賞味期限が残っていても店に並ばないのはなぜ?食品の3分の1ルールの仕組み

スーパーの棚に並ぶお菓子や飲料の賞味期限は、たいてい何か月も先です。ところが、その手前の段階で「賞味期限がまだ残っているのに、店に納品できない」商品が出ることがあります。原因は、法律ではなく業界の商慣習である「3分の1ルール」です。この記事では、ルールの中身、返品や食品ロスとの関係、国が進めている見直しの現状を、公的な資料で確かめた範囲で整理します。(2026年9月時点)

この記事のポイント

  • 3分の1ルールは、賞味期間を製造側・小売側・消費者で3等分する商慣習
  • 最初の3分の1が納品期限、次の3分の1が販売期限
  • 返品や廃棄の原因の一つとされ、国は納品期限の緩和などを呼びかけている
  • 賞味期限は「おいしく食べられる目安」で、期限の翌日に食べられなくなる日付ではない

3分の1ルールとは、賞味期間を3等分する約束事

スーパーの棚に並ぶ袋入りインスタント麺。賞味期間の3分の1ルールは常温で流通する加工食品で問題になる
Photo by Zoshua Colah on Unsplash

農林水産省は3分の1ルールを、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例だと説明しています。製造日から賞味期限までの期間を3つに区切り、最初の3分の1をメーカーと卸の持ち分、次の3分の1を小売店の持ち分、最後の3分の1を消費者が使える期間と考える発想です。

納品期限と販売期限という2つの締め切り

最初の区切りが「納品期限」で、この日までに小売店へ届けられなかった商品は、卸からメーカーへ戻されます。次の区切りが「販売期限」で、この日までに売れなかった商品は、小売りから卸へ返品されます。三井住友銀行の企業調査部のレポートは、この流れを製造日・納品期限・販売期限・賞味期限の4点で図にしています。

法律ではなく、大手小売が広げた慣行

3分の1ルールを定めた法律はありません。同じレポートによると、消費者の鮮度への関心の高まりを受けて90年代に大手小売りが導入し、ほかの小売りにも広がったといわれています。私は「食品衛生のための決まり」だと思い込んでいたので、法律の条文が存在しないと知ったときは意外でした。

賞味期間6か月の商品で、日付を数えてみる

ルールの効き方は、日数にすると分かりやすくなります。ここでは仮に、賞味期間が6か月の菓子を例に、編集部で計算しました。

区切り 3分の1ルール 計算
納品期限 製造から2か月 6か月×1/3
販売期限 製造から4か月 6か月×2/3
賞味期限 製造から6か月 賞味期間そのもの
納品期限を2分の1にした場合 製造から3か月 6か月×1/2
※賞味期間6か月は説明用の仮定。実際の期間は商品ごとに異なります。

納品できるのは最初の2か月だけ

計算:6か月×1/3=2か月。製造から2か月を過ぎた商品は、賞味期限まで4か月も残っているのに、この基準では小売店に納品できません。

ここで確認しておきたいのは、賞味期限の意味です。消費者庁の期限設定ガイドラインは、賞味期限を「おいしく食べることのできる期限」と示し、期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない、という説明を付けることが望ましいとしています。詳しい違いは消費期限と賞味期限の定義を解説した記事でも整理しています。

納品期限を2分の1にすると、1か月分の余裕が生まれる

計算:6か月×1/2=3か月、3か月−2か月=1か月。納品期限を2分の1に緩めれば、メーカーと卸が動ける期間は2か月から3か月へ、1.5倍に伸びます。

買い物のとき、賞味期限の日付をどのくらい気にしますか?

  1. いつも一番新しい日付を選ぶ
  2. 使う予定に合わせて選ぶ
  3. あまり気にしない
  4. 気にしたことがない

📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・13票)

いつも一番新しい日付を選ぶ:38%
あまり気にしない:31%
使う予定に合わせて選ぶ:15%
気にしたことがない:15%

なぜ3分の1という数字になったのか

3分の1という割り方の土台には、製造者・販売者・消費者の3者が期間を均等に分け合うという考え方があります。

鮮度を売りにしたい小売と、返品を抱えるメーカー

納品の締め切りが早いほど、間に合わない商品のリスクはメーカーと卸が負います。同じレポートは、2013年のレポートが示す10年度の卸からメーカーへの返品が年間1,139億円(出荷額の1.12%)、小売りから卸への返品が417億円(同0.37%)だったと報告しています。

数字に潜む偏り

計算:1,139億円+417億円=1,556億円。返品の大半(1,139÷1,556≒73%)は、納品期限に間に合わなかった商品が卸からメーカーへ戻る側でした。

メーカーの営業利益率は平均2%前後、卸は1%前後といわれる、とレポートは書いています。利益が薄い業種にとって、返品は小さな数字ではありません。ただし、これは10年度の数字で、その後の見直しで変わっている可能性があります。

食品ロスとどうつながっているのか

環境省と農林水産省の推計では、令和5年度の日本の食品ロスは約464万トンでした。内訳は、事業系が231万トン、家庭系が233万トンです。事業系231万トンのうち、食品製造業が108万トン(47%)、外食産業が66万トン(29%)、食品小売業が48万トン(21%)、食品卸売業が9万トン(4%)を占めます。

製造段階のロスは、ルールだけでは説明できない

環境省の資料には、製造・流通・調理の過程で発生する規格外品、返品、売れ残りが食品ロスになると書かれています。3分の1ルールは返品や売れ残りの一因とされますが、464万トンのうち何トンがこのルールのせいなのかは、私が調べた範囲の公的資料には出ていませんでした。「ルールをなくせば食品ロスが半分になる」といった言い方は、根拠のない話になります。

「まだ食べられる」のに流通から外れる

農林水産省は、期限内に納品できない商品は、賞味期限まで多くの日数を残しているのに行き場がなくなり、廃棄になる可能性があると説明しています。家庭の冷蔵庫の話ではなく、店に届く前の話です。私が普段の買い物で日付を気にする場面より、はるか手前にも日付の関門があったことになります。

見直しの3本柱と、取り組む事業者の数

国は、納品期限の緩和、賞味期限表示の大括り化、賞味期限の延長を組み合わせて、この商慣習の見直しを呼びかけています。食品ロス削減の全体像は食品ロス削減の仕組みの記事で扱っています。

棚に段ボール箱が並ぶ大きな物流倉庫。賞味期限の残りを基準に納品を受け入れるかどうかが決まる
Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash

納品期限の緩和:3分の1を2分の1へ

農林水産省は、納品期限を緩和する食品小売事業者を公表しています。令和5年10月末は297事業者、令和7年10月時点では377事業者でした。

計算:377−297=80事業者の増加、80÷297≒27%増。2年間で約4分の1増えたことになります。

賞味期限の大括り化と延長

大括り化は、賞味期限を年月だけの表示にする、または日を10日単位でそろえるなど、表示を簡略化する取り組みです。農林水産省は、在庫商品と納品する商品の賞味期限の差がなくなり、食品ロスの削減につながることが期待されるとしています。令和7年10月時点で、大括り化に取り組む製造事業者は365、賞味期限を延長した製造事業者は393です。

ビールの先行事例:9分の4への緩和

三井住友銀行のレポートによれば、ビール類では協議会の参加企業が納品期限を「賞味期限の9分の4」に緩めても特段の問題は起きず、返品数が減ったため、緩和後のルールで運用が続いていたとされています。3分の1は9分の3にあたるので、9分の4は少しだけ余裕を持たせた設定です(編集部の換算)。

見直しの難しさと注意点

期限を延ばせば解決、という単純な話ではありません。三井住友銀行のレポートは、賞味期限が比較的短い乳製品などで現行ルールを緩めるのは容易でない、という業界関係者の意見を紹介しています。

利益の配分と、鮮度に敏感な消費者

同じレポートは、食品廃棄の削減で生じた利益をメーカー、卸、小売りでどう分けるかの議論や、鮮度に敏感な消費者の意識改革が課題になると述べています。販売期限まで緩めると、店頭により日付の近い商品が並ぶため、消費者が不利益を受けるのではないかという懸念も挙がっていました。

統計の古さに注意する

この記事で紹介した返品額は、2013年のレポートが示す10年度の数字です。見直しに取り組む事業者は増えているため、現在の返品額がどうなっているかは、ここで示した資料からは分かりません。最新の状況は、農林水産省の「商慣習の見直し」のページで確認してください。

買い物で日付を見るときの判断の目安

ここまで読むと、店頭の日付の見え方が少し変わるかもしれません。ただ、判断のよりどころは公式の説明に置くのが安全です。

日付の近い商品は「劣った商品」ではない

消費者庁のガイドラインで、賞味期限は品質が比較的劣化しにくい食品に表示するもので、おいしく食べられる目安だと位置づけられています。日付が近い商品を選んでも、期限内であれば、それだけで品質が低いとは言えません。私はこれまで棚の奥から日付の新しい商品を取る側でしたが、今後はその日のうちに食べるものなら手前でもよいと考えるようになりました。

場面 考え方の目安
すぐ食べる予定 期限が近い商品でも、期限内なら選択肢に入れてよい
長く備蓄する 期限が先の商品を選ぶ。買い置きした分は先に古いものから食べる
弁当・生めんなど 消費期限の食品は期限を守る。賞味期限とは意味が違う

事業者の立場で見るなら

メーカーや卸の担当者にとっては、取引先ごとの納品期限の条件を確認し、緩和に応じる小売がどこまで増えているかを把握することが第一歩になります。国の取り組みの一覧に載っている社名は、公表資料で確認できます。

よくある誤解

誤解1:3分の1ルールは法律で決まっている

法律ではありません。前述のとおり、90年代に大手小売りが導入して広がった商慣習で、見直しも事業者どうしの協議で進みます。

誤解2:納品できなかった商品は、賞味期限切れ間近の商品だ

逆です。賞味期間6か月の例なら、製造から2か月を過ぎた時点で納品の対象から外れ、賞味期限まで4か月残っています。

誤解3:賞味期限が過ぎたら、すぐ食べられなくなる

賞味期限は、おいしく食べられる期限です。消費者庁のガイドラインも、期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられないわけではないという説明が望ましいとしています。ただし消費期限の食品は別で、期限を過ぎたら食べないようにと表示するのが原則です。

まとめ:3分の1ルールを知って判断する

3分の1ルールは、賞味期間を3等分して製造側・小売側・消費者で分け合う商慣習です。最初の3分の1で納品、次の3分の1で販売という締め切りがあり、間に合わなかった商品は返品や廃棄に回りやすくなります。国は納品期限の緩和、賞味期限の大括り化、賞味期限の延長を進めていて、取り組む事業者は増えています。

一方で、ルールがどれだけ食品ロスを生んでいるかを示す最新の数字は、私が調べた公的資料には見つかりませんでした。見出しの印象だけで「悪いルールだ」と決めず、日付は「おいしく食べられる目安」と受け止めて、買い物で判断していくのがよさそうです。

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  3. 初めて知った
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初めて知った:23%
誤解していた:23%
なんとなく知っていた:15%

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参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、食品流通の商慣習と期限表示の“仕組み”を知っていただくための読み物です。個々の食品を食べてよいかの判断は、商品の表示と保存方法に従ってください。制度の最新状況は農林水産省・消費者庁の公式ページで確認してください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。