燃油サーチャージはなぜ片道6万2000円?市況の2か月平均と発券日、政府補助の影響

ANAとJALは、2026年11月1日から12月31日に発券する国際線の燃油サーチャージを引き上げました。欧州・北米などへの日本発の片道は、どちらも6万2000円です。ニュースの見出しは「値上げ」でした。私は、原油が上がったからだと単純に考えていました。

調べると、金額を決めているのは原油ではなく、シンガポールで取引されるケロシンの市況と為替の2か月平均でした。しかも今回は、政府の補助の効果を見込んで、本来より1段階低い表が使われています。この記事では、ANAの公式発表と運賃ページ、JALの発表を報じた記事、資源エネルギー庁の資料から、6万2000円という数字の中身を整理します。2026年11月時点の内容です。

  • 燃油サーチャージは運賃とは別の欄で、航空券を発券するときに払う
  • 日本発の金額は、直近2か月のシンガポールケロシン市況の平均に、同じ期間の為替平均をかけた円の額で決まる
  • 2026年11・12月発券分は、本来の表より1段階低い表が特例で使われた
  • ANAの欧米線は7・8月に6万5000円、9・10月に5万5000円、11・12月に6万2000円と動いた
  • 適用額は搭乗日ではなく発券日で決まり、家族旅行では往復の人数分がそのまま積み上がる
目次

燃油サーチャージは運賃とは別に、発券のときに払う燃料費の上乗せ

運賃・税金とは別の欄に載る

ANAの案内ページによると、燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)は、航空燃油価格の高騰や航空保険料の増加、航空保安の強化にかかる費用の一部を、利用する人に負担してもらう運賃です。出発地が日本、または目的地が日本の旅程のANA便が対象で、他社が運航するコードシェア便も含みます。

秋田魁新報が配信した共同通信の記事は、燃料費の変動分を航空運賃に上乗せして徴収する仕組みで、発券時に支払うと説明しています。航空券の値段そのものが日によって変わる理由は、航空券の価格はなぜ毎日変わるのかで整理しました。燃油サーチャージはそれとは別に、決まった表から計算される金額です。

日本の航空会社は2005年から導入している

HISの解説によると、1990年代以降の原油高を受けて、海運業で先に使われていた燃料費の追加負担の考え方が航空業界にも入り、日本の航空会社では2005年から導入が始まりました。当初は、原油高が一時的だと見込んだ臨時の措置でした。2009年に一度、廃止された時期もあったと同じ解説は書いています。

その後も運賃とは別の欄が続いているので、航空券を比べるときは、運賃だけでなくこの欄まで入れた総額で見る必要があります。

金額は「シンガポールケロシンの2か月平均×為替」で決まる

空港の駐機場に置かれたジェットエンジン(燃油サーチャージはジェット燃料の主成分ケロシンの市況から決まる)
Photo by Angel Sinigersky on Unsplash

算定の基準は原油ではなくケロシン

ANAの発表では、運賃額の算定に国際的な指標であるシンガポールケロシン市況価格を採用しています。申請の時点での直近2か月間の市況価格の平均に、日本発の旅程の場合は同じ期間の平均為替レートをかけて、円の額を出します。

ケロシンは、ジェット燃料の主成分です。共同通信の記事は、ケロシンが原油を精製して作られると書いています。原油を温度ごとに分けて燃料にする工程は、製油所への攻撃でなぜ軽油が足りなくなるのかで説明しています。原油の値段が上がればケロシンも上がりやすくなりますが、サーチャージが参照するのは、精製後のケロシンの市況のほうです。

JALの今回の算定:ドルに為替をかけて円にする

トラベルWatchが伝えたJALの発表では、8月から9月のシンガポールケロシン市況の2か月平均は1バレルあたり159.19ドルでした。同じ期間の為替平均は1ドル157.61円です。この2つをかけた円貨換算額は2万5089円となり、11月から12月に発券する航空券は「2万5000円基準」の表になる、と説明されています。

手元で159.19ドル×157.61円を計算すると約2万5090円です。発表の2万5089円とは1円ほどの差があり、端数の扱いの違いとみられます(私の推測です)。

ここで気をつけたいのは、サーチャージが「ケロシンの円換算額に比例して、ぴったり計算される金額」ではないことです。円換算額がどの区分に入るかを見て、その区分に対応する金額が表から選ばれます。

1,000円刻みの表に当てはめる

ANAの発表では、基準の表は「25,000円以上26,000円未満」「24,000円以上25,000円未満」のように1,000円ごとの区分です。前回(9・10月発券分)に使われたのは「2万円以上~2万1000円未満」の表でした。

ANAの欧米線の片道は、前回の表で5万5000円、今回の表で6万2000円です。

区分は4段階上がり、金額は7,000円上がりました。7,000円÷4≒1,750円が1段階あたりの平均です。韓国線は6,500円から7,100円で、600円÷4=150円です。距離の長い路線ほど、同じ1段階で動く金額が大きくなっています。

表の中身は路線ごとに違うため、1段階の増え方は路線で変わります。市況が少し動いただけでも、長距離路線の負担は大きく動きます。

海外旅行や出張で、航空券の燃油サーチャージの欄まで見ていますか?

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政府の補助で、1段階低い表が使われた

航空機燃料も補助の対象に入っている

資源エネルギー庁の資料によると、2026年3月11日の総理指示で、イラン情勢を踏まえた緊急的な激変緩和措置が決まりました。ガソリン、軽油、重油、灯油に加えて、航空機燃料も支援の対象です。航空機燃料については、従来の1リットルあたり4円の定額補助に代えて、ガソリンの補助額の4割相当を支援すると、3月11日時点の資料に書かれています。

ガソリンの補助金がどう決まり、出口をどう考えるかは、ガソリン補助金42.8円はどう決まるのかに書きました。補助は燃料の卸売の段階で入るもので、航空券の運賃から直接引かれるわけではありません。サーチャージへの効き方は、航空会社が補助の効果を見込んで選ぶ表の区分に表れます。

本来の表より、1段階低い区分を使った

ANAの発表は、直近の市況に基づくと11・12月は「25,000円以上26,000円未満」の表が適用される水準だと述べています。そのうえで、緊急的激変緩和措置による航空機燃料への補助の効果を踏まえ、特例として「24,000円以上25,000円未満」の表を適用すると書いています。JALも同じ考え方で、2万5000円基準のところを2万4000円基準に軽減したと、トラベルWatchが伝えています。

補助がなければ、さらに高い表が使われていたことになります。ただ、その場合の金額は、私が確認できた資料には載っていません。

2026年の金額は、7・8月の高値から9・10月に下がり、11・12月に戻した

「値上げ」の見出しと、7・8月との比較

今回の発表の見出しは、どの媒体も値上げでした。前回の9・10月発券分との比較では、そのとおりです。私も見出しだけを見て、過去最高を更新したのかと思いました。

ANAの運賃ページに並ぶ3期間を見ると、様子が違います。欧米線の片道は、7・8月が6万5000円、9・10月が5万5000円、11・12月が6万2000円です。今回は前回より上がりましたが、7・8月よりは低い額です。共同通信は、7・8月発券分の北米・欧州路線の片道6万5000円を、当時の過去最高と報じていました。

路線(日本発・片道) 7・8月発券分 9・10月発券分 11・12月発券分
欧州・北米(ハワイ除く)・中東・オセアニア 65,000円 55,000円 62,000円
ハワイ・インド・インドネシア 40,400円 35,800円 38,500円
タイ・シンガポール・マレーシア・ミャンマー・カンボジア 33,500円 27,300円 32,000円
ベトナム・グアム・フィリピン・パラオ・モンゴル 22,500円 19,300円 21,500円
東アジア(韓国を除く) 15,400円 14,300円 15,100円
韓国・ロシア(ウラジオストク) 7,400円 6,500円 7,100円
※ANA「燃油特別付加運賃/航空保険特別料金について」(2026年10月30日更新)より。3期間とも、政府の緊急的激変緩和措置の効果を踏まえて運賃額を軽減していると同ページに書かれています。

欧米線で見ると、9・10月から11・12月は7,000円の上昇で、7,000円÷55,000円≒12.7%です。7・8月から11・12月は3,000円の低下で、3,000円÷65,000円≒4.6%です。往復では、11・12月の欧米線は62,000円×2=124,000円です。

6万5000円は、上限を引き上げた結果だった

共同通信の記事によると、ANAとJALは7月から、サーチャージの上限額も引き上げています。欧米路線は5万9000円から7万4000円になりました。上限があるのは、市況がどれだけ上がっても、乗客の負担に天井を設ける仕組みです。7・8月の6万5000円は、引き上げ前の上限5万9000円を超える額で、新しい上限の範囲に収まっています。

その後、ケロシンの市況が下がった時期があり、9・10月の表は5万5000円まで下がりました。市況の2か月平均が、時間をおいて運賃に出ていると考えられます。

適用額は発券日で決まる。搭乗日ではない

空港の出発案内板を見上げる旅行者(燃油サーチャージの額は搭乗日ではなく発券日で決まる)
Photo by Anete Lūsiņa on Unsplash

発券から出発までの間に額が変わっても、差額は調整されない

ANAの運賃ページは、「航空券ご購入」の期間で額を示しています。注記には、航空券発券日の換算レートに基づくとあります。判断の基準は発券の日です。

発券から出発までの間に適用額が変わった場合の扱いも、同じページに書かれています。航空券を変更しない場合、差額の調整は行いません。たとえば12月中に発券すれば、搭乗が2027年に入っても、11・12月の額のまま乗れるということです。

日程を変えると、変更する日の額との差額が出る

未使用の航空券を変更する場合は、すでに払った額と、変更を行う日に適用される額の差額を調整します。ここでいう変更には、日付の変更だけでなく、旅程が変わらない便名の変更や、オープン航空券への新しい予約も含まれます。

変更の予定がありそうな旅行では、変更手数料や運賃の差額に加えて、この欄が動くことも頭に入れておく必要があります。出国税でも、6月までに発券した航空券を変更すると新しい税額になる会社がありました。出国税が3,000円になった仕組みと使い道の記事にまとめています。

次の改定は2027年1月1日の発券分から

ANAの発表では、額は2か月ごとに決め直されます。11・12月発券分の次は、2027年1月発券分からです。次の額がいつ発表されるかは、ANAの運賃ページにある「燃油特別付加運賃の改定について」のリンク先で確認できます。

今回の例では、算定の期間は8月1日から9月30日で、適用は11月1日からでした。算定の終わりから適用までの間に1か月あります。同じ間隔なら、1月発券分の基になるのは10月と11月の市況です。これは今回の間隔から私が推測したもので、各社が正式に示したものではありません。

家族で乗ると、この欄だけで数十万円になる

大人も子どもも、座席を使う幼児も同額

ANAの発表では、燃油サーチャージは大人・小児・座席を使用する幼児とも同額です。座席を使用しない2歳未満の幼児には適用されません。ANAマイレージクラブの特典航空券を使う場合も、同額になります。

ANAでは、子どもの分も大人と同じ額です。家族旅行では、人数分がそのまま積み上がります。

大人2人と子ども2人で欧米に往復すると

11・12月の欧米線で、全員が座席を使う4人が往復すると、62,000円×2(往復)×4人=496,000円です。前回の9・10月の額なら55,000円×2×4人=440,000円で、差は56,000円です。座席を使わない2歳未満が1人いて座席を使うのが3人なら、62,000円×2×3人=372,000円になります。

運賃の見積もりを見る前に、この欄だけで約50万円(496,000円)です。数字にすると、私も思わず電卓を打ち直しました。座席を使うかどうかで変わるのは人数だけで、1人あたりの額は路線で決まっています。

キャンセルしたときは全額が戻る

ANAの発表によると、購入後に払い戻す場合、燃油サーチャージには取消手数料・払戻手数料がかからず、全額が戻ります。運賃の取消手数料が高い航空券でも、この欄は別扱いです。ただし、払い戻しの条件は航空会社ごとに違うので、乗る会社の規定で確認してください。

注意したいのは、会社と買い方でかかり方が違うこと

全社が取るわけではなく、日本発以外は通貨が変わる

SMBCトラベルの解説によると、燃油サーチャージは国際線のすべての航空会社が請求するわけではなく、たとえばカタール航空は請求しないとされています。日系2社の額をそのまま他社に当てはめることはできません。

旅行開始国が日本以外の場合、ANAは日本発の円の額とは別に、各国の通貨の額を示しています。たとえば欧州・北米(ハワイ除く)・中東・オセアニア方面は、日本以外から出発する場合に米ドルで419ドルと示されています。これも航空券の発券日の換算レートで各国の通貨になおして徴収されます。

補助の扱いが変われば、表も変わりうる

今回の軽減は、補助の効果を見込んだ特例です。ガソリン補助については、10月23日に縮小や出口を検討するよう首相が指示したと、補助金の解説記事に書きました。航空機燃料の補助がこの先どうなるのかは、私が見た資料からは分かりません。

共同通信の記事は、関係者の話として「値動きが激しく、将来の見通しは分からない」と伝えています。次の額は、ケロシンの市況と為替、補助の扱いの3つで決まるので、現時点では誰も言い切れません。

乗り継ぎ便や特典航空券では、確認する欄が増える

ANAの運賃ページには、国際線を乗り継ぐ旅程の場合は表の内容が適用にならない場合があると書かれています。他社の特典航空券では、ANAとは扱いが違う場合もあります。SMBCトラベルの解説は、日系航空会社ではマイルで払えるのは運賃部分だけで、サーチャージなどは別に請求されると説明しています。

12月31日までに買うか、1月まで待つか:判断の手がかり

金額が上がるか下がるかを、いま当てることはできません。そこで、自分の旅行がどの場合に当たるかで考えるのが現実的です。

状況 考え方
日程が決まっていて、変更もしない 発券日の額が出発まで変わらない。12月31日までに発券すれば11・12月の額で固定される
日程が変わる可能性がある 変更する日の額との差額が出る。変更時の額が上がるか下がるかは分からない
1月以降に出発し、急がない 次の額が発表されてから発券を決める選択もある。ただし、上がるか下がるかは分からない
近距離(韓国・東アジア) 額の動きが小さい。ほかの条件の違いのほうが大きいことが多い
※ANAの運賃ページと発表をもとに整理したものです。乗る航空会社の規定を確認してください。

近距離と長距離で動く額が違うのは、表の区分が1段階動いたときの増え方が路線ごとに違うからです。9・10月から11・12月で、欧米線は7,000円(62,000円−55,000円)動きましたが、韓国線は600円(7,100円−6,500円)でした。

11・12月の額で比べると、欧米線の62,000円は、韓国線の7,100円の約8.7倍(62,000円÷7,100円)です。

日程が決まっている人にとっては、発券を12月中に済ませるかどうかが、実質的な分かれ目になります。ただ、それだけで航空券を買う時期を決めるわけではありません。運賃そのものの上下のほうが大きいこともあるので、総額で比べてください。

燃油サーチャージのよくある誤解

搭乗日が来年なら、来年の額になるのですか

いいえ。ANAの運賃ページが示すのは発券日の額で、搭乗日ではありません。12月に発券した航空券を変更しなければ、2027年に搭乗しても11・12月の額のまま、差額の調整は行われません。

マイルの特典航空券なら、サーチャージはかからないのですか

ANAの発表では、ANAマイレージクラブの特典航空券を使う場合も、サーチャージは同額です。SMBCトラベルの解説も、日系航空会社ではマイルで払えるのは運賃部分だけだと書いています。マイルの仕組みそのものは、航空マイルの仕組みと貯め方・使い方にまとめました。

原油が下がれば、すぐに安くなるのですか

すぐには安くなりません。算定には2か月の平均を使い、発表と適用の間にも時間があります。ANAの今回の例でも、市況を測った8月から9月と、適用が始まる11月の間に、1か月のずれがありました。値下がりが運賃に出るまでには、2か月以上かかることがあります。

まとめ:6万2000円の読み方

燃油サーチャージは、運賃とは別に発券のときに払う、燃料費の変動分です。日本発の額は、シンガポールケロシンの2か月平均に同じ期間の為替平均をかけた円の額を、1,000円刻みの表に当てはめて決まります。11・12月発券分は、政府の補助の効果を見込んで、本来より1段階低い表が使われました。

欧米線の片道6万2000円は、前回の5万5000円より7,000円高い一方、7・8月の6万5000円よりは低い額です。見出しの「値上げ」だけで高いと感じず、期間ごとの表を並べて見ると、動きの大きさが分かります。

実際に航空券を買うときは、次の3点を確認してください。発券日がいつか、変更する可能性があるか、座席を使う人が何人いるか。この3つで、燃油サーチャージの総額は変わります。2026年11月時点の内容なので、最新の額は乗る航空会社の運賃ページで確認してください。

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📚 参考文献・出典

📖 この記事について 本記事は、燃油サーチャージの“仕組み”を知るための読み物です。金額・適用条件・払い戻しの扱いは2か月ごとの改定や航空会社の規定で変わり、個別の航空券への適用は航空会社や旅行会社によって異なります。最新の額と購入の判断は、乗る航空会社の運賃ページと規定でご確認ください。

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EDITOR
白月ハルカ
ディスカバリーメディア 編集長
1995年生まれ、新潟・長岡育ち。いまは東京の中央線沿線でひとり暮らしをしながら、ディスカバリーメディアの編集長をしています。前職はIT企業の広報(5年)。統計表を眺めるのと、ラジオの野球中継と、ジョジョ(第4部派)が好きです。ニュースの見出しを見ると「本当に?」と数字を確かめにいく癖があって、その確かめた結果を記事にしています。間違いを見つけたら教えてください、すぐ直します。