保護犬・保護猫はどうやって家族になるのか|120団体調査と殺処分の現状を解説

2026年9月、全国120団体を対象にした調査で「犬猫の保護依頼が増えた」と答えた団体が全体の48%に達したことが明らかになりました(犬猫生活「全国犬猫保護活動実態白書2026」)。依頼増加の理由として最も多かったのは「飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育放棄」で、87.9%の団体がこれを挙げています。

「殺処分は昔の話では」と私は思っていました。数字を見るまでは。確かに数字は大きく改善しており、2024年度の犬猫の殺処分数は6,830頭で、2004年度のピーク時(約155,870頭)に比べると96%以上減少しています。しかし今、問題の構造は変わりつつあります。殺処分自体は減っていますが、民間シェルターへの依頼が増えることで現場は新たな飽和を迎えつつあります。

  • 犬猫の保護依頼が増えている背景と120団体調査の数字
  • 動物愛護センター(保健所)の仕組みと殺処分数の推移
  • 民間シェルター・NPOの実態(176団体・14,523頭)
  • 里親制度の仕組みと保護犬・保護猫の迎え方

なぜ保護依頼が増えているのか——飼い主高齢化という構造変化

保護犬と保護猫が寄り添う様子
Photo by Krista Mangulsone on Unsplash

120団体調査が示した現実

犬猫生活が2026年9月に公開した「全国犬猫保護活動実態白書2026」では、全国120団体に保護活動の実態を調査しています。依頼が「増えた・大幅に増えた」と回答した団体は58団体(48%)。その依頼増加の理由(複数回答)のうち「飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育放棄」が87.9%で最多でした。

この数字は、今まで「飼い主の問題」だった動物の遺棄が「社会の高齢化という構造的問題」に変わりつつあることを示しています。飼い主が亡くなった・入院した・施設に入ったというケースで、引き取る家族もおらず、行き場を失った犬猫が保護団体に持ち込まれるわけです。

飼い主高齢化の統計

ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査2024」によれば、日本の犬の飼育頭数は約679.6万頭、猫は約915.5万頭です。犬の45.8%がシニア犬(7歳以上)、25.1%が10歳以上という内訳もあり、飼い主と一緒に「一緒に年をとっている」ケースが増えています。

また高齢者のみでペットを飼う世帯は推計258万世帯とされており、そのうち「世話ができなくなったときへの備え」を希望するシニア飼い主は38.9%にのぼります。備えを希望しているのに、実際の受け皿がまだ十分ではないのが現状です。

動物愛護センターとはどんな機関か

保健所・動物愛護センターの役割

犬猫が飼い主のいない状態になったとき、まず関わるのが動物愛護センター(都道府県・政令市が設置)です。かつては「保健所」と呼ばれていた機関で、現在は動物の愛護・管理・相談窓口としての機能を担っています。

動物愛護センターの主な業務は次のとおりです。

  • 迷子の犬猫の収容・保護
  • 飼い主からの引き取り(終生飼養ができなくなった場合)
  • 負傷動物の救護・治療
  • 里親・譲渡会の開催
  • 動物取扱業の登録・指導
  • 苦情・相談への対応

引き取りから譲渡・殺処分までのフロー

行政センターでの保護フロー

収容・保護
(迷子・引き取り)
飼い主への
返還・広報
里親への
譲渡
収容超過等で
殺処分

※現在は譲渡最大化・返還促進により殺処分に至るケースは大幅に減少

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殺処分数の推移——2004年の16万頭から2024年の6830頭へ

環境省が公表している「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」によれば、犬猫の殺処分数は次のように推移しています。

年度 殺処分数(犬+猫合計) 前年比・備考
2004年度 約155,870頭 基準年(ピーク時)
2016年度 約56,000頭 2004年比で64%減
2023年度 9,017頭 犬2,118頭・猫6,899頭
2024年度 6,830頭 前年比24%減・過去最少更新
出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(令和6年度)

2004年から2024年の20年間で、殺処分数は約79分の1に減少しています。これは動物愛護法の改正・TNR(野良猫の不妊手術後返還)の普及・譲渡会の拡充・マイクロチップ制度の導入など複合的な取り組みの成果です。

神奈川県は犬の殺処分ゼロを2013年度(平成25年度)から12年連続で維持しており、猫も2014年度から11年連続でゼロを達成しています(2024年度時点)。熊本市は殺処分ゼロの先進事例として全国から視察を受けた都市です。

民間シェルターが直面する課題——176団体・14,523頭の現状

民間保護団体が担う役割

行政センターだけでは対応しきれない部分を補っているのが民間の保護団体・NPOです。アニマル・ドネーションが2025年4月に公開した「犬猫保護団体活動白書2025」(176団体調査)によれば、全団体の合計保護頭数は14,523頭で、1団体あたりの中央値は34頭です。

規模別では30頭未満の小規模団体が44%、100頭未満の中規模が39%を占め、大半が小さな組織で運営されています。スタッフの約76%が無償ボランティアで、保護形態は「メンバー・ボランティアの自宅スペース」が62.5%、「自前シェルター」が60%(複数回答)となっています。

シェルターが飽和しつつある現実

民間団体の約半数(48.3%)で、保護頭数が譲渡頭数を上回り、年々頭数が滞留する構造になっています。今回の120団体調査で「保護依頼が増えた」と答えた団体が48%であることと重ね合わせると、民間シェルターが新たな飽和点に近づきつつある状況が見えてきます。

「殺処分ゼロを達成した」という自治体のニュースを見るとき、その裏で民間シェルターへの依存が高まっていないか確認することも重要です。行政での殺処分がゼロになっても、引き取り先が民間に移るだけでは根本的な解決にはなりません。

動物愛護法の改正が変えたもの

2019年の第4次改正(2020〜2023年に段階施行)は、保護活動の環境を大きく変えました。方は特に次の2点を押さえておくとよいでしょう。

マイクロチップの義務化(2022年6月施行):犬猫の繁殖・販売業者(ペットショップ等)への装着・登録が義務付けられました。一般飼い主は努力義務です。マイクロチップがあれば迷子時の飼い主特定が格段に速くなり、センターでの不必要な収容を減らす効果があります。

8週齢規制(2021年6月施行):生後56日以内の犬猫の販売・展示を禁止。早期に母親から引き離された幼齢動物は社会化が不十分なまま育つケースが多く、問題行動から飼育放棄につながりやすいとされています。これを防ぐための規制です。

また罰則も強化され、愛護動物の虐待・遺棄は最大5年以下の懲役または500万円以下の罰金となっています。

保護犬・保護猫を迎えたい方が知っておくべきこと

里親に迎えられた犬と子どもが家族として過ごす様子
Photo by Helena Lopes on Unsplash

里親の基本的な流れ

保護犬・保護猫を迎える手続きは、行政センターと民間団体で多少異なりますが、基本的な流れは次のとおりです。

ステップ 内容 ポイント
1. 条件確認 ペット可の住居・家族全員の同意・終生飼養の意思 高齢の場合は引き継ぎ者を求める団体も
2. 応募・書類審査 アンケート・申込書の提出 民間団体は審査が厳しい傾向あり
3. トライアル 1〜2週間の試験同居 生活との相性を確認
4. 家庭訪問 飼育環境のチェック(民間団体のみ) 住居の安全性・逃走リスクの確認
5. 正式譲渡 契約書締結・費用の支払い ワクチン・不妊手術済みの個体が多い
行政センターの譲渡会では条件が比較的緩く費用も低め。民間団体はトライアル・家庭訪問が丁寧な傾向

行政と民間の違い

行政(動物愛護センター)の譲渡会は定期的に開催され、費用は比較的低めで条件も緩やかです。民間団体はトライアル・家庭訪問など審査がていねいで、ワクチン接種済み・不妊手術済みの個体が多い傾向があります。いずれも「終生飼養の誓約」は必須です。これが守れない方は迎えない判断が大切です。私がどちらを勧めるかというと、初めて保護動物を迎える方は、行政センターの譲渡会から始めてみるのが入口として入りやすいでしょう。

よくある誤解

「殺処分ゼロ=問題解決」は誤り:行政センターでの殺処分がゼロになっても、引き取りを断った結果として「引き取り屋」と呼ばれる劣悪な環境の施設に流れているケースも一部で報告されています。数字だけでなく、保護後の環境の質も重要なポイントです。

「保護犬・保護猫は問題のある個体が多い」は誤り:保護される犬猫の多くは、飼い主事情(引越し・高齢化・アレルギーなど)によるものです。迷子や事故で保護された個体も多く、問題行動があって捨てられたわけではありません。民間団体では引き渡し前にトレーニング・社会化を行っているケースもあります。

「野良猫に餌をあげればよい」は誤り:無秩序な餌やりは地域猫の増加・近隣トラブルの原因になりやすいです。地域で合意を形成した上でのTNR(不妊手術後返還)と、管理責任者(地域猫の世話人)を決める「地域猫活動」が、行政が推奨する方法です。

保護活動の制度的な背景として、ゴミ分別の仕組みと同じく、行政・民間・市民が連携する仕組みが重要な役割を果たしています。また、保育所入所の仕組みと同様に、公的センターと民間団体が補完し合う二層構造になっています。

※ 本記事の統計データは2026年9月時点のものです。環境省などの公式サイトで最新情報をご確認ください。

まとめ

犬猫の殺処分数は2004年の約155,870頭から2024年の6,830頭まで20年で96%以上減少しました。これは行政・民間・法整備が連携した取り組みの成果です。

一方、今まさに課題が変わりつつあります。殺処分ゼロへの改善が進む中で、飼い主高齢化による「生きた犬猫の行き場問題」が新たな局面を迎えています。120団体の約半数が「依頼が増えた」と答えている現状は、保護活動が次のフェーズに入ったことを示しています。

保護犬・保護猫を迎えることを検討している方は、地域の動物愛護センターの譲渡会や、認定NPOの里親募集ページから始めるのが確実です。終生飼養の覚悟さえあれば、迎える手続きは決して難しくありません。動物愛護週間(9月20〜26日)をきっかけに、仕組みを知って一歩踏み出してみるのも選択肢のひとつではないでしょうか。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。