太陽光パネルは暑いと何%発電量が落ちるのか|出力温度係数で夏の出力を計算する【2026年版】

太陽光パネルは、暑いほど発電量が落ちます。一般的なシリコン系パネルでは、モジュール温度が1℃上がるごとに出力が0.50%下がります。夏の屋根の上で想定される温度は75℃で、カタログの基準である25℃との差は50℃(75−25)です。この差で変換効率は25%下がります。

私は賃貸住まいで屋根に載せる立場ではありませんが、日差しが強い日ほど発電するものだと思っていました。光が強ければ電流は増えます。ところが産総研(産業技術総合研究所)の測定では、温度が1℃上がったときの変化は、電流が+0.0179%、電圧が−0.286%でした。電圧の落ち幅のほうがはるかに大きく、出力は下がります。この記事では、公表されている資料の数字から、温度が出力に効く仕組みと、5kWのシステムで夏と秋に出力がどう違うかを計算します。2026年10月時点で確認できた資料にもとづいています。

  • カタログの出力は、放射照度1000W/㎡・モジュール温度25℃の条件で測った値
  • 出力温度係数は、モジュール温度が1℃上がるごとに出力が何%下がるかを表す数字
  • 出力が落ちるのは、電流ではなく電圧と曲線因子が下がるため
  • 同じ公称出力でも、温度係数の絶対値が小さいパネルほど夏の出力が大きい
目次

太陽光パネルのカタログ出力は25℃で測った値です

太陽光発電の基本的な流れ(光が当たって電気ができる原理)は、太陽光発電の仕組みの解説で扱っています。ここでは、出力と温度の関係に絞って進めます。

AM1.5・1000W/㎡・25℃が基準条件です

太陽光発電協会(JPEA)の表示ガイドラインは、結晶系パネルの仕様欄に「表記の数値は、JIS C 61215-2で規定するAM1.5、放射照度1000W/㎡、モジュール温度25℃での値です」という趣旨の文章を併記すると定めています。カタログの公称最大出力は、この条件で測った値です。AM1.5は、太陽光が大気を通る距離にもとづく光の条件を指します。

元IT企業の広報だった私は、スペック表の条件欄を先に読む癖があります。パネルの仕様も、数字より先に、どの条件で測った数字かを見るほうが判断を誤りません。

実際の出力は容量の70〜80%程度になります

同じガイドラインには、実使用時の出力が日射の強さ、設置条件(方位・角度・周辺環境)、地域差、温度条件で変わると書かれています。発電電力は最大でも損失により太陽電池容量の70〜80%程度になる、という説明です。損失として挙がっているのは、温度などの補正係数、パワーコンディショナの損失、受光面の汚れや配線・回路の損失です。

5kWのシステムに当てはめると、70〜80%は3.5〜4.0kWです(5×0.7=3.5、5×0.8=4.0)。

温度はこの損失のうちの1項目です。残りの項目と合わせて、屋根の上の出力は公称値より小さくなります。

出力温度係数は1℃あたりの出力の下がり方です

出力温度係数は1℃あたりの出力の下がり方です
Photo by Watt A Lot on Unsplash

一般的なシリコン系は1℃で0.50%下がります

出力温度係数は、モジュール温度が1℃上がったときに出力がどれだけ変わるかを表す指標です。一般的なシリコン系パネルの値は−0.50%/℃で、JPEAの表示ガイドライン(平成28年度)の参考値とされています。マイナスの符号は、温度が上がると出力が減ることを示しています。

数字の読み方は単純です。−0.50%/℃のパネルは、温度が10℃上がれば出力が10×0.50=5%下がります。係数の絶対値が小さいほど、温度の影響を受けにくいパネルです。

屋根の上のパネルは60℃を超えることがあります

産総研の資料には、屋外の太陽電池は60℃以上の高温になることもあると書かれています。パナソニックは、夏季に想定されるモジュール温度を75℃として計算しています。ここでいう温度は気温ではなく、パネル自体の温度です。

75℃は基準の25℃より50℃高いので、−0.50%/℃のパネルでは50×0.50=25%、出力が下がる計算です。パナソニックの発表にある「25℃時より25%低下」と一致します。

見出しの数字だけを見ると「夏に4分の1も落ちる」と驚きますが、これは屋根の温度が75℃まで上がった条件の話です。常にこの落ち幅になるわけではありません。

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出力が落ちるのは電流ではなく電圧が下がるからです

最大出力は電圧×電流×曲線因子で決まります

産総研の資料では、パネルの最大出力(Pmax)は、開放電圧(VOC)、短絡電流(ISC)、曲線因子(FF)の積で表されます。曲線因子は、電圧と電流の積が理論上の上限にどれだけ近いかを示す値です。温度による変化も、この3つの変化率を足したものになります。

温度が1℃上がったときの変化率(n型単結晶シリコンのモジュール)

開放電圧
−0.286%
+
短絡電流
+0.0179%
+
曲線因子
−0.158%
≒
最大出力
−0.413%

出典:産総研太陽光発電研究センターのポスター資料(電圧誘起劣化の前の値)

3つの変化率を足すと−0.286+0.0179−0.158=−0.4261%で、実測の最大出力−0.413%とのずれはおよそ3%です。

電流はわずかに増え、電圧と曲線因子が下がります

同じ産総研の別の測定(15℃〜31℃の範囲、多結晶シリコン240Wのモジュール)でも、開放電圧、最大電力、曲線因子、効率は温度に対して直線的に減り、短絡電流は直線的に増えました。直列抵抗と並列抵抗の温度による変化は小さいという結果です。

温度が上がると電流は増える。ここは私の思い込みと合っていました。ただ、増え方は0.0179%と小さく、電圧と曲線因子の落ち込みが打ち消して余りあります。

電圧の落ち幅は電流の増え幅をはるかに上回ります

開放電圧の変化率0.286を短絡電流の変化率0.0179で割ると、0.286÷0.0179=約16.0です。

計算してみました。16倍。光が強くなって電流が増える分では、とても追いつきません。

電圧の温度変化は式で表せます

産総研の研究チームは、結晶シリコン太陽電池の電圧の温度補正式を開発しました。電流と電圧の関係を表すダイオード方程式にもとづく式で、温度係数や複数の測定データがなくても、1本のI-V曲線から任意の温度の特性に補正できます。測定は25℃から65℃の範囲、放射照度1kW/㎡で行われ、国際規格IEC 60891の改定にこの方式を盛り込むことが審議中と書かれています。電圧の落ち方が経験則ではなく、式で説明できる現象であることを示す資料です。

パネルの種類で温度係数はどれだけ違うのか

パネルの種類で温度係数はどれだけ違うのか
Photo by Markus Spiske on Unsplash

産総研の測定ではヘテロ接合型が最も小さい値でした

産総研と佐賀大学のチームは、高効率とされるバックコンタクト(IBC)型、PERC型、シリコンヘテロ接合(SHJ)型のモジュールと、汎用型の単結晶・多結晶モジュールの温度特性を測りました。室外で1〜2時間日光に当てて70℃前後まで温め、室内のソーラーシミュレータで自然冷却中に繰り返しI-V特性を測る方法です。

最大出力の温度係数は、IBC型が−0.345%/℃、PERC型が−0.341〜−0.367%/℃、SHJ型が−0.261%/℃でした。3種類とも汎用型の単結晶・多結晶より小さい値です。SHJ型は効率も21.40%で最も高く、温度係数も最も小さいという結果でした。

パナソニックは−0.29%から−0.258%へ改善したと発表しています

パナソニックは2017年5月24日に、HIT(ヘテロ接合型)モジュールの出力温度係数が−0.258%/℃になったと発表しました。同社のそれまでの値は−0.29%/℃でした。第三者測定機関がIEC 61853-1に準拠した測定値から算出した平均値だと説明されています。

同社はこの数字を使い、一般的なシリコン系(変換効率15.6%、−0.50%/℃)とHIT(変換効率19.6%、−0.258%/℃)を75℃で比べ、HITの変換効率は46%高いとしています。

計算を確かめます。一般的なシリコン系は15.6×(1−0.25)=11.7%、HITは19.6×(1−0.129)=約17.07%です。17.07÷11.7=約1.46で、発表の46%と一致します。

パネルの種類 最大出力の温度係数 出どころ
一般的なシリコン系 −0.50%/℃ JPEA表示ガイドラインの参考値
n型単結晶シリコン −0.413%/℃ 産総研・佐賀大学のポスター資料
IBC型 −0.345%/℃ 産総研・佐賀大学のポスター資料
PERC型 −0.341〜−0.367%/℃ 産総研・佐賀大学のポスター資料
SHJ(ヘテロ接合)型 −0.261%/℃ 産総研・佐賀大学のポスター資料
パナソニックのHIT −0.258%/℃ パナソニックの発表(2017年)
※測定方法・測定時期・対象製品が異なるため、表の数字どうしを厳密に比べることはできません。2026年10月時点の公表資料です。

5kWのシステムで夏と秋の出力を計算する

ここからは、私が置いた仮定による計算です。放射照度は基準と同じ1000W/㎡のまま、モジュール温度だけを変えます。パワーコンディショナの損失や汚れなど、温度以外の損失は入れていません。温度係数は表の数字から、−0.50、−0.413、−0.345、−0.261の4つを使います。

温度係数(%/℃) 75℃の低下率 75℃の出力 45℃の低下率 45℃の出力
−0.50 25.00% 3.75kW 10.00% 4.50kW
−0.413 20.65% 3.97kW 8.26% 4.59kW
−0.345 17.25% 4.14kW 6.90% 4.66kW
−0.261 13.05% 4.35kW 5.22% 4.74kW
※低下率=温度係数の絶対値×(モジュール温度−25℃)、出力=5kW×(1−低下率)。75℃は温度差50℃、45℃は温度差20℃。

75℃の出力は温度係数ごとにこれだけ違います

−0.50%/℃のパネルは3.75kW、−0.261%/℃のパネルは4.35kWで、差は4.35−3.75=0.60kWです。同じ5kWの公称出力でも、真夏の昼に0.60kW違うことになります。

数字は計算上のものです。屋根の温度は設置条件や風で変わるため、75℃は想定値として読んでください。

気温が下がる秋は同じ日射でも出力が戻ります

45℃は、夏の75℃より30℃低い温度として私が置いた仮定です。この温度なら−0.50%/℃のパネルで4.50kW、−0.261%/℃のパネルで4.74kWで、差は4.74−4.50=0.24kWまで縮みます。

2026年10月の今は、夏より日差しが弱く気温も下がり、パネルの温度も下がりやすい時期です。日射量は夏より減りますが、温度による落ち込みは小さくなります。温度係数の違いが効くのは、パネルが熱くなる夏の昼前後です。

自宅に発電モニターがある場合の見方

発電量を見られる環境なら、晴れた日の正午前後の発電電力を、春や秋と夏で並べてみてください。夏の昼の値が公称出力に届かなくても、まず温度の影響を疑えます。公称出力との差が70〜80%の範囲に収まっているなら、故障ではなく仕様どおりの動きと考えられます。

見積書の年間推定発電量に温度は入っているか

家庭用システムの構成(パネル、パワーコンディショナ、家の配線のつながり)は、家庭用太陽光発電の仕組みの解説にまとめています。見積書の発電量は、その構成のなかで次のように計算されます。

JPEAのガイドラインには、年間推定発電量の計算式の例が載っています。Esys(年)=Σ(Kh×Kpcs×Kj×Elight)です。Khは補正係数、Kpcsはパワーコンディショナの変換効率、Kjはその他の損失係数、Elightは各月の日射量(kWh/㎡)を指します。月ごとの日射量に3つの係数を掛けて、12か月分を合計する形です。

日射量のデータにはNEDOが公開したMONSOLA 11(1981年から2009年の29年間の観測データ)を使います。住宅用の表示では、設置容量5kW程度、真南、設置角度30°を想定して推定発電量を示すと決められています。

見積書の数字を読むときは、次の2点が手がかりになります。

  • 補正係数Khは温度などによる出力低下を織り込む係数で、数値と根拠を明記する決まりになっている
  • 年間推定発電量には、影、積雪、経年劣化、出力制御などの影響は考慮されていない

ガイドライン本文では、結晶系シリコン太陽電池の補正係数の参考値は現在見直し中と書かれています。見積書に補正係数が載っていれば、その根拠まで確認できます。

温度係数で選ぶときの注意点

発表元や測定方法で数字の意味が変わります

パナソニックの数字は、第三者測定機関が測定値から算出した平均値です。産総研の数字は、70℃前後に温めたモジュールを自然冷却しながら繰り返し測った結果で、論文ごとに対象のモジュールも異なります。表の数字は、数年前に公表された資料のものです。現在販売されている製品の値とは限りません。

温度係数が良くても他の損失は残ります

温度係数は、出力の温度による変化だけを表します。JPEAの説明にあるとおり、パワーコンディショナの損失、汚れ、配線の損失、影、積雪、経年劣化は別に発生します。温度係数が小さいパネルを選んでも、実際の出力が公称値に届くわけではありません。

シリコンとは別の方式として、軽くて曲がるペロブスカイト太陽電池もあります。この記事の数字はシリコン系パネルのものなので、方式が違う製品にそのまま当てはめることはできません。

屋根の温度は設置条件で変わります

75℃は夏季に想定される値で、すべての屋根がこの温度になるとは限りません。設置の方位・角度・周辺環境は出力を左右する要因としてJPEAも挙げています。設置を検討する場合は、販売会社に設置条件を伝え、その条件での推定値を聞くのが確実です。

パネルの選び方:カタログで見る4つの項目

カタログで確認したい項目を、何が分かるかとあわせて整理します。

見る項目 分かること 読むときの注意
公称最大出力 基準条件(25℃・1000W/㎡)での出力 夏の昼には出ない条件の値
出力温度係数 1℃ごとの出力の下がり方 マイナスの絶対値が小さいほど夏に強い
変換効率 面積あたりの出力の大きさ 温度係数とは別の指標
仕様欄の条件表記 数字を測った条件 JIS規格・AM1.5・25℃の記載を確認する

夏の出力を重視する人は温度係数を見ます

夏の昼の発電を重く見るなら、公称最大出力が同じパネルどうしで温度係数を比べます。計算のとおり、5kWで真夏の昼に0.60kWの差が出る例があります。屋根の面積が限られている場合は、変換効率も合わせて見てください。

設置済みの人は発電モニターで確かめます

すでに設置している人は、新しい数字を調べる前に、自宅の発電電力を季節ごとに記録するほうが役に立ちます。私は賃貸なので設置の判断はできませんが、実測できる人は夏と秋の差を自分の目で確かめられます。

太陽光パネルの温度に関するよくある誤解

日差しが強い夏ほど発電量は必ず増えるのでしょうか

必ず増えるわけではありません。日射が強いと電流は増えますが、温度が上がると電圧が下がり、出力が落ちます。月ごとの発電量は日射量と温度の両方で決まるため、夏の発電量が多いか少ないかは、日射量の増え方とパネル温度の上がり方の差で決まります。

カタログの公称出力は夏の晴天ならいつでも出るのでしょうか

出ません。公称出力はモジュール温度25℃での値です。JPEAのガイドラインでも、実使用時の出力は最大でも容量の70〜80%程度とされています。

温度係数が小さいパネルは、どんな条件でも多く発電するのでしょうか

そうとは限りません。温度係数が表すのは、温度による出力の変化だけです。公称出力、変換効率、設置の向き、影の有無は別の要因として発電量に影響します。

まとめ:太陽光パネルの温度と発電量

太陽光パネルの出力は、モジュール温度が1℃上がるごとに下がります。一般的なシリコン系は0.50%、産総研の測定では0.261〜0.413%、パナソニックのHITは0.258%という数字が公表されています。75℃を想定すると、一般的なシリコン系では25%の低下です。0.261%/℃のパネルでは50×0.261=約13%の低下です。

出力が落ちる理由は、電流がわずかに増える一方で、電圧が約16倍の大きさで下がり、曲線因子も下がるためです。カタログの出力は25℃で測った値で、実使用時の出力は最大でも容量の70〜80%程度という説明がJPEAのガイドラインにあります。

パネルを比べるときは、公称最大出力が同じなら出力温度係数の絶対値を比べ、屋根の面積が限られるなら変換効率も見ます。数字を読むときは、測定条件と発表の時期が同じかを確認してください。最新の仕様は各メーカーの公式資料で確かめてください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。