個人向け国債はなぜNISAで買えないのか|国債NISA論議と利子20.315%の課税の仕組み

個人向け国債は、2026年11月時点の新しいNISAでは買えません。国債の利子には、NISAの外では20.315%の税金がかかります。この税金をなくす「国債NISA」を求める声が7月に法案として国会に出され、11月7日には岸田元首相が慎重な検討が必要と述べたと報じられました。この記事では、なぜ国債が今のNISAの対象外なのか、利子にいくら税金がかかるのか、賛成と慎重論は何を理由にしているのかを、財務省・金融庁の資料と報道で確かめて整理します。

  • 新しいNISAで個人向け国債は買えません。利子は20.315%の課税対象です
  • 国民民主党は2026年7月10日に、国債をNISAの対象に加える法案を参議院に提出しました
  • 慎重論は「貯蓄から投資」に合わない、税収が減る、銀行預金が減るの3点が中心です
  • 今の制度でも、個人向け国債は1万円から買え、元本と最低金利が国に保証されています
目次

個人向け国債は、今のNISAでは買えません

日本の2000円札の一部を写した写真
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先に私の思い違いを書いておきます。元本が減らない国債は、投資が苦手な人向けのNISAにこそ入っていると思っていました。実際は逆で、国債はNISAの対象に入っていません。

金融庁が示すNISAの枠と除外されるもの

金融庁のページでは、新しいNISAの年間の投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用すると合計360万円です。非課税で保有できる総額は1,800万円までで、そのうち成長投資枠は1,200万円までと書かれています。成長投資枠から外れるものとして、整理・監理銘柄、信託期間20年未満や毎月分配型の投資信託などが挙がっています。このページに国債の記載はなく、対象商品として国債が出てくることもありません。

楽天証券の解説は「あえて対象外」

楽天証券のメディアの記事は、NISAが株式や株式投信の運用益を非課税にして個人の投資を広げてきた制度だったからこそ、あえて国債は対象外とされてきた、と説明しています。これは制度を決めた側の公式の説明ではなく、証券会社の解説です。対象外とされた経緯を書いた一次の資料は、私が確かめた範囲では見つけられませんでした。

国債の金利と長期金利の関係

個人向け国債の利率は、市場の金利を元に決まります。変動10年は、10年国債の入札結果から算出した基準金利に0.66を掛けた値です。市場の金利がどう決まるかは長期金利の決まり方の記事で書いています。

国債の利子には20.315%の税金がかかります

NISAで国債を買えるようにしたい人が問題にしているのは、この税金です。

財務省が示す条件と税引後の利率

財務省の2026年9月2日の発表では、変動10年(第198回債)の初回の適用利率は年1.95%で、税引後は1.5538575%です。基準金利は2.96%で、これに0.66を掛けて1.95%になります。固定5年(第186回債)は年2.24%で、税引後は1.7849440%でした。この国債は発行価格も償還金額も額面100円につき100円で、取扱機関は証券会社と銀行など873機関です。

税引前1.95%と税引後1.5538575%の差は、1.95×(1−0.20315)=1.5538575で確かめられます。100万円を預けて1年分の利子を単純に計算すると、税引前は19,500円、税金は19,500×0.20315で約3,961円、手元に残るのは約15,539円です。1,000万円なら税引前195,000円、税金は約39,614円です。実際は半年ごとに利率が見直されるため、あくまで目安の計算です。

中途換金の調整額は、税引後の利子と同じ式です

財務省の資料では、発行から1年たてばいつでも中途換金でき、そのとき直前2回分の利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた額が差し引かれます。

0.79685は、1から20.315%を引いた1−0.20315と同じ値です。100万円の変動10年(利率1.95%)なら、直前2回分の利子は半年9,750円の2回で19,500円、これに0.79685を掛けた約15,539円が差し引かれる計算です。

この調整額が1年分の税引後の利子と同じ金額になることは、資料の数字を並べて気づいたことです。手数料のような名目の別の費用が上乗せされているわけではない、と読めます。ただし調整額の理由を財務省が書いた箇所は確かめられていないため、私の読みです。

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国債NISA法案はどこまで進んでいるか

動きがあったのは2026年の6月から8月です。

国民民主党が2026年7月10日に法案を提出

野村総合研究所の木内登英氏のコラムなどによると、国民民主党は7月10日に、個人向け国債をNISAの対象に加える法案を参議院に提出しました。法案には、国債にかかる相続税を非課税にすることも含まれています。楽天証券の記事は、この法案が未審議で、成立の可能性は低いとされていると伝えています。

片山財務大臣の発言は6月から7月で変わりました

木内氏のコラムによると、片山財務大臣は6月8日に、元本保証のある国債は預金に類するためNISAの対象として望ましくないという趣旨を述べていました。7月14日の閣議後会見では、記者の質問に、国民民主党の法案は承知しており、自民党内にもNISAに入れる案や相続税を緩める案があると答えています。国債の発行当局として、商品性の見直しなどによる魅力化を早急に具体化したいとも述べました。一方で、NISAは税制の問題なので、党の税制調査会との整理が必要だとしています。

金融庁の2027年度税制改正要望

大和総研の2026年9月の解説によると、金融庁の2027年度税制改正要望には、安定的な国債保有者層の構築や個人の資産形成のニーズを踏まえた、国債に関する税制の検討が入りました。具体的な内容と減収の見込み額は明らかにされていません。想定される案として、利子の非課税化と相続税での優遇が挙げられ、大和総研はいずれにも懸念があるとして、慎重な検討が必要だと分析しています。

慎重論は3つの理由に分かれます

岸田元首相が慎重な姿勢を示した理由は、他の慎重論と重なります。

岸田氏が挙げた「貯蓄から投資」との整合

共同通信の2026年8月7日の配信によると、岸田氏は自民党の資産運用立国議員連盟の会長として、個人向け国債の税優遇について「丁寧に議論する必要がある」と述べました。過度に優遇すると投資が国債に偏り、国が目指す「貯蓄から投資」が進まない可能性があるとの指摘です。NISAに国債を加える案には、これまでの政策と整合するのかどうか考える必要があると強調しました。

銀行預金が減り、融資の元手が減るという懸念

同じ配信で、岸田氏は、家計の資産が国債に流れて銀行預金が集まらなくなれば、融資の元手が減るとも説明しています。木内氏の8月25日のコラムも、預金から個人向け国債への資金移動が進めば、銀行経営が不安定になる可能性を、慎重論の理由の一つに挙げています。

税収が減ると、かえって金利が上がるおそれ

同じコラムには、税収が減って、その分国債の発行が増えれば、長期金利をかえって押し上げるおそれがある、という慎重論も紹介されています。国債費の増え方は国債費31兆2,758億円の記事で数字を確認しています。国債の相続税の非課税については、岸田氏が「富裕層への優遇だという批判を招きかねない」との見方を示しました。

推進側が見ているのは金利と買い手です

推進する側の理由も、木内氏のコラムで整理されています。長期金利の上昇を抑えたい、日銀の国債保有の削減に合わせて個人を新しい保有者にしたい、利回りの上昇で個人向け国債の需要が増えている、個人の資金を海外資産から国内に向けて円安を抑えたい、といった点です。

数字では、2025年度の個人向け国債の発行額は合計で6兆円を超え、19年ぶりの高い水準でした。家計の国債の保有割合は1.8%で、2014年12月以来の水準です。G7で個人向け国債を出している日本、米国、英国、イタリアのうち、国債の優遇税制がないのは日本だけとされています。

ここで私は、資料ごとに数字が違うことに気づきました。日本総研のリサーチ・フォーカス(2026年8月5日)は、家計金融資産に占める国債の割合を0.8%と書いています。木内氏の1.8%とは1ポイント違います。何を分母にした割合かは、確かめた範囲では書かれていませんでした。どちらも「1%前後と低い」という点では同じなので、この記事では方向だけを読み取り、どちらかを正とはしません。

国債NISAが実現したときのデメリットと注意点

制度ができれば誰にとっても得になるとは限りません。確かめられた範囲で、注意が必要な点を挙げます。

決まっていない部分が多い

法案は未審議で、金融庁の要望も具体的な内容や減収額を明らかにしていません。非課税の対象が利子だけか、売却益や相続税まで含むのか、国債の分が1,800万円の総枠や1,200万円の成長投資枠の中に入るのかは、確かめた資料に書かれていませんでした。

非課税の利益は、残る額で見ると小さい場合があります

先ほどの計算では、100万円を年1.95%で持った場合に税金は約3,961円です。非課税になって増えるのは、100万円あたり年に約3,961円という計算になります。

金額が大きくなれば差も大きくなりますが、制度の中身が決まるまでは、この差を前提にした資金計画は立てられません。

金利と税率の前提は変わります

変動10年の利率は半年ごとに見直されます。基準金利が下がれば利率も下がり、財務省の資料では最低でも年0.05%です。国の保証があるのは元本と最低金利までで、受け取る利子の額は金利次第です。

今の制度で個人向け国債を選ぶ判断基準

電卓とペンが置かれた計算用紙
Photo by Aaron Lefler on Unsplash

NISAの対象になる前でも、個人向け国債は選べます。判断に使える条件を並べます。

1万円から買え、元本は国が保証します

木内氏のコラムでは、購入単位は1万円からで、最低金利は年0.05%と、元本と合わせて国が保証すると説明されています。種類は、変動10年、固定5年、固定3年の3つです。

使う予定のあるお金かどうかで決める

中途換金は発行から1年たてば可能で、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。1年以内に使う可能性があるお金は、換金できる時期を確認してから決めます。数年使わない予定のお金なら、変動10年か固定の期間かを、利率と見直し方式を比べて選べます。

NISAの枠は、国債以外に使えます

NISAの1,800万円の総枠は、今の制度では株式や投資信託のために使うものです。国債を買うことと、NISAの枠を使うことは、現時点では別の選択です。株と債券の違いを踏まえて、値動きを許せる金額と国債で持つ金額を分けて考えられます。

よくある誤解

国債NISAはもう始まっていますか

始まっていません。国民民主党の法案は2026年7月10日に参議院に提出されましたが、未審議と伝えられています。金融庁の要望も具体的な内容は明らかにされていません。

元本保証の国債なら、NISAの対象になっていると思ってよいですか

対象になっていません。金融庁のNISAのページには国債の記載がなく、新しいNISAで個人向け国債は買えません。

岸田氏は国債の優遇税制に反対しているのですか

反対とは書かれていません。共同通信の配信では、丁寧に議論する必要があると述べ、慎重な姿勢を示した、とされています。

個人向け国債の利子は、税金がかからないのですか

かかります。財務省の資料では、利子には20.315%の税金がかかります。発表された利率は税引前で、税引後の利率は別に書かれています。

まとめ:国債NISAは議論の段階で、決まった制度ではありません

新しいNISAで個人向け国債は買えず、利子には20.315%の税金がかかります。国民民主党の法案は7月に出されましたが、未審議です。金融庁の2027年度の税制改正要望に国債の税制が入った一方、内容と減収額は明らかではありません。

推進側は長期金利の抑制と個人の買い手の確保、慎重側は「貯蓄から投資」との整合、銀行預金の減少、税収減を理由にしています。どちらの理由も、決まる前の議論です。年末の税制改正大綱に何が入るかを確認してから、資金の置き場所を決めても遅くはありません。

この記事の内容は2026年11月時点の公表資料と報道によるものです。最新の内容は財務省と金融庁の公式の発表で確認してください。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は国債とNISAの制度を紹介する読み物で、個別の金融商品の購入や税務について助言するものではありません。数字と日付は2026年11月時点の公表資料と報道によるもので、国債NISA法案は成立前です。最新の内容は財務省・金融庁・国税庁の公式の案内でご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。