、わざと通信を制限して負荷を下げます
輻輳が起きたときは、ネットワークへの接続や通信を制限して負荷を下げます。東日本大震災のときのKDDIの資料では、安否確認の通話が増えて、東北と首都圏で発信は最大95%、着信は最大50%の規制を掛けたと書かれています。通話の増え方は、震災直後の安否確認で東北が約8倍、首都圏が約10倍でした。
発信の規制が95%というのは、かけようとした電話の大半を、装置の手前で止めるという意味です。つながらない人が大量に出ますが、装置が完全に止まるよりはよい、という判断になります。今回のドコモの障害で規制が掛けられたかどうかは、確かめた資料に書かれていません。
スマホがつながらなくなったとき、最初にすることは?
- 再起動や機内モードを試す
- Wi-Fiに切り替える
- しばらく待つ
- 何度もかけ直す
利用者が増えなくても、輻輳は起きます
私が思い違いをしていたのは、ここです。大規模な障害で資料に出てくる輻輳は、利用者の急増よりも、設備側の作業が引き金になった例が目立ちました。
2021年のドコモは、切り戻しで約20万台が一斉に登録しました
ITmediaの記事で時系列を追うと、2021年10月14日の午前0時に、IoTサービス用の加入者・位置情報サーバーを旧設備から新設備へ切り替える工事が始まりました。7時26分に、海外で動くIoT端末と通信できない不具合が見つかります。16時36分に新設備から旧設備へ戻す切り戻しをしました。このとき、旧設備からIoT端末に位置登録を促したところ、約20万台の端末から位置情報の信号が出ました。17時ごろ、音声通話とパケット通信に障害が出ています。
ネットワークの外から人が押し寄せたのではなく、自社の設備が自社の端末に一斉登録をさせて詰まった形です。
仮に20万台が50分に1回ずつ位置登録する設計なら、平均は200,000÷50=1分あたり4,000台です。50分ぶんを一度に出させると、平均の50倍が一度に来る計算になります。2021年のIoT端末の登録周期は、確かめた資料に書かれていません。50分はKDDIのVoLTE端末の周期で、規模感をつかむための仮の置き方です。
2022年のKDDIは、深夜1時でも輻輳しました
ITmediaの解説によると、2022年7月のKDDIの障害は、コアネットワークのルーターを交換した際に音声通話が一部つながらなくなり、ルーターを元に戻して対処する間にVoLTE交換機へアクセスが集中して輻輳した、という経緯でした。深夜1時で通話の利用は少ない時間帯です。それでも詰まったのは、VoLTEの端末が50分に1回、加入者データベースへ位置情報を登録するからです。音声がつながらなかった15分の間に、多数の端末の定期的な登録が重なりました。
深夜の障害と聞くと、利用者が少ないから軽く済むと考えがちです。実際は、利用者が寝ていても端末は自動で通信しています。輻輳の量を決めるのは、人の操作だけではありません。
制限を解いてから復旧まで、約9時間かかった例があります
輻輳は、原因を取り除いても、すぐには消えません。2021年のドコモの時系列が、その様子をよく示しています。
規制を解くと、待っていた通信が一斉に戻ります
2021年は、位置登録の信号を制御するネットワークコントロールを17時37分に始め、最大100%の制限を掛けました。19時57分に制限を解除して、一部回復を発表しています。4G・5G回線の復旧を発表したのは、翌15日の5時5分です。
制限の解除から復旧の発表までは、19時57分から24時までの4時間3分に、0時から5時5分までの5時間5分を足して、9時間8分です。障害の発生から復旧の発表までは、17時から翌5時5分までで12時間5分です。
制限を解いてからも、9時間余りが必要でした。ITmediaの解説は、規制を早く解くと、回復を待っていた利用者が一斉にアクセスして、別の輻輳を招くおそれがあると書いています。一度起きた輻輳は、トラフィックが減るまで時間がかかり、対処が容易ではありません。復旧は一斉には進まず、順番に処理されます。
つながらない人が何度も接続すると、通信量は3倍近くに増えます
もう一つの要因が、利用者の再接続です。ITmediaの記事によると、2021年はつながりにくさを感じた利用者が何度も接続を試みた結果、トラフィックが通常よりも3倍近く増えました。IoT端末の位置情報の通信が高いままだったところに、利用者の通信が重なり、深夜を過ぎても通信が不安定な状態が続いています。
輻輳が長引く流れ(2021年のドコモの時系列から)
4つの障害を並べると、原因の違いが見えます
ここまでの事例と、同じ5G SAで起きた2023年の障害を並べます。
| 障害 | 公表された原因 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| ドコモ 2021年10月 | IoT向けサーバーの切り戻しで、約20万台が一斉に位置登録し、輻輳 | 17時ごろから翌5時5分(4G・5G) |
| KDDI 2022年7月 | ルーター交換後に元へ戻す間、VoLTE交換機にアクセスが集中し、輻輳 | 深夜1時から、西日本は11時・東日本は17時30分に復旧 |
| ドコモ 2023年8月 | 全国をカバーする5G SA通信用の通信設備の故障 | 9時50分頃から11時30分頃 |
| ドコモ 2026年11月 | 5G SA契約者を収容する交換機の輻輳(きっかけは未公表) | 午前11時18分ごろから翌午前1時20分ごろ |
| ※出典は参考文献の各ページ。2026年11月の原因の詳細は、確かめた時点では公表されていません。 | ||
同じ5G SAでも、2023年は設備の故障でした
ドコモの公式ページによると、2023年8月15日の5G SA障害は、午前9時50分頃から午前11時30分頃まで続き、原因は「全国エリアをカバーする5G SA通信用の通信設備の故障」でした。対象は5G SAの契約者の一部で、音声通話とデータ通信が使いにくくなりました。同じ5G SAで、全国に影響が出た点は今回と共通します。ただし原因は故障で、輻輳ではありません。
2023年の障害は、9時50分から11時30分までの1時間40分です。今回の14時間2分とは、長さが大きく違います。
ここから「5G SAの設備は弱い」とまでは言えません。2回の原因が別のもので、2026年の輻輳のきっかけが公表されていない以上、結びつけられないからです。
障害のとき、利用者の側でできること
事業者側の復旧作業は、利用者には手が出せません。今回の案内に出ていた対処と、輻輳の性質から考えられることを分けて書きます。
案内に出ていた対処は、再起動・機内モード・4G設定
ITmedia NEWSによると、復旧後も使いにくいときは、端末の再起動か機内モードのオン・オフを試すよう案内されています。障害中の暫定策は、ネットワーク設定を4Gに変えることでした。4Gに変えて使えたのは、5G SA契約者を収容する交換機を通らない経路になるからだと読めます。ただ、この理屈はドコモの説明に書かれていないので、私の読みです。
緊急通報は、今回の障害の影響を受けませんでした。確かめたのは今回の範囲だけで、輻輳が起きれば緊急通報が常に通るかどうかは、確かめた資料に書かれていません。
何度もかけ直すと、混雑の側に回ります
2021年の例で、つながりにくい利用者の再接続が通信量を3倍近くに押し上げました。利用者に連打を控えるよう求める記述は、確かめた資料にはありません。ただ、この数字を見ると、復旧を知らせる通知が出た直後に全員が一斉に発信し直す状況は、避けたい動きに見えます。急ぎでない連絡なら、数十分あけてからにするのが、少なくとも害はありません。
輻輳についてのよくある誤解
輻輳は、サイバー攻撃で起きるものですか
今回のドコモは、障害の前後を含めて、不正アクセスの形跡やサイバー攻撃を示す事象は確認されていない、と公表されています。過去の事例で確かめた原因も、設備の入れ替え、切り戻し、故障でした。攻撃で起きる障害は別にありますが、輻輳という言葉そのものは、攻撃の有無を示しません。サイバー攻撃の側の仕組みは、サイバー攻撃はなぜ日本が標的になるのかで書いています。
利用者が多い時間帯にしか起きませんか
2022年のKDDIの障害は、深夜1時に起きました。端末が50分に1回、自動で位置登録をするので、利用者が寝ている時間でも通信は発生します。2021年のドコモも、引き金は利用者の操作ではなく、約20万台のIoT端末の位置登録でした。
輻輳が起きたら、原因を取り除けばすぐ直りますか
2021年は、制限の解除から復旧の発表まで、約9時間かかりました。解除が早すぎると別の輻輳を招くおそれがあるとITmediaが書いているとおり、負荷が下がるのを見ながら、段階的に戻すことになります。今回の約14時間のうち、輻輳の解消に何時間かかったのかは、確かめた資料に書かれていません。
まとめ:輻輳は処理能力を超えた集中で、起こす側は利用者とは限りません
今回のドコモの障害で確かめられたのは、午前11時18分ごろから約14時間、5G SA契約者を収容する交換機が輻輳したこと、不正アクセスの形跡がないこと、緊急通報に影響がなかったことです。輻輳のきっかけと、復旧まで約14時間かかった理由は、確かめた時点では公表されていません。
輻輳は、通信が処理能力を超えて集まる状態です。2021年のドコモは切り戻しの位置登録、2022年のKDDIは機器を戻す間の定期登録の重なりが引き金でした。利用者が増えなくても起きます。また、原因を取り除いても、制限の解除や再接続でまた集中するので、復旧は時間がかかります。
ニュースの「約14時間」という見出しは、確かに大きく見えます。ただ、2021年の例を見ると、制限を解いてからの9時間余りのほうが、輻輳という現象の性質をよく表しています。続報でドコモが輻輳の理由を公表したら、この記事と照らして確かめてください。最新の状況は、ドコモの障害情報ページを参照してください。
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📚 参考文献・出典
- ・ITmedia NEWS「ドコモ通信障害、約14時間で復旧 原因は『交換機の輻輳』、不正アクセスの形跡なし」(2026年11月6日) https://www.itmedia.co.jp/news/article/2611/06/2000002932/
- ・すまほん!!「ドコモの5G SA障害が約14時間ぶりに復旧。原因は交換機の輻輳」 https://smhn.info/202611-docomo-5g-sa-outage-recovered
- ・ITmedia NEWS「ドコモ通信障害、なぜ長引いた『輻輳』」(2021年10月15日) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2110/15/news161.html
- ・ITmedia NEWS「au通信障害、復旧を遅らせた『輻輳』って何? 過去にはドコモも」(2022年7月4日・3ページ目) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2207/04/news056_3.html
- ・ITmedia NEWS「au通信障害」(2022年7月4日・1ページ目) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2207/04/news056.html
- ・NTTドコモ「5G SAサービスにおける通信障害(2023年8月15日)」 https://www.docomo.ne.jp/info/network/kanto/pages/230815_05_m.html
- ・総務省 災害時における情報通信の在り方に関する検討会 KDDI資料(2011年6月9日) https://www.soumu.go.jp/main_content/000118255.pdf










































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