2026年1月、ロンドンのヒースロー空港が、手荷物の液体を100ml以下に制限する規則をやめたと伝えられました。空港の保安検査場でペットボトルを捨てた経験がある人なら、「あの規則はなくせるものだったのか」と思ったのではないでしょうか。
一方で、日本から出発する国際線では、2026年10月時点でも100ml以下の容器と1リットルの透明な袋が求められています。この記事では、国土交通省やANAの案内、ICAO(国際民間航空機関)の決定を伝える国連の記事を読み、100mlという線がなぜ引かれたのか、ヒースロー空港でなぜ外れたのかを整理します。
- 100mlの制限は、2006年8月に英国で発覚した旅客機の爆破計画の後に、ICAOが決めたもの
- 国土交通省のQ&Aによると、量で線を引いたのは、一人ひとりの液体を個別に検査すると保安検査が止まるため
- ヒースロー空港では、CTスキャナーで荷物の中を調べられるようになり、2リットルまで持ち込める
- 日本出発の国際線は100mlのまま。免税品や乗り継ぎでは扱いが変わる
液体の100ml制限は何のための規則か
先に結論を書きます。この規則は、飲み物の安全を一本ずつ調べるためのものではなく、機内で液体爆薬を使われないために、検査を現実に回せる形へ落とし込んだものです。
2006年8月の英国での計画が出発点
国連のニュースによると、ICAOの理事会は2006年12月、手荷物に含まれる液体・ジェル・エアゾールを対象にした暫定の保安ガイドラインを採択しました。背景は、同年8月に英国で阻止された、約10便の大西洋横断便を爆破しようとした計画です。
採択された内容は、液体は100ml以下の容器に入れること、その容器を完全に閉じられる透明で再封できる1リットルの袋に入れること、旅客1人が持てる袋は1つだけ、の3点でした。医薬品、乳幼児用のミルクや食品、特別な食事が必要な人の食品は例外です。実施の期限は2007年3月1日とされました。
ロイター通信の記事を翻訳したトラベルボイスは、ヒースロー空港での液体爆弾による襲撃計画を警察が阻止したことをきっかけに、100mlの規制が導入されたと伝えています。
日本では国際線だけが対象になった
国土交通省が公表したQ&Aは、この規則を、国際的に統一された航空保安対策として日本が導入するもので、国際線のみが対象だと説明しています。国内線は、厳格な保安対策を行ったうえで、それまでどおり液体の機内持ち込みを認める方針でした。
この区別は今も変わりません。政府広報オンラインの記事も、液体物の量的制限を「国際線の場合」として書いています。
100ml以下・1リットルの袋・1人1袋の中身
ここからは、実際に保安検査場で求められる中身です。ANAの国際線の案内と、国土交通省のQ&Aをもとに、数字を並べます。
容量は中身ではなく容器の大きさで決まる
ANAの案内には、あらゆる液体物、ジェル、エアゾール類は100ml以下の容器に入れるとあります。100mlを超える容器に100ml以下の液体が入っている場合も不可で、その場合は預け入れ手荷物にするよう書かれています。密度の違いはありますが、100mlは100gと読み替えるとも書かれています。
対象は飲み物だけではありません。政府広報オンラインによると、シャンプーやヘアクリームのほか、ヨーグルトやレトルトカレーのようなジェル状のものも液体物に含まれます。ANAの案内には、歯磨き粉のような練り状のものも含まれています。
袋は透明で再封できるものを1人1つ
袋の条件は、容量が1リットル以下で、縦横の辺の合計が40cm以内の透明な再封可能なプラスチック袋です。ANAの案内には、目安として正方形なら縦20cm以内、横20cm以内と書かれています。袋は自分で用意し、ほかの手荷物とは別にして検査係員に見せます。
国土交通省のQ&Aには、透明であることと再封できることが求められる理由が書かれています。透明なのは、検査員が保安検査場で目で確認するためと、容器が袋から飛び出さないためです。再封できるのは、検査員が必要なときに開けて調べるためです。市販の冷凍食品用のジッパー付き袋で構いません。100ml以下の容器も市販のもので良く、色や形に決まりはありません。
袋の容量1リットルは1000ml、容器の上限は100mlなので、袋は容器1個分の10倍の大きさです(1000÷100で計算)。実際には容器の形に隙間ができるため、10個がそのまま入るわけではありません。
機内への持ち込みに決まりがあるのは、液体だけではありません。リチウムイオン電池を使うモバイルバッテリーも別の決まりの対象で、電池の構造はモバイルバッテリーの保護回路と充電の仕組みの記事で説明しています。
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水やジュースまで対象になるのはなぜか
私は、この規則を「液体爆薬になりうる量が100ml」という安全の線だと思っていました。100ml以下ならテロに使えないほど少ない、という理解です。国土交通省のQ&Aを読んで、その理解が半分しか合っていなかったと気づきました。
一人ひとりの液体を検査すると保安検査が止まる
Q&Aには、水やジュースのような安全な液体を制限することが目的ではない、と書かれています。ただし、乗客が持ち込むさまざまな液体の安全性を、個別に厳格に検査すると、円滑な保安検査の大きな妨げになり、航空交通の遅延という形で社会に大きな悪影響を及ぼす、という説明が続きます。
そのため、ICAOで航空保安の専門家と爆発物の専門家が国際的に検討した結果、量的な規制と検査の方法が決まった、と書かれています。つまり、液体を1本ずつ中身で判断する代わりに、量で線を引いた規則です。
Q&Aは、100mlという数字そのものがどう決まったかまでは書いていません。この点は、私が確認できた範囲では、公的な資料に理由が見つかりませんでした。数字の根拠として推測できる説明はいくつかありますが、確認できないので、この記事では書かないことにします。
試飲で安全を示す方法は想定されていない
Q&Aには「保安検査場で自ら試飲して安全性を証明しても駄目なのか」という問いも載っています。回答は、旅客一人ひとりの事情に合わせた個別の検査ではなく、保安検査をルールに従って厳格かつ効率的に行う必要がある、という内容です。液体を飲んで見せるやり方は、規則の中に出てきません。
検査を通った後の搭乗待合のエリアで買った飲み物は、機内に持ち込めます。喉が渇いたときは、保安検査の先で買えば足ります。
免税品と乗り継ぎで変わる扱い
100mlの線にも、例外と落とし穴があります。いちばん勘違いしやすいのが、免税品と乗り継ぎです。
出発空港の免税店で買った液体は持ち込める
ANAの案内によると、出発地の空港の免税店などで買った液体類は、機内に持ち込めます。ただし、国によっては条件がつきます。米国、香港、EU、中国大陸、韓国などの空港では、密閉式のビニール袋(ICAO様式のSecurity Tamper Evident Bag、略称STEBs)に入っていて開封されていないこと、購入を証明するレシートが袋の中に入っていること、が条件です。
乗り継ぎでは乗り継ぎ国のルールが適用される
同じ案内には、乗り継ぎがある場合、免税品を含む液体類の扱いは乗り継ぎ国のルールになると書かれています。国土交通省の発表によると、それまで日本の空港内免税店は、海外の乗継空港で保安検査を受ける旅客に、100mlを超える酒や化粧品の販売を控えていました。そこで、成田・関西・中部の免税店で、STEBsに入れて乗継空港の保安検査まで開封しない条件で、買えるようにしたと説明されています。
この発表には注意書きがあります。出発空港の液体物の検査に変更はなく、市中にある消費税の免税店で買った酒や化粧品は、量的制限の対象のままです。免税という言葉が同じでも、空港内の免税店と市中の免税店では、保安検査での扱いが違います。市中の消費税免税の仕組みは、外国人が日本で消費税なしに買える免税制度の記事に整理しています。
ヒースロー空港が100mlをやめた理由
ここからが2026年の話題です。ヒースロー空港で100mlの制限が外れた理由は、世界共通の規則そのものが変わったからではありません。検査の方法が変わったからです。
CTスキャナーで荷物の中身を立体で見る
トラベルボイスが伝えたロイター通信の記事によると、ヒースロー空港は2026年1月、4つのターミナルのすべての保安検査場でCTスキャナーの稼働を始めました。高解像度の3D画像を使い、すべての液体物を検査できるようになり、乗客は最大2リットルの容器を保安検査場に持ち込めるようになります。この技術の改修には10億ポンド(約2100億円)を投じたと、記事は伝えています。円への換算は1ポンド210円で、トラベルボイス編集部が算出した数字です。
英国の消費者団体Which?が2026年1月23日に書いた記事も、この変更は、より詳しい画像が得られる新しいCTスキャナーの結果だと説明しています。
2リットルの上限と、緩和した空港の範囲
Which?によると、100mlの規則をやめた空港は、ヒースロー、ガトウィック、エディンバラ、バーミンガム、ブリストル、ベルファスト国際、ベルファスト・シティです。2リットルまでの容器であれば、持ち込める本数に決まりはありません。ただし、真空断熱の水筒は、中身を空にしなければなりません。CTスキャナーが中を通して見ることができないためです。
100mlから2リットル(2000ml)への上限の変化は20倍です(2000÷100で計算)。
英国政府のページも、ほとんどの空港では100mlを超える容器を保安検査に通せないが、2リットルまで通せる空港もある、と書いています。つまり英国の中でも、空港ごとに違います。Which?の記事では、ルートンとマンチェスターの両空港は、2026年1月時点で100mlのままです。CTスキャナーの導入は、予定より数年遅れているとも書かれています。
日本の国際線は今も100mlのままか
ヒースロー空港の話を読んで、日本の空港でも同じことが起きるのかと考える人は多いはずです。私が確認した範囲を書きます。
ANAの案内では日本出発は100ml、英国出発は2リットル
2026年10月27日に開いたANAの国際線の案内では、液体物の持ち込み制限の対象に日本の出発便が入っています。1つ1つの容器は100ml以下で、1リットル以下の袋に入れる、という上の説明がそのまま書かれています。同じ案内の英国出発の欄には、容量が2リットル以下の液体類は、バッグから取り出さずに検査を受けられると書かれています。金属製や二重構造の容器は、検査の前に中身を空にします。
この規則は、出発する空港で適用されます。そのため、同じ旅行でも、日本の空港では100ml、ヒースロー空港では2リットルと、出発地ごとに別のルールになります。
日本の空港での緩和は確認できなかった
国土交通省や空港会社が、CTスキャナーの導入で100mlの制限を外すと決めた、という発表は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。日本の空港がCTスキャナーを持っているかどうかも、確かめられていません。そのため、この記事では、日本がいつ変わるのか、変わらない理由は何かについては書きません。
はっきり言えるのは、ヒースロー空港の報道を見て日本出発の荷物を軽くしても、日本の保安検査場では100mlの規則が今のところ適用されるということです。
保安検査場で没収されないための準備
年に1回乗るかどうかの私は、国際線に乗る前になると、液体のルールを調べ直しています。その経験から、荷物を詰める前に確認しておきたい点を並べます。
容器の大きさで選ぶ
100ml以下の容器は、市販の旅行用の小分けボトルで足ります。化粧水やシャンプーを詰め替えるときは、ボトルの表示容量が100ml以下かどうかを見ます。ANAの案内のとおり、中身が少なくても、容器が100mlを超えていれば持ち込めません。
100mlを超えるものは預け荷物にする
国土交通省のQ&Aによると、100mlを超える液体でも、スーツケースに入れてチェックインのときに預ければ運べます。政府広報オンラインも、預け入れ手荷物にできると書いています。持ち込みたいかどうかではなく、手元で使うかどうかで分けると決めやすくなります。
飲み物は保安検査の後で買う
保安検査の前に買った飲み物は、100mlを超えていれば持ち込めません。国土交通省のQ&Aには、保安検査後のエリアの売店で買った飲み物は持ち込めると書かれています。飲み物は、保安検査の先で買う形が確実です。
薬や乳幼児用の飲食物は例外を確認する
処方された薬や、乳幼児用のミルクなどは、100mlの制限に当たりません。ただし、機内で必要な量に限られます。ANAの案内には、処方薬は処方箋の写しや診断書類の提示を求められる場合があると書かれています。ベビーミルクは、乳幼児が一緒に搭乗する場合に限られます。国土交通省のQ&Aにも、大量の持ち込みはできないという注記があります。
100mlルールの弱点と注意点
この規則は、保安検査を回すための現実的な方法ですが、旅行者にとって不便な点も残っています。
規則が空港ごとに違う
同じ英国でも、2026年1月のWhich?の記事では、ヒースローは2リットル、マンチェスターは100mlです。ANAの案内も、国や地域ごとに別の欄を設けています。出発する空港が変わると、荷物の詰め方も変わるということです。
100mlを超えると放棄になる
国土交通省のQ&Aによると、100mlを超える液体は、保安検査場で放棄してもらうことになります。持ち込めると思って、新品の化粧品を空港まで持っていくと、その場で手放すことになります。
乗り継ぎで追加の制限を受ける
出発空港で買った免税品は、乗り継ぎ空港の保安検査で、その国のルールで再度検査されます。ANAの案内には、日本の成田・羽田・関西で乗り継ぐ場合、STEBsに入っていて開封されていないこと、レシートが袋の中に入っていることが条件だと書かれています。国土交通省のQ&Aにも、欧米などでは条件を満たさないと没収されることがあると書かれています。
出発前に確認したい判断のポイント
ここまでの内容を、荷物を詰めるときの判断に直します。
| 持ち物 | 日本出発の国際線 | 確認する先 |
|---|---|---|
| 化粧水・シャンプー | 100ml以下の容器にして、1リットルの袋に入れる。超えるものは預ける | ボトルの表示容量 |
| 飲み物 | 保安検査の先の売店で買う | 空港の案内 |
| 空港の免税店の酒・化粧品 | 乗り継ぎがなければ持ち込める。乗り継ぎがあれば、乗り継ぎ国のルールを確認する | 航空会社の案内 |
| 薬・乳幼児用ミルク | 機内で必要な量に限って持ち込める | 処方箋の写しなどの書類 |
| 英国出発の帰り道 | 空港によって2リットルまたは100ml | 出発空港のウェブサイト |
| ※出典:ANA「機内持ち込みに注意が必要な手荷物について(国際線)」、国土交通省のQ&A、Which?(2026年1月23日)。最新の規則は航空会社と出発空港の案内で確認してください。 | ||
迷ったときは、手元に置きたいものか、機内で使うものかを先に決めます。当てはまらないものは、預け荷物に入れる方が、没収される心配がありません。航空券の値段の決まり方を知りたい方は、航空券の価格が変わる仕組みも参考になります。
液体制限についてのよくある誤解
100ml以下なら、どんな容器でも通りますか
いいえ。容器が100ml以下であることに加えて、1リットル以下の透明で再封できる袋に入れ、1人1袋にまとめる必要があります。袋に入っていないと、持ち込めません。
ヒースロー空港でなくなったので、世界中でなくなったのですか
いいえ。Which?の記事では、英国の中でもマンチェスターなどは100mlのままです。ANAの案内でも、日本は100mlを求める国の欄に入っています。
国内線でも100mlを超える液体は持ち込めませんか
国内線は、液体物の量的制限の対象になっていません。国土交通省のQ&Aと政府広報オンラインはいずれも、量的制限を国際線の規則として書いています。ただし、国内線でも、危険物は航空法で持ち込みが禁止されているため、乗る前に航空会社の案内を確認してください。
まとめ:ヒースロー空港で変わったのは規則ではなく検査の方法
液体の100ml制限は、2006年8月に英国で阻止された旅客機の爆破計画を受けて、ICAOが決めたものです。国土交通省のQ&Aによると、量で線を引いたのは、液体を一人ひとり個別に検査すると保安検査が止まるからです。
ヒースロー空港では、CTスキャナーで荷物の中を立体で見られるようになり、2リットルまで持ち込めるようになりました。日本出発の国際線は、2026年10月時点で100ml以下の容器、1リットルの袋、1人1袋のままです。日本の空港の緩和については、私が調べた範囲では発表を見つけられませんでした。
国際線に乗るときは、出発する空港の規則を、航空会社の案内で事前に確認してください。100mlを超えるものは預け荷物に入れるか、保安検査の後で買う形にすると、没収の心配がありません。
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📚 参考文献・出典
- ・国連ニュース「ICAO adopts new security guidelines」(2006年12月) https://news.un.org/en/story/2006/12/202952
- ・国土交通省「液体物の機内持込制限に関するQ&A」 https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/12/121219/02.pdf
- ・国土交通省「空港内免税店における液体物の取扱い変更について」2015年10月20日 https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku09_hh_000073.html
- ・ANA「機内持ち込みに注意が必要な手荷物について(国際線)」 https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/boarding-procedures/baggage/international/baggage-limit/
- ・政府広報オンライン「空港での保安検査をスムーズに通過するために」2024年3月 https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5822.html
- ・トラベルボイス「ロンドン・ヒースロー空港、すべての保安検査場で液体物やノートPCの取り出し不要に」2026年1月27日 https://www.travelvoice.jp/20260127-159142
- ・Which?「The UK’s airport liquid rules for 2026」2026年1月23日 https://www.which.co.uk/news/article/100ml-rule-at-uk-airport-security-new-scanners-avLDH4E9xSVg
- ・英国政府「Hand luggage restrictions at UK airports: liquids」 https://www.gov.uk/hand-luggage-restrictions/liquids










































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