🧨異変の発端:ロード画面に現れた「6本指のサンタ」

2024年12月、世界的FPSシリーズ『Call of Duty:Black Ops 6』の新アップデート「シーズン01 リローデッド」が公開された。しかし、追加されたロード画面のひとつがプレイヤーの不信感を呼ぶ。
そのイラストに描かれていたのは、指が6本あるサンタクロース。
「Black Ops 6だから6本指?」「AIが描いたミスでは?」という声が次々とSNS上にあがり、プレイヤーたちは本気でAI画像探しを始めた。
🔍Redditで噴出した“AIアセット検証大会”

最も注目を集めたのがReddit上での議論。
ユーザー Shaun_LaDee 氏は、複数のロード画面についてAIによる生成の疑惑を提起した。
- 「Back Alley」→ 背景の壁が曖昧でノイズ的な表現
- 「Fearwood」→ 人物が同時に前後を向いている、枝の構造がおかしい
- 「Cozy」→ 絨毯の模様が破綻し、謎のオーナメントや窓のない出入口がある
これらは生成AIの典型的な“破綻ポイント”として知られる。つまり、AIはリアルに見える「っぽい」画像は作れるが、「意味を理解して描いている」わけではないのだ。
📝Activision、ついに公式声明でAI使用を認める
ユーザーの騒ぎが大きくなる中、2025年2月、ActivisionはSteamの販売ページにて以下の内容を明記:

「弊社では一部のゲームアセット開発に生成AIツールを使用しています。」
ただし、どのアセットに使われたか、どこからがAI生成なのかといった詳細な情報は明かされていない。
この表記は、Steamが2024年1月に導入した新ポリシーに基づくものと考えられる。
このポリシーでは、AI技術を使用するすべてのゲームに対して「AIの使用範囲と方法の明記」を義務付けている。
⚙️ゲーム開発の裏側:なぜAIが使われるのか?

AAAタイトルの制作現場では、数千点に及ぶ3Dモデル、UIパーツ、背景画像が必要とされる。こうした制作は、コストも人員も膨大だ。
そこで注目されたのが生成AIの導入によるコスト削減と効率化。
以下のようなポイントが挙げられる:
- 膨大なイメージ制作を短時間で自動生成
- アイデアスケッチや試作段階の素材として活用
- スタッフが少ない小規模チームでも対応可能に
しかし、メリットばかりではない。
🧠生成AIの“限界”:リアリズムと意味を「理解していない」
AIは「手っ取り早く見た目がリアルな画像」を作るのが得意だが、その根底にある”文脈理解”や“物理法則”には非常に弱い

たとえば:
- 指が6本になっても気づかない
- 奥行きの整合性が崩れる
- 窓がないのに外が見える
これは人間の「常識」や「空間理解」がまだAIには難しいことを示している。
つまり、生成AIをそのまま本番素材に使うのは非常にリスクが高い。
🎮プレイヤー体験を壊す“違和感”という名のノイズ

ゲームにおいて没入感は非常に重要だ。
一枚のロード画面が不自然なだけで、「世界に入り込む感覚」が一気に冷めてしまう。
Redditユーザーのコメントにはこんな声もあった:
「あの画像を見ると、世界がAIに置き換わっていく未来の予兆みたいで、ちょっと怖い」
「開発の都合であって、プレイヤーの気持ちは完全に無視されてる」
プレイヤーの感情に寄り添うというゲームデザインの根本が、AI活用の過剰で脅かされつつある。
🔄ゲーム業界はAIとどう付き合うべきか?
SteamのAIポリシー改定は、ゲーム業界が「AIとの共存」を選びつつあることを示している。
だが、共存にはガイドラインと透明性が必要不可欠だ。

今後考えるべきは:
- どこまでがAIに任され、どこからが人間の創造なのか
- その境界線をユーザーにどう明示するか
- “AIにしかできない表現”を模索すること
「手抜き」と「革新」は紙一重。
企業には技術への責任と、プレイヤーへの誠実さが求められている。
✅まとめ:AIは“補助輪”か、“操縦者”か?

「Call of Duty」の“6本指事件”は、単なるバグではない。
それは、AIがゲームの中に入り込み、創造の一部を担い始めた瞬間だった。
便利さとスピードの裏にある「不自然さ」や「世界観の歪み」をどうコントロールするか。
これは、プレイヤー、開発者、プラットフォーマーすべてに突きつけられた問いだ。
生成AIはツールであって、魔法ではない。
その力を最大限に活かすには、やはり人間のセンスと監修が不可欠だ。