「18歳で2500万の差エグい」――SNSでこんな見出しを見かけて、正直ぎょっとしました。2027年1月に始まる「こどもNISA」の話です。0歳から積み立てて18歳まで放置した場合と、そうしなかった場合とで、資産額に大きな差が生まれるという内容でした。
私は大学のゼミが社会調査法で、アンケートの集計や数字の検算が好きなたちです。こういう「◯◯万円の差」という見出しを見ると、まず自分の手で計算し直したくなります。結論から言うと、2500万円という数字そのものの計算根拠は元記事に書かれていませんでした。ただし、その奥にある仕組みは本物です。差を生んでいるのは、投資できる金額の大きさではなく、複利が働く「時間」の長さでした。
- こどもNISAは2027年1月開始、年間60万円まで、非課税保有限度額は600万円
- 「2500万円の差」のもとになった試算は、0歳から10年積み立てて18歳まで放置すると約2300万円という数字
- 差を生む正体は投資額の違いではなく、複利が効く運用期間の長さ
- 前身のジュニアNISAは非課税期間5年・払出し制限が厳しく、2023年末に新規受付を終了している
こどもNISAとは何か 2027年1月に何が変わるのか
こどもNISAは、0歳から17歳までの未成年者名義で開ける、NISAつみたて投資枠の未成年者版です。金融庁の資料によると、2027年1月以降、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円になる見込みです。口座開設の受付は制度開始に先行して始まっており、楽天証券は2026年10月1日から受付を開始すると発表しています。
制度の中身は、大人が使っているつみたてNISAの仕組みをそのまま未成年者に広げたものです。投資対象商品も18歳以上向けのつみたて投資枠と同じ投資信託で、実際にお金を出すのは親や祖父母ですが、口座の名義人はあくまで子ども本人になります。
対象年齢と非課税枠のルール
対象は0歳から17歳。年間60万円まで投資でき、非課税で保有できる上限は600万円です。大人向けのつみたて投資枠(年間120万円・非課税保有限度額は成長投資枠と合わせて1800万円)と比べると半分の規模ですが、子どもがまだ収入を持たないことを考えれば、これでも十分に大きな枠だと思います。
なぜ2027年1月からなのか
この制度は、2025年12月に与党が公表した「令和8年度税制改正の大綱」で新設が示されたものです。金融庁の解説によれば、未成年者を対象としたつみたて投資枠の創設は「次世代の資産形成を促進し、長期・安定的な投資を通じて、大学進学等、成人後のライフイベントに伴う必要資金を備えるニーズに応じる」ことが狙いとされています。実際の制度開始は2027年1月ですが、口座開設の準備は前倒しで進んでおり、楽天証券は2026年10月1日から受付を始め、口座開設と入金に応じて現金を進呈するキャンペーンも予定しています。
18歳になったらどうなるのか
こどもNISAの資産は、子どもが18歳に達すると、特段の手続きを必要とせず自動的に成人向けのつみたて投資枠に引き継がれます。非課税期間はもともと無期限なので、18歳の時点で売却して現金化する必要もありません。ここが、後で触れるジュニアNISAとの大きな違いです。
話題になった「2500万円の差」の根拠を確かめる
元記事が明記していた試算の条件はこうでした。全世界株式(MSCI ACWI、通称オルカン)に連動する投資信託を、0歳から年間60万円ずつ、非課税保有限度額の600万円に達する10歳まで積み立てる。その後は追加投資をせず、18歳まで複利運用を続ける。この場合、運用益を含めた資産額の中央値は「約2300万円」になる、という試算でした。想定した年率は過去20年の実績値である10.5%、リスクは18.6%です。
見出しの「2500万円」と本文の「約2300万円」は、実は同じ数字ではありません。記事のどこにも、2500万円がどう計算されたのかという説明はなく、投資できた子どもと投資できなかった子どもの間にある格差の大きさを指す、やや大きめの表現として使われているようでした。ここは数字を大きく見せる見出しと、根拠のある試算とを分けて考えたほうがよさそうです。
自分で計算し直してみると
実際に表計算ソフトで計算してみました。前提はこうです。0歳の年始から60万円ずつ、9歳の年始まで合計10回・600万円を積み立て、その後は追加投資をせず、年率10.5%の複利のまま18歳まで運用を続ける。この前提だと、18歳時点の資産額は約2,406万円になりました。一方、積み立てのタイミングを1年ずつ後ろにずらして各年の年末拠出にすると、運用期間がそれぞれ1年短くなるので約2,177万円です。元記事の「約2300万円」は、ちょうどこの2つの間に収まります。
計算していて気づいたことがあります。2500万円という数字は、家庭が用意できる金額の大きさの差ではありません。差の正体は、同じ600万円というお金を何年間、複利にさらしていられるかという「時間」の差でした。私は最初、これは投資に回せる余裕資金がある家庭とない家庭の差だと思っていました。実際に計算してみると、金額そのものより「いつから始めたか」のほうが効いていました。
なぜ「複利」だとこれほど差がつくのか
複利は、運用で増えた分にも次の年から利息(リターン)がつく仕組みです。単利であれば、600万円に年10.5%なら毎年63万円(600万円×10.5%)ずつしか増えません。複利では、増えた分を含めた金額に翌年また10.5%がかかるので、年数が経つほど増え方が加速します。
複利と単利の違い
600万円を年率10.5%で18年間運用すると仮定して比べてみます。単利(増えた分に利息がつかない計算)なら、600万円+(600万円×10.5%×18年)で、1,734万円です。複利(増えた分にも翌年また利息がつく計算)なら、600万円×1.105の18乗で、約3,620万円になります。同じ元本・同じ年率・同じ年数でも、利息に利息がつくかどうかでこれだけ差が出ます。
「元本が2倍になる年数」を近似式で計算する
複利の効き方を大まかにつかむのに便利なのが「72の法則」という近似式です。72を年率(%の数値部分)で割ると、お金がおよそ何年で2倍になるかが分かります。年率10.5%であれば、72÷10.5=6.86…なので、およそ6.9年で元本が2倍になる計算です。18年運用するということは、この「2倍になる期間」を2回半近くくり返すのと同じ、というイメージです。
同じ600万円でも、始める年齢でここまで変わる
分かりやすくするために、こどもNISAの積立方式ではなく、600万円を一括で投資したと仮定して比べてみます。0歳で600万円を投資し、そのまま27歳まで27年間、年率10.5%の複利で運用を続けると、600万円×1.105の27乗で、約8,890万円になる計算です。同じ600万円を18歳になってから投資し、同じく27歳まで9年間運用した場合は、600万円×1.105の9乗で、約1,474万円です。同じ金額を同じ利回りで運用しても、投資を始めた年齢が18年違うだけで、最終的な金額の差は7,000万円を超えます。計算していて、正直、声が出ました。同じ元手なのに、ここまで開くとは思っていませんでした。
過去のデータで見る「年率10.5%」の中身
10.5%という数字は、投資情報サイトmyINDEXが公開しているMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(円換算)の、2026年8月末時点における過去20年の年率平均リターンです。同じ資料には、期間ごとのリターンとリスク(値動きの振れ幅を示す標準偏差)も並んでいます。
| 期間 | リターン(年率) | リスク(標準偏差) |
|---|---|---|
| 1年 | +28.3% | 14.5% |
| 3年 | +22.7% | 13.3% |
| 5年 | +19.2% | 14.8% |
| 10年 | +17.7% | 15.5% |
| 20年 | +10.5% | 18.6% |
| ※データ基準日は2026年8月末時点(myINDEX)。将来の運用成果を保証するものではありません。 | ||
直近ほど高く、長期ほど落ち着く理由
表を見ると、直近1年は28.3%と高く、期間が長くなるほど数字が落ち着いていきます。これは、直近数年の値上がりが平均を押し上げている一方、20年という長いスパンには世界的な金融危機のような大きな下落局面も含まれているためです。こどもNISAの試算で使われた10.5%は、好調な時期だけでなく、こうした下落局面も均した後の数字だという点は押さえておきたいところです。
リスク18.6%が意味すること
20年のリスク(標準偏差)は18.6%です。ざっくり言うと、平均10.5%のリターンに対して、実際には毎年マイナス8%前後からプラス29%前後(10.5−18.6と10.5+18.6)くらいの間で大きくぶれる、というイメージです。これは配当を再投資し続けた場合のトータルリターンで計算されており、配当金の仕組みを再投資に回すか受け取るかでも数字は変わります。年によっては資産が減る年もある、という前提を抜きに「複利で増える」話だけをするのは不誠実だと思います。
なぜジュニアNISAは失敗し、こどもNISAは設計が変わったのか
未成年者名義で非課税投資ができる制度は、実はこどもNISAが初めてではありません。2016年に「ジュニアNISA」という制度が始まっていましたが、利用実績が乏しく、2023年末をもって新規の口座開設を終了しています。
5年しか非課税じゃなかったジュニアNISAの限界
ジュニアNISAは、非課税期間が5年間に限られていました。5年を過ぎても非課税のまま保有を続けるには、ロールオーバーと呼ばれる手続きが必要でした。さらに、原則として18歳になるまでは口座に入れた資金を引き出すことができませんでした。子どもの入学や進学でまとまったお金が急に必要になっても、この制度の中では動かせなかったわけです。使い勝手の悪さが、利用の伸び悩みにつながったと考えられます。
12歳から動かせるようになった理由
こどもNISAでは、非課税期間が無期限になり、ロールオーバーの手続きも不要になりました。払出しについても、資金の使途が子どものためのものであり、子ども自身が払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者が金融機関に申出書を提出すれば、12歳以降は可能になります。中学進学や高校進学のタイミングで、必要になった分だけ取り崩せるようになったということです。
| 項目 | ジュニアNISA(2016〜2023) | こどもNISA(2027年〜予定) |
|---|---|---|
| 非課税期間 | 5年間(ロールオーバー要) | 無期限 |
| 払出し制限 | 原則18歳まで不可 | 12歳以降、要件を満たせば可 |
| 新規受付 | 2023年末で終了 | 2026年10月1日開始(一部証券会社) |
| ※金融庁「令和8年度税制改正の大綱」の概要をもとに作成 | ||
学資保険とこどもNISA、教育費はどちらで備えるべきか
教育費の準備方法としてこれまで多く使われてきたのが学資保険の仕組みです。こどもNISAとは性格がかなり違うので、どちらか一方に決めつけるより、特徴を並べて考えたほうがよさそうです。
学資保険のメリットと限界
学資保険は、契約時に将来受け取れる金額がおおむね決まっている(元本割れしない設計が主流)のが最大の特徴です。親に万一のことがあった場合、以後の保険料払込が免除される保障が付いているものも多くあります。一方で、返戻率(払い込んだ保険料に対する受取総額の割合)は商品によって100〜110%程度が目安とされ、こどもNISAのように相場次第で大きく増える可能性はありません。途中で解約すると、払い込んだ保険料を下回ることもあります。
こどもNISAのメリットと限界
こどもNISAは、値動きのある投資信託を使うため、学資保険のような元本保証はありません。表で見た通りリスクは18.6%あり、受け取りたい時期に相場が下がっている可能性もあります。その代わり、長期で見れば非課税のまま資産が育つ可能性があり、上限も600万円までと学資保険より大きく非課税で運用できます。
家庭の状況でどう使い分けるか
「必要な時期に必要な金額を確実に用意したい」なら学資保険、「多少の値動きは受け入れられるので、長期の非課税メリットを優先したい」ならこどもNISA、という整理がしやすいと思います。両方を少しずつ組み合わせて、必要最低限は保険で確保し、余裕資金の一部をこどもNISAに回す家庭も出てきそうです。
デメリットと注意点
ここまで複利の効果を数字で見てきましたが、良い面だけを見るのは公平ではありません。
元本割れリスクをどう考えるか
過去20年の平均が10.5%だったとしても、投資信託である以上、元本割れの年は当然あります。特に、取り崩しを考えているタイミングでたまたま相場が下がっていれば、想定より少ない金額しか受け取れません。600万円を非課税枠いっぱいまで使い切ることと、生活費や教育費以外に回せる余裕資金の範囲で投資することは、本来別の問題です。
「最速で埋めるのが愛」という考え方への注意
元記事では、非課税枠をできるだけ早く埋めることを「愛」と表現する親のコメントも紹介されていました。気持ちは分かりますが、短期間で600万円を用意しようとすると、家計の余裕資金を大きく取り崩すことになりかねません。複利は時間が働く仕組みなので、無理のない金額を長く続けるほうが、家計への負担という意味では現実的だと私は思います。
手続きの手間も見ておく
12歳以降の払出しには、子ども本人の同意書面と親権者による申出書の提出が必要です。18歳になれば自動で成人向け枠に移るとはいえ、口座開設や年ごとの投資枠の管理は親が担うことになります。忙しい家庭ほど、この事務的な手間も判断材料に入れておいたほうがよさそうです。
制度が始まる前に、自分の子どもの年齢や毎月出せる金額でどのくらいになるか試しておきたい方は、金融庁が公開しているつみたてシミュレーターで、想定利回りを控えめに置いて試算してみることをおすすめします。10.5%という数字はあくまで過去の平均で、将来を保証するものではありません。
よくある誤解
誤解1 NISAだから絶対に増える
こどもNISAは非課税制度であって、元本を保証する制度ではありません。表で見た通り、20年の平均リターンが10.5%であっても、リスク(振れ幅)は18.6%あります。年によっては資産が目減りすることもあります。
誤解2 2500万円は確定した金額
「2500万円」は元記事の見出しの表現で、本文で示された試算は「約2300万円」でした。しかも、この2300万円自体、年率10.5%が今後も続くという前提のうえに成り立つ数字です。前提が変われば結果も変わります。
誤解3 ジュニアNISAと同じ制度
非課税期間や払出し制限が大きく変わっています。ジュニアNISAは非課税期間5年・原則18歳まで払出し不可でしたが、こどもNISAは非課税期間が無期限で、12歳以降は要件を満たせば払出しが可能です。名前は似ていますが、別の制度と考えたほうが正確です。
まとめ こどもNISAは0歳スタートと18歳スタートでなぜ差がつくのか
2027年1月に始まるこどもNISAは、0〜17歳を対象に年間60万円、非課税保有限度額600万円で運用できる制度です。話題になった「2500万円の差」という見出しの根拠は、正確には「0歳から10年積み立てて放置すると18歳時点で約2300万円」という試算でした。
差を生んでいる正体は、投資に回せる金額の大きさではなく、複利が働く時間の長さです。同じ600万円でも、投資を始める年齢が18年違うだけで、最終的な金額は数千万円単位で変わります。一方で、この数字は年率10.5%という過去の平均が続くことを前提にした試算であり、リスク18.6%のとおり元本割れの年もあり得ます。
学資保険のような元本保証の手段と、こどもNISAのような非課税の運用手段は、そもそも役割が違います。どちらか一方を選ぶというより、家庭の状況に応じて必要な金額と時期を整理してから、使う制度と金額を決めるのが現実的だと思います。
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📚 参考文献・出典
- ・金融庁「『令和8年度税制改正の大綱』の概要-金融庁関係の主要項目について-」(アクセスFSA 2026年2月号) https://www.fsa.go.jp/access/r7/270/270_03.pdf
- ・野村證券「18歳未満向け『こどもNISA』が税制大綱入り!」Fin Wing https://www.nomura.co.jp/fin-wing/column/new-nisa4/
- ・楽天証券「【こどもNISA】10月1日(木)より口座開設受付開始!」 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20260911-02.html
- ・myINDEX「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(円)」期間別リターン・リスクデータ https://myindex.jp/data_i.php?q=MS1025JPY
- ・集英社オンライン「『18歳で2500万の差エグい…』こどもNISAスタートで心配される若者の”異常な格差”」 https://shueisha.online/articles/-/258730?page=2
- ・金融庁「つみたてシミュレーター」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/tsumitate-simulator/
📖 この記事について
この記事は、こどもNISAという制度の仕組みと、話題になった試算の前提を整理したものです。特定の金融商品への投資を勧めるものではありません。投資には元本割れのリスクがあり、将来の運用成果を保証するものでもありません。実際に口座開設や投資を検討する際は、各金融機関の公式情報や目論見書を確認し、ご自身の判断で行ってください。2026年9月時点の情報をもとに書いており、制度の詳細は今後変更される可能性があります。最新情報は金融庁・各証券会社の公式サイトでご確認ください。










































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