見出しの「3ピンのプラグに2穴のコード」を読んで、私は最初、形が合わないのだから差し込めないはずだと思いました。ところが北九州市の体育館では、2つ穴の延長コードにつないだバスケットゴールを片付けていた10代の男性が感電し、入院しました。
この記事では、報道で確かめられたことと、厚生労働省・パナソニック・NITE(製品評価技術基盤機構)の資料で確かめた「感電を防ぐ仕掛け」を分けて書きます。事故の詳しい経過は報道されていない部分が多いので、そこは分からないと明記します。内容は2026年10月時点の公開資料によります。
- 事故は10月24日の午後4時前、北九州市小倉南区の体育館で起きたと報じられている
- 報じられた原因は、アース付きの3ピンプラグに対して2つ穴の延長コードを貸し出し、差し込みが甘くなって電極が接触したこと
- 感電を防ぐ仕掛けは、充電部を露出させない・漏電遮断器・接地の3つで、3本目のピンは接地を担当する
- 確認することは、プラグの形と受け口の形、差し込んだあとのぐらつき
北九州の体育館で報じられたこと
日時・場所・けがの状況
TNCテレビ西日本の報道によると、事故は24日の午後4時前、北九州市小倉南区の市立小倉南体育館で起きました。移動式のバスケットゴールを片付けようとしていた10代の男性が感電しています。男性は家族に近くの病院へ運ばれ、専門医がいないため別の病院に緊急搬送されました。目立った外傷はありませんが、検査のため4〜5日間の入院が必要とされています。
報じられた原因と再発防止策
ゴールは電動式で、プラグはアース付きの3ピンでした。指定管理者が誤って2つ穴の延長コードを貸し出したため、差し込みが甘くなり、電極が接触したとみられると報じられています。指定管理者は、このゴールの利用を一時停止し、延長コードを本体に合うものに交換し、安全教育を徹底するとしています。KBC九州朝日放送の報道は、体育館側が「危険性の認識が不十分だった」と話したと伝えています。
報道から分からないこと
私が引っかかったのは、3本ピンのプラグが2つ穴のコードにどうつながったのか、という点でした。報道は「差し込みが甘くなった」「電極が接触した」と書くだけで、電極がどの部分なのか、どのような状態で通電していたのかは書いていません。ここから先は、事故の経過ではなく、一般的な仕組みの説明です。この事故の詳しい原因は、今後の調査結果を待つ必要があります。
感電はどうして起きるのか
電気が体に入り、体から出ていく
厚生労働省の職場のあんぜんサイトによると、感電とは電気が人体を流れて障害を受けることです。電気が体に入った部分と、接地などによって体から出た部分の間に心臓があると、心室細動や心停止に至る可能性があります。皮膚が水や汗で濡れていると電気抵抗がさらに小さくなり、電気が流れやすくなって危険性が高まります。
電流が大きくなると体はどうなるか
同じサイトには、人体を通る電流と影響の目安が載っています。福島県立医科大学附属病院の資料(交流・1秒間通電)も、1mA・10mA・100mAで同じ区分を示しています。
| 電流 | 人体への影響(厚生労働省) |
|---|---|
| 0.5〜1mA | 最小感知電流。「ピリッと」感じる |
| 5mA | 悪影響を及ぼさない最大の許容電流値。相応の痛みを感じる |
| 10〜20mA | 離脱の限界。筋肉の収縮が続き、握った電線を離せなくなる |
| 50mA | 痛み、気絶、心臓の律動異常。心肺停止の可能性もある |
| 100mA | 心室細動、心肺停止。極めて危険な状態 |
| ※出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「感電」。電流の通り道や時間で影響は変わります | |
10mAから先は、本人が手を離そうとしても離せなくなります。電気に触れたまま通電が続くので、電流の大きさだけでなく、何秒続くかも危険を左右します。
延長コードを使うとき、プラグの形や受け口を確認していますか?
- 毎回確認している
- ときどき確認する
- あまり確認しない
- 考えたことがなかった
📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・11票)
感電を防ぐ3つの仕掛け
厚生労働省は、感電の防止対策として次の3つを挙げています。どれか1つではなく、3つが別々の役割を持っています。
充電部を露出させない
1つ目は、電気が来ている部分(充電部)を人が触れる場所に出さないことです。報道にある「電極が接触した」は、この1つ目が破れた状況に近いと私は読みましたが、電極がどこを指すのかは報道から確認できません。コンセントの差し込み口の中の構造は、コンセントの差し込み口が電気を安全に届ける仕組みで図にしています。
漏電遮断器で電気を止める
2つ目は漏電遮断器です。機器や配線の絶縁が弱って漏電が起きたとき、速やかに電気の流れを止めます。労働安全衛生規則第333条は、水気や湿気のある場所、移動式の電動工具、屋外のコンセントなどに漏電遮断器の設置を義務づけています。ブレーカーが漏電を見つける仕組みはブレーカーが落ちる瞬間に何が起きているのかにまとめました。今回のゴールにこの設置義務が当たるのか、遮断器がつながっていたのかは、報道から分かりません。
接地(アース)で電流の逃げ道を作る
3つ目が接地です。アースを行うと、漏電しても漏れた電流の大半はアース線を通って地中に流れます。人が漏電した部分に触れても、人体の電気抵抗はアースより大きいので、人体に流れる電流が小さくなります。これが厚生労働省の説明です。
3本目のピンは何のためにあるのか
接地極付プラグと3つ穴の受け口
パナソニックの電設資材向け用語集によると、接地極付のプラグは、従来の2本の端子とは別に、アース用の端子がもう1本出ています。受け口の側も、接地極付のコンセントは3つ穴の差込口を持つタイプです。分類としては「3Pタイプ」と呼ばれ、JIS規格で規定されています。冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機のように、水気のある場所で使う家電の接地に使います。
2つ穴の受け口につなぐと何が足りないか
受け口に3つ目の穴がなければ、アース用のピンのつなぎ先がありません。そうすると、漏電したときに電流を逃がす道が、その経路では作れません。
私は報道を読んだとき、アースが取れなかったから感電した、と考えました。ところが報じられた原因は「差し込みが甘くなり、電極が接触した」です。接地が取れないことと、電気が来ている部分に触れることは、別の問題です。この2つを混ぜたまま理解すると、対策を間違えます。
数字で見る、漏電遮断器の「0.1秒」
電流と時間をかけ合わせて安全かを見る
厚生労働省のサイトによると、人体を通る危険性は「電流×時間」でみる考え方があります。ドイツのケッペンは、電流時間積の安全限界を50mA・秒としました。ヨーロッパではさらに厳しく30[mA・s]とし、日本もこれを基本にしています。そのため、漏電による感電を防ぐ漏電遮断器は、30[mA]、0.1[s]の機種が一般的に採用されています。
計算:30mA×0.1秒=3mA・秒。これは安全限界の30mA・秒の10分の1、50mA・秒の約17分の1です。
計算:100mAが1秒流れれば100mA・秒で、50mA・秒の2倍です。同じ100mAでも0.1秒で止まれば10mA・秒になります。
電流はそのまま、時間を10分の1にするだけで、危険の目安が10分の1になります。0.1秒。10mA・秒。漏電遮断器の短い動作時間には、こういう計算の裏付けがあると知って、私は少し驚きました。
感電による死亡災害は減っている
厚生労働省のサイトによると、感電による死亡災害は1970年代には毎年100数十件から200件以上ありました。1972年に労働安全衛生法が施行され、漏電遮断器の設置の一部義務化などが進み、現在は概ね10〜20件です。数字は作業者の災害の件数で、全労働災害の死亡者数の1〜2%にあたります。仕掛けの組み合わせで、死亡災害は大きく減ってきました。
延長コードを借りる・貸すときに確認すること
プラグの形と受け口の形を見比べる
この事故が示したのは、貸す側が機器のプラグと延長コードの受け口の形を見比べなかった場合に、何が起きうるかです。機器のプラグが3本ピンなら、アース用のピンに対応する受け口があるコードかを見ます。形が合わないコードは、無理に使わず、機器に合うものに替えます。報道された再発防止策も「延長コードを本体に適合するものに交換する」でした。
差し込んだあと、ぐらつきがないか
NITEは、プラグ・コード・コンセントの事故について、コンセントやタップにプラグを差したときにぐらつきや緩みがないかを点検項目に挙げています。ほかに、プラグの傷み・変色、ほこり、コードの傷み・硬さ、最大消費電力を超えていないかも見ます。差し込みが甘いと、感電だけでなく火災にもつながるためです。
私も今回の件を読んで、自分の部屋の延長コードのプラグを確かめました。全部2本ピンでした。自分の使い方なら問題はなさそうですが、見たことで、3ピンの機器をつなぐときに何を見ればいいかが分かりました。
アースがあっても、遮断器があっても残る注意点
差し込み部の事故は火災にもなる
NITEの2025年7月の発表によると、2019年から2024年の6年間に、家電製品のプラグ・コード・コンセントの事故は219件ありました。そのうち182件が火災で、8割以上を占めます。原因は、引っ張りなどの負荷によるプラグやコードの破損が多いと説明されています。感電を防ぐ3つの仕掛けがあっても、差し込み部が傷んでいれば別の事故になりえます。
この事故で確認できていないこと
この事故で、漏電遮断器がつながっていたか、接地が取れていたか、電極とはどこかは、私が確認した報道には書かれていません。3つの仕掛けのうち、どれが働かなかったのかを、この記事で断定することはできません。
状況別の判断:使う・使わない
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 機器のプラグが3本ピンで、コードの受け口が3つ穴 | 差し込んで、ぐらつきがないか確認してから使う |
| 機器のプラグが3本ピンで、コードの受け口が2つ穴 | 使わない。機器に合うコードに替える(報道された再発防止策と同じ) |
| 差し込んでもぐらつく、抜けかかる | 使わない。プラグとコードを点検する(NITEの点検項目) |
| 水気のある場所、屋外で使う | 漏電遮断器や接地の有無を、施設の管理者や電気工事士に確認する |
パナソニックの用語集には、接地極付コンセントの設置は電気工事士の資格が必要だと書かれています。壁のコンセントを自分で替えるのではなく、有資格者に頼む判断になります。
よくある誤解
アースが付いていれば、電気の来ている部分に触れても安全か
いいえ。厚生労働省は、感電防止の第一に「充電部を露出させないこと」を挙げています。アースは、漏電したときに電流を逃がす仕掛けで、充電部に触れること自体を防ぐものではありません。
漏電遮断器があれば、アースはいらないか
厚生労働省は、漏電遮断器と接地を別の対策として並べて挙げています。それぞれ役割が違うので、片方があるからもう片方が不要になる、とは言えません。
少しぐらつく程度なら、そのまま使えるか
NITEは、プラグを差したときのぐらつきや緩みを点検項目に挙げています。ぐらつきがあるなら、そのまま使うのではなく、プラグかコンセントを替えて確認します。
まとめ:延長コードは「形が合うか」から見る
北九州の事故で報じられたのは、アース付きの3ピンプラグに2つ穴の延長コードを使い、差し込みが甘くなって電極が接触したことでした。詳しい経過は、まだ分かりません。
感電を防ぐ仕掛けは、充電部を露出させない、漏電遮断器、接地の3つです。3本目のピンは接地を担当し、漏電遮断器は漏電を見つけて速やかに電気を止める仕組みです。延長コードを借りる・貸すときは、機器のプラグの形と受け口の形を見比べ、差し込んだあとにぐらつきがないかを確かめてください。合わないコードは使わず、機器に合うものに替えるのが、報道された再発防止策と同じ判断です。
この記事の内容、読む前から知っていましたか?
- 知っていた
- なんとなく知っていた
- 初めて知った
- 誤解していた
📊 これまでの読者投票の結果(当サイト調べ・13票)
📊 「延長コードの3ピンと2穴の不一致で感電事故、なぜ起きる?プラグの形と漏電遮断器・接地の仕組み」はこんな人に読まれています
📚 参考文献・出典
- ・TNCテレビ西日本「誤った延長コードで10代男性が感電し入院 3ピンのプラグに2穴のコード差し込む」 https://news.tnc.co.jp/news/articles/NID2026102632595
- ・KBC九州朝日放送「バスケゴール片付け中に感電…10代学生が検査入院」(Yahoo!ニュース配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/3646b9aff1310c101037c8e414b21334459181d4
- ・厚生労働省 職場のあんぜんサイト「感電」 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo74_1.html
- ・福島県立医科大学附属病院 感電についての資料(人体の電撃反応) https://fukushima.hosp.go.jp/files/000061038.pdf
- ・パナソニック TERASU辞書「接地端子」 https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/skill/dictionary/earthterminal2.html
- ・パナソニック TERASU辞書「接地極付接地端子付コンセント」 https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/skill/dictionary/Earthconcent2.html
- ・パナソニック TERASU辞書「接地端子付コンセント」 https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/skill/dictionary/Outletwithgroundterminal.html
- ・製品評価技術基盤機構(NITE)「プラグ・コード・コンセントの事故」で気をつけるポイント(2025年7月) https://kyodonewsprwire.jp/release/202507232578
📖 この記事について 本記事は、感電を防ぐ仕組みを知っていただくための解説で、個別の設備・機器の安全を保証するものではありません。電気設備や機器に不安がある場合は、施設の管理者、機器のメーカー、電気工事士などの専門家にご相談ください。事故の内容は2026年10月時点の報道によるもので、最新の情報は報道や自治体の発表でご確認ください。










































コメントを残す